2013年2月19日、トヨタ・レーシングは、2013年のル・マン24時間を含むFIA世界耐久選手権(WEC)のために開発・改良された2013年型「TS030 HYBRID」を発表した。そしてこのニューマシンは2月20日から南フランスのポールリカール・サーキットでテストを開始している。
ドライバーは、2012年同様にアレックス・ブルツ、ニコラス・ラピエール、中嶋一貴が7号車をドライブ。そしてアンソニー・デビッドソン、ステファン・サラザン、セバスチャン・ブエミの8号車も全戦に出場し、トヨタとしては2カー体制でのWEC参戦となる。
TS030 HYBRIDのパワートレーンは、トヨタの東富士研究所のモータースポーツ部で開発され、2012年型から更に改良が加えられたトヨタ・ハイブリッドシステム・レーシング(THS-R)が搭載される。スーパー・キャパシターを使用するハイブリッド・システムは300psを発生し、3.4Lの自然吸気V8型ガソリンエンジン(530ps)をアシストする。
車両技術規則が大きく変更される2014年シーズンを前に、トヨタ東富士研究所のモータースポーツ部では、2013年シーズン用に、更なるパワー、効率、制御レベルと信頼性の向上を図ったとしている。
TS030 HYBRIDのシャシーも、信頼性と整備性の向上に主眼を置き、更なるパフォーマンスの向上をはかり、2013年シーズン用として新たに設計されれてりる。
TS030 HYBRIDを設計し組み立て、活動するトヨタ・モータースポーツ有限会社(TMG)では、最新鋭の開発設備を用いて、専門のエンジニアが車両性能のさらなる進化を目指した。
改良型モノコックを含む進化した空力パッケージは、2013年のレギュレーション変更によりワークスLMP1カーに課せられた最低車両重量15kg増の影響を最小限に抑えつつ、パフォーマンスの向上を図っているという。
2013年のWECスケジュールは第1戦イギリス:シルバーストン(4月14日)、第2戦ベルギー:スパ・フランコルシャン(5月4日)、第3戦フランス: ル・マン24時間(6月22日)、第4戦ブラジル:サンパウロ(9月1日)、第5戦アメリカ:オースティン(9月22日)、第6戦日本:富士(10月20日)、第7戦中国:上海(11月10日)、第8戦バーレーン(11月30日)となっている。
「予想以上の成果があった2012年。今シーズンは本当にワクワクしている」(木下チーム代表)
木下美明 チーム代表は、「新しいシーズンを迎えるにあたり、本当にワクワクしている。幸いな事に、我々は昨年、予想以上の成果を上げることが出来たと思う。しかし、今年は、さらにその先に進まなければならず、チーム全員、モチベーションを保って頑張ってきた」と語る。
またテクニカルディレクターのパスカル・バセロンは、「大きなレギュレーション変更が2014年に実施されるため、2013年のTS030 HYBRIDは、昨年のTS030の正常進化型とした。まずターゲットとしたのは昨シーズンで発見された、全ての細かい問題を対策することだった。2012年のTS030 HYBRIDは、そもそも試験研究用に開発した4輪駆動のテスト車両だったので、レース用に実際に使用したリヤだけではなくフロントにもハイブリッド・システムを組み込むことが可能となっていた。2013年型ではフロント側へのハイブリッド・システム搭載を考えないで最適化し、モノコックを再設計した。2012年のレースパフォーマンスから考え、大きな要素に関しては問題ないと感じているので、主要コンセプトの変更はなく、細かい見直しと最適化を行った」と語っている。
ハイブリッドシステムの開発担当の村田久武リーダーは、「2012年、我々のTS030 HYBRIDにTHS-Rを搭載して走り始めたときから、みるみる進化させていくことができたことは、私にとって素晴らしい経験だった。システムのパフォーマンスは非常に高く、ハイブリッド・システムによって生み出されたパワーによるアシストが有効であることを実証することができた。この先進的な技術を共に開発してきたエンジニアやパートナーを誇りに思っており、彼らのハードワークが好結果に結びついたのだと思う。レースに勝てたこと以上に、ハイブリッドパワーによる300psのアシストについてドライバーから高評価をもらったり、ハイブリッドパワーが実際にコース上で有効に機能しているのを見ることは、いつも励みになった。我々のハイブリッド・システム開発の基準点は2012年、TS030 HYBRIDに初めて組み込まれたときにあるが、2014年はレギュレーションが大きく変わるため、2013年はいくつかの改良を進めると共に、2014年に向けた要素技術のいくつかを2013年コンポーネントに織り込み、事前テストを行っている。馬力と効率について更に磨きをかけると共に、パワートレーン全体での信頼性も高めていく」と語っている。
またシャシー・プロジェクトリーダーのジョン・リッツェンは、「2012年のTS030 HYBRIDのパフォーマンスには非常に満足している。我々がデザインを開始したとき、3つの優先事項があった。ハイブリッド・システムとの協調、空力効率、そしてタイヤマネージメントだ。2012年シーズンで、我々のTS030 HYBRIDは非常に高いパフォーマンスを見せ、この3つの全ての項目において、1年目としては目標を達成できたと考えている。しかし、シーズンを通して多くの些細な改良点が見つかっており、特に重要度の高い問題から優先度をつけてアップデートするなど、常に改良を続けている。2013年は、新たなコンセプトというよりも、2012年仕様からの進化型として、様々な視点からのファインチューニングを施した。フロントに残っていたハイブリッド・システム用のスペースを除去し、その結果、更に効率的なパッケージングと空力を実現した。これによりレギュレーション変更による15kgの最低重量増においても、大きなパフォーマンス低下は防ぐことができた。車両性能シミュレーションでは、パフォーマンスが上がったことを示している。また、現場からのフィードバックにより、2012年に起こったいくつかの整備性の問題に起因するタイムロスも短縮できるはずだ」と語っている。