【スズキ】新型スペーシア クラス最大の室内長とクラストップの低燃費で登場


軽自動車のトールワゴンとして人気のスズキ・パレットがフルモデルチェンジを行い、車名も「スペーシア」に変更してデビューした。

初代パレットはトール型ワゴンとして、新しいユーザーを獲得したが、ダイハツのタント、ホンダのN-BOXと立て続けにユーティリティスペースの広いモデルが登場し、2008年発売のパレットは苦しい状況にあった。

そこでスズキでは大幅なモデルチェンジを行うと同時に、その広さやユーティリティの高さを直接イメージさせる「スペーシア」へと車名変更。ライバルへ真っ向勝負の1台というわけだ。当然、そう名乗るだけあって、この新型車はハイト系2BOX軽自動車で、ナンバーワンの室内長を持っている。開発コンセプトも「広くて楽しい、みんなのわくわくスペース」であり、スズキ社内の子育て世代の意見を多く取り入れて開発されたということだ。

新型スペーシア CM出演の堀北真希

また室内長だけでなく、クラス最軽量の車重であり燃費もクラストップ。そして安全性、走りの良さ、使い勝手を考えた機能・装備を持っているというのがポイントだ。

クラス最軽量を謳うスペーシアの車輌重量は840kg。ダイハツ・タントは930kg、ホンダN-BOXは950kgであることから新型のスペーシアは大変な軽量化がされていることが分かる。ボディサイズは当然、軽規格一杯のサイズで、全長3395mm×全幅1475mm×全高1735mm(4WD1740mm)、ホイールベースは2425mm。使用されるプラットフォームは、現行MRワゴンのホイールベースを65mm延長したもので、その後ワゴンRにも使用されている。

クラスナンバーワンの室内長を確保するために、内側へ倒れこんでいたAピラーを外側へ立て、また後端のCピラーも立てることによってスペースを広げている。こうして広げられた室内長は2215mmで、N-BOXの2180mm、タントの2160mmを上回っている。

また、このピラー角度の変更は視界の広さにも貢献する。低く抑えられたボンネットフードと高いルーフにより、見晴しがよく安心感のあるドライビングポジションが得られ、前方視界が+1度増え24度の上下視野角がある。Aピラーも三角窓というより、ピラーが2本あるようなデザインで、死角を減らす工夫がされている。

内側へ倒れこんでいたAピラーは外側に向けて立てられた。またダッシュボードも前方へ移動されてスペースを稼いでいる

エクステリアデザインでは、どの年代にも受け入れられるようなオーソドックスなもので、奇抜なことはやっていない。しかしピラーはすべてブラックアウトされ、ガラスエリアが連続するデザイン、開放感と高級感が演出されている。またブラックアウトすることで、ルーフもフローティングしたように見え、スペーシアはかなり高いデザイン性を持っている。ルーフをホワイトに塗った「ホワイト2トーンルーフ」をセレクトすれば、その効果はよりアップすることだろう。

リヤドアは両側スライドドアを採用し、乗降性の高さを狙い開口幅580mm、開口高1230mmに設定。ステップ高はクラストップの低さの340mmとなっている。また、X、Tグレードでは、リヤ外側ドアハンドルにパワースライドドアを採用。ワンアクションスイッチで開錠と自動開閉が可能なこれは、軽自動車として初めての装備だ。


パッケージングではリヤ開口部の最大開口幅1130mm、開口高1110mmで、リヤシートを両席格納すると荷室スペースには27インチの自転車も搭載が可能だ。ダイブダウンリヤシートはこれまで3アクション必要としていたが、2アクションへと改良され、より簡単にフラットフロアにすることが可能。余裕ある積載性をよりイージーに使用することができる。

シートアレンジも多彩で、助手席前倒し機能や170mmスライド可能な左右独立型リヤシート採用などが目を引く。さらに5段階でリクライニングする機構も持ち、広々とした後席のスペースと快適性はもはや軽自動車ではなく、クラスを超えたレベルでの比較になる。

また、収納スペースにも配慮しグローブボックス内にティッシュボックス専用の置き場所を設置したり、上部にはティッシュボックスが収納可能な大容量のオーバーヘッドコンソールも新採用している。その他、ドリンクホルダーやレジ袋用フック、ドアポケット、トレー類などに様々な工夫があるが、この辺りがまさに、スズキ社内の子育て世代からのフィードバックである。

リヤゲートは最大開口幅1130mm、開口高1110mm
2アクションで収納できるリアシートによってラッゲジスペースのアレンジもより簡単になった
助手席を倒すことで長尺物も積載できる

特に子育て支援機能として注目は、リヤシートに装着したチャイルドシートを、スライドドアから自然な姿勢で乗せ降ろしができるように配慮されていること。また後席スライドで後端まで下げると、おむつの交換が楽にできるスペースを確保できる。またリヤシートをフロントシートまで近づければ、後席に座らせた子供に直接手が届くようにも配慮されている。

細部の見直しによって90kgの軽量化を達成!

さてスペース広大な室内と並んで、新型車のスペーシアの大きな特徴でもある軽量化と省燃費性能にも注目してみよう。車両の軽量化は言葉ほど簡単なものではなく、素材、構造の変更など細かいことの積み重ねで、パレットと比較して90kgもの軽量化を達成している。

前述したがライバルとの差は歴然で、この軽量化によって燃費性能には大きく貢献するのは言うまでもない。さらに、繰安性やNHVにも大きく影響してくる部分だ。

軽量化のために、ボディではルーフレール、フロアフレームに高張力鋼板を効果的に使い、さらに超高張力鋼板をAピラー、Bピラーなどに使用することで、軽量化寄与率は25%を達成。最高1180MPa級の高張力鋼板をボディ全体の約42%に使用し、軽量化と高剛性ボディを両立し、外板パネル、前後バンパー類も軽量化。これは軽量化に15%貢献している。

また、内装部品、シートなども材料や工法の見直しで25%の軽量化に貢献し、さらに軽量化はパワートレーンにも及び、CVTではチェーンの細幅化やデファレンシャル・ケースの材質変更などにより10%貢献している。サスペンションでも材料、構造の見直しで20%貢献するなどして、トータルで90kgのダイエットを実現している。

エンジンはMRワゴンから搭載されている新世代のRA06A型で、低燃費、低速トルクに定評があり、ペンデュラム(振り子型)エンジンマウントによって振動を抑えて、静粛性も高められている。副変速機付ジャトコ製CVTの制御ではワイドな変速比幅により、加速性能、燃費性能を両立すべく最適化し、クラストップの低燃費29.0km/L(NA・2WD、JC08モード)を実現している。

省燃費技術ではワゴンRで搭載・発表されたスズキの3つのエネルギーマネージメント技術が採用さている。回生エネルギーを効率的に使う「エネチャージ」は、高効率・高出力のオルタネーターを採用。加速中は充電を行わないスズキ独自のエネルギー回生技術である。「新アイドリングストップ」は停車前の減速時、アクセルを離した瞬間から燃料カットされ、13km/hまで減速すると自動でエンジンが停止するようになっている。

また、「エコクール」は蓄冷材を通した冷風を室内に送ることで車室内の温度上昇を抑制する機構で、これら3つに代表される技術により省燃費へとつなげている。詳細は「新型ワゴンRの燃費をよくする3つの秘密」記事を参照してほしい。

6.2インチのタッチパネルディスプレイで操作するナビシステム。スマートフォンとの連携やまっぷるマガジンデータも収録されている

全モデルにメーカーオプションとして設定される新開発のスマートフォン連携ナビゲーションにも注目したい。これは6.2インチのナビ画面がスマホ同様にタッチパネル方式で直感的な操作が可能となっている。

また、旅行ガイドブック昭文社の「まっぷるマガジン」など約130冊分のデータを収録した「マップルナビ」が搭載されている。従来これらのガイドブック機能は、専用の端末として製品化されているほどの情報量であり、観光スポットの紹介、ご当地グルメなど充実の内容だ。もちろん、スマホで検索した情報をナビへと送れば、ナビ機能により目的地まで案内することが可能だ。

クラストップの室内長、クラストップの低燃費29.0km/L、さらに使い勝手を細かなポイントまで熟慮した新型車スペーシアは、激戦区の軽自動車カテゴリーで、どれほどユーザーの支持を得るのかが気になるところだ。走行性能については、後日の試乗レポートを待ちたい。

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