2014年5月20日、トヨタはデンソー、豊田中央研究所と共同で、新素材のSiC(炭化ケイ素)を採用したパワー半導体を開発したと発表した。このSiCパワー半導体は、ハイブリッド車のモーター駆動力を制御するパワーコントロールユニット(PCU)に採用する予定で、今後1年以内に公道での走行実験を開始するという。
現在のPCUにはシリコン製のパワー半導体を使用しているが、新開発の高純度のSiCパワー半導体に切り替えることで電力損失を減らすことができ、燃費は10%の大幅向上。PCUのユニット自体も現在の1/5という小型化を目指すとしている。
PCUは、走行時にはバッテリーの電力をモーターに供給することで車速を制御し、減速時には回生した電力をバッテリーに充電するなど、ハイブリッド、EVの電力制御で重要な役割を担っている。現在のPCUは、ハイブリッド車の電力損失の約1/4を占め、その大半がパワー半導体での損失であるため、ハイブリッド車の車両での電力損失の約2%は、パワー半導体による。このためパワー半導体の高効率化、電流を流す時の抵抗を低減することはハイブリッド車やEVにとって最も重要なのだ。
炭化ケイ素(SiC)は、シリコンよりも高効率化が可能な半導体材料で、トヨタグループでは、1980年代から豊田中研、デンソーが基礎研究を始め、2007年からはトヨタも参加して実用化に向けた技術開発を共同で進めてきた。トヨタは、このほど3社で共同開発したSiCパワー半導体(ダイオードとトランジスタ)を採用したPCUをHVの試作車に搭載し、テストコースで行なった走行実験において、5%を超える燃費向上を確認したという。
2013年12月には、電子制御装置や半導体などの研究開発と生産を行っている広瀬工場内に、SiC専用の半導体開発のためのクリーンルームを整備しているという。
今後、さらに高効率化を進めて将来的には10%の大幅な燃費向上を目指すという。また、SiCパワー半導体には電流を流す時の抵抗や電流を流したり止めたりするオン・オフ時(スイッチング)の損失が小さいという特徴があるため、高周波化しても効率的に電流を流すことができる。この性能引き出すことにより、PCUの体積の約40%%を占めるコイル、コンデンサの小型化が可能となり、将来的にPCUの体積は、現行型比1/5を目指すとしている。