2015年8月26日、スズキはAセグメントのコンパクト・ハイトワゴン「ソリオ」を5年振りにフルモデルチェンジし、同日から発売を開始した。第4世代に当たる新型ソリオ/ソリオ・バンディットはプラットフォームからエンジンまでを刷新し、さらにベースモデル以外はマイルドハイブリッドを新たに採用している。
全長3800㎜以下、全幅1650㎜以下というAセグメント・クラスで、ハイトワゴン・スタイルのソリオは、スズキの小型乗用車の分野ではハッチバックのスイフトと並ぶ2本柱となる重要な車種だ。またサブコンパクトのクラスで、ライバルが不在という強みも持っている。
そのためニューモデルを開発するにあたり、徹底した市場調査を行ない、「ソリオを凌ぐソリオ」を開発することがテーマとなっている。市場調査では、従来型ソリオは、コンパクトで運転しやすいこと、室内が広いこと、センターウォークスルーであること、両側スライドドアであることが高い評価を得ているが、その一方でラゲッジスペースをより広く、小物入れの工夫、登坂や加速時の余力、サイドのデザインのボリューム感などの要望が多かったという。
それらの理由から、コンパクトさはそのままに「ソリオを凌ぐソリオ」という開発コンセプトに決まったのは当然といえる。
また新型ソリオは、スズキの次世代プラットフォーム&モジュール化戦略のもと、新世代のAプラットフォームを採用し、コンポーネンツのモジュール化と徹底した軽量化を行なっている。さらに燃費でもトップをめざし、K12型エンジンは従来のK12BからK12C型へ、事実上は新設計といえるほどの改良を加え、さらに軽自動車で「S-エネチャージ」と呼ばれているマイルドハイブリッドを改良して採用するなど、キープ・コンセプトではあるが革新的ともいえるモデルチェンジとなっている。
パッケージングでは全長は従来型と同じ3710㎜とし、全幅は5㎜拡大して1625㎜、全高は20㎜低め1745㎜、ホイールベースは+30㎜の2480㎜としている。また回転半径は従来型より0.2m縮小した4.8mとしている。つまりボディサイズはほぼ従来通りでありながら、より広いキャビンを実現しているのだ。
そのためインスツルメントパネルの高さや、前後長を大幅に短縮し、室内長を+400㎜稼ぎ出し、前後乗員距離を55㎜、荷室長を25㎜拡大している。
新しいAプラットフォームは、軽自動車で先行したKプラットフォームと同様の、前後のフレームを連続させた一体タイプとし、軽量Aプラットフォーム化と高剛性化を両立。アッパーボディも含め高張力鋼板は51%採用。その内980MPaクラスの超高張力鋼板は16%に達し、従来型より大幅に採用比率を高め、軽量化を果たしている。
新プラットフォームに合わせサスペンションも一新され、特にフロントのサブフレームの軽量・高剛性化、リヤはトーションビーム式(4WDのみは従来通りのアイソレーテッド・トレーリング・リンク式)とし、横剛性を向上している。
なお車両重量は従来型比で約100㎏という大幅な軽量化が達成され、4WDを含む全グレードが1000㎏を切っている。これは当然ながら燃費の向上、動力性能の向上に大きく貢献している。100㎏の軽量化の内訳は、パワートレーン系が30%、ボディが30%、シャシーが20%、内装部品系が20%となっている。<次ぺージへ>
搭載されるエンジンは、K12C型となった。1242㏄の排気量、デュアルジェット式燃料噴射などはこれまで通りで、出力も91ps、最大トルク118Nmも変わっていない。しかし圧縮比は12.5とさらに高められ、動弁系はダイレクト式からローラーロッカー式に改良され、摩擦抵抗を低減。また燃焼室はピストン冠面形状を改良し、吸気ポート形状を工夫することで吸気流動性を高め、燃焼速度を向上させている。
また高圧縮比化に伴って、ノッキング回避、耐熱性を高めるため燃焼室周りの冷却性の向上、ピストン・オイルジェットによる冷却性の向上も図られている。
K12C型はシリンダーヘッドでなくブロックも新設計され、EGR通路一体型インテーク、クランクシャフトや変更され、さらにエンジン搭載角度も15度から5度に変更。結果的にエンジン幅は-12㎜、高さは-31㎜、前後方向は-7㎜と縮小され、軽量・コンパクト化も果たしている。
トランスミッションは従来通りJATCO製の副変速機付きCVTで、変速比幅は7.3となっている。
ベースグレードのソリオ「G」以外は、新たにハイブリッドシステムが装備されている。システムは軽自動車に採用されているS-エネチャージと同様の構成で、助手席シート下にリチウムイオン電池を置き、インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター(ISG)を装備する。
オルタネーターに相当するこのISGは減速時には発電し、加速時には出力3.1ps、最大トルク50Nmでエンジンをアシストするベルト駆動のマイルドハイブリッドとして機能する。さらにアイドリングストップからの再始動ではベルト駆動によるスターターの役割も果たしている。軽自動車用よりISGの容量は増大され、エンジンのアシスト力もアップされている。
アイドリングストップは減速時13㎞/hでエンジンを停止する。そして再始動はISGによって行なわれ、加速時には約30秒間のISGによるアシストが働く。もちろん巡航から加速する時もモーターアシストが働き、最高速度100㎞/hまで作動する。
このマイルドハイブリッドにより、JC08モード燃費はFFモデルで27.8㎞/Lを達成している。ハイブリッドなしの「G」は24.8km/Lとなっている。
グレード展開は、ソリオがMZ、MX、Gの3機種、ソリオ バンディットがMVの1機種で、いずれもFFモデルと4WDモデルを設定している。
デザインは、ソリオは幅広いユーザー層に親しまれるメッキグリル、バンディットはアグレッシブな迫力を持つマスクで2段LEDヘッドライト、フロントグリルのLEDイルミネーションを採用している。なおグリルのLEDイルミネーションはソリオの最上級グレード「MZ]にも採用されている。
ソリオのインテリアは、シンメトリーデザインのインスツルメントパネルを備え、一方バンディットはセンターガーニッシュをピアノブラック調に、シート生地はダークパープルを採用し、より上質感を訴求している。
リヤシートはシートバックのリクライニング角度が、従来の28度から56度に増大され、Gグレード以外はリヤシート・アームレストも装備されるなど使い勝手、快適性も向上させている。
インテリアの小物入れも大幅に拡充され、フロントシートバックにはショッピングフック付きのパーソナルテーブルも装備(Gグレード除く)。また助手席側のドリンクホルダーは500ml紙パックも使用でき、グローブボックス上部にはティッシュボックスも収納できるなど、細かな配慮が加えられている。また最上級のMZ、MVはUV&赤外線カットガラスが標準装備される。
装備では、Gグレード以上には全方位モニター付きメモリナビゲーションがメーカーオプション設定(MXは12万9800円、MZ、MVは12万7440円)されている。全方位モニターは4個のカメラを使用しバードビューや前後左右の映像をナビ画面に表示できるようになっている。ディスプレイは7インチサイズで、USB、Bluetoothによりスマートフォンとも連携できる。
デュアルカメラ・ブレーキサポートの設定もソリオ/バンディットの大きなアドバンテージだ。Gグレードを除く各モデルには、クルーズコントロールなどとセットで5万9400円で装着可能だ。デュアルカメラ・ブレーキサポートはステレオカメラ式で、緊急自動ブレーキ、誤発進抑制、車線逸脱警報、ふらつき警報、先行車発進お知らせ機能などを備えた多機能の運転支援システムである。