全日本ラリーが大きく変わる チャンピオンWRX STIはどう迎え撃つのか 新井敏弘・大輝インタビュー

2021年全日本ラリーのエントリーに激変が起きた。昨シーズンまでのここ数年は、スバルWRX STIと三菱ランサーとの一騎打ちで展開され、ある意味新鮮さを欠いていたが、21年その顔ぶれが大きく変わった。2020年SUBARU WRX STIでシリーズチャンピオンを獲得した新井大輝/小坂典嵩、そして新井敏弘/田中直哉、鎌田卓麻/松本優一は、強敵出現に対しどのように戦うのか。

20年はSUBARU WRX STIを駆る新井大輝選手がチャンピオンを獲得した

開幕戦は群馬県嬬恋で開催予定だったが、コロナ感染拡大の影響により中止となり3月19日−21日に開催される第2戦愛知県新城ラリーが事実上の開幕戦になる。先ごろエントリーリストが発表され、そこには、なんとWRC R5規定で製作されたシュコダ・ファビアR5が2台エントリーし、さらにGRヤリスがJN1クラスに参戦しているのだ。

エントリーを詳しく見ると、JN1クラスにWRX STIで新井親子と鎌田卓麻の3台が参戦し、今季からトヨタへ移籍した勝田範彦をはじめGRヤリスが4台エントリー。そしてR5のシュコダ・ファビアにクスコから柳澤宏至、そしてスリーファイブモータースから福永修の2台がエントリー。さらにこれまでランサーで出場していた奴田原文雄が次戦の唐津からGRヤリスで参戦すると発表があった。

左)新井敏弘選手、右)息子の新井大輝選手は強敵とどう戦うのか

SUBARU WRX STIを取り巻く環境はドラスティックに変化し、一気に緊張感のあるラインアップで戦うことになったのだ。

では、それぞれがどんなマシンなのかを見てみよう。
まず全日本ラリーのJN1クラスは国内最高峰のクラスになるが、参戦車両はFIAのグループNの車両規定で作られたマシン。改造幅も狭く、サスペンション周りは市販車両からの変更はできない。エンジンの最大出力に制限はないものの、エアリストリクターの装着が義務付けられ出力は調整されている。

シュコダ・ファビアR5マシンで2台のエントリーがある。グループNより2クラス上になる

このJN1クラスは排気量2.5L以上の4WD車で、同じく2.5L以上のFFがJN2クラスになる。ターボ車は排気量を1.7倍にしたものが排気量とされ、WRX STI、GRヤリス、シュコダ・ファビアもこのJN1クラスということになる。つまり、市販車WRX STIをラリー用に改造したマシンとレースの血統から誕生したGRヤリス、そしてWRC R5の車両規則で製作されたレーシングカー、シュコダ・ファビアR5とがガチ対決ということになる。

GRヤリスはご存知のように通常のヤリスとは異なり、ラリーなどのモータースポーツへの参戦を前提に生産されたモデル。2020年9月に発売されたGRヤリスは3気筒1.6Lターボの4WDで272ps/370Nmが標準スペック。前後トルク配分を変更できる電子制御油圧多板クラッチを使ったシステムを持ち、今季から本格デビューする。

勝田範彦選手は今季からGRヤリスで参戦

特徴は短いホイールベースとレース向けに開発されているボディとパワートレーン。ツイスティなコースを初め回頭性が高いことが想像でき、さらに軽量という大きな武器も持っている。パワートレーンはWRX STIと同様290ps程度が想像され、6速MTを搭載している。

そして同じクラスでいいのか?というほど強力なのがファビアR5だ。シュコダ・ファビアは国内に導入されておらず馴染みは薄いが、量販モデルのため多くのファビアが欧州中を走っているCセグメントのハッチバックだ。

市販車のシュコダ・ファビア。特にかっこいいわけでもないが・・・

それをWRCのR5規則で製作したマシンで、完全なレーシングカーだ。今回仮ナンバーで参戦が認められ参戦が叶った。このR5規定は、パワートレーン以外はほぼWRカーと同じで、ワイドトレッド化され、ブリスターフェンダー内に収まる。こちらは血統がレース車ではなく、まんまレーシングカーなのだ。これが同じJN1クラスで戦うので、WRX STIにはかなり厳しい展開が予想される。パワートレーンは300psとされ、5速シーケンシャルミッションが搭載されている。

SUBARU WRX STIは市販車をベースに、ラリー向けに安全装備やムダを取り除く軽量化などがされたマシンで、車両重量は1430kgとライバルより200kgほど重い。エンジンは名機EJ20型ターボを引き続き採用し、H型シフトパターン6速MTを搭載している4WDだ。

こうした圧倒的不利とも見える環境で、どのように戦っていくのか新井敏弘、大輝親子にインタビューしてきた。

アライモータースポーツでは、これまで手を入れてこなかったところにも手を入れて対策をとる

ーー新井大輝
WRCで言えば、ファビアとWRX STIとは2クラスは違います。WRCだと頂点のWRカーの直下がこのR5で、その下にR4があります。グループNはさらにその下に位置し、あとはR3、R2というカテゴリーになってます。ですからまともに走れば1kmで1秒以上離され、車両重量では200kgもWRX STIのほうが重いので、重量差分でも離されます。だから、スペックからすると勝負にはならないですね。

ーー敏弘
できる対策は、これまで手を入れてこなかったようなところにも手をいれていくことになります。例えばリヤウイングを小型化したり、マスをマシン中央に寄せ、上半身を軽くしてヨー慣性モーメントをできるだけ小さくするといった工夫ですね。あと、エンジンはまだ改良の余地があると思うので、ターボラグをなくし踏み直したときにどこまでレスポンスするか、というセッティングの見直しです。

ーー編集
WRX STIのほうが有利なポイントはなんでしょうか。

ーー敏弘
ホイールベースが長いから高速ステージだと有利かもしれません。ラリー北海道とか160km/h以上のハイスピードステージでは有利でしょう。2速、3速、4速を使うようなステージは苦しいです。やはり4速、5速で走るレースなら勝てる可能性はありますけど、やってみないとわからないですね。

ーー大輝
ターマックとグラベルだと、グラベルのほうがマシンの性能差はなくなるので、グラベルで高速という条件が有利かなぁ。するとラリー北海道だけですね(笑)

ーー敏弘
ファビアR5はタイヤがFIA規定のサイズを採用しなければいけないので、少し細いタイヤになります。ブランドはおそらくミシュランのはずですけど、あのタイヤは発熱がしにくく、一旦発熱するとキープできる特性があります。コルシカなどSSが60kmもあるような場所だと、ずっと熱をキープしないと勝てないので、そうした性格のタイヤになっています。だから、そのタイヤを国内で使うと、意外とグリップしないということが起きるかもしれません。

ーー編集
ディフェンディングチャンピオンとして、どのような戦い方になるのでしょう。

ーー大輝
ヨーロッパラリー選手権(ERC)でシトロエンのR5マシンで走っているので、マシンの差はよく分かっています。R5とグループNではコーナリングスピードが別次元ですから、マシン性能の差は歴然です。ですがグラベルはドライビングスタイルが大きく成績に影響するので、ここで頑張る感じですね。これまでのライバルがガラッと変わったので、自分の立ち位置がどこにあるのか、今は見えてません。新城を走ってみてからでしょう。

ーー編集
GRヤリスはどうでしょうか。

ーー敏弘
なんといっても軽量なのが有利です。パワーはWRX STIと同じくらいだと思います。おそらく290ps程度だと。GRヤリスは今までのトヨタ車と違ってボディがすごくいい。だからサスペンションもよく動くし、ホイールベースも短いから回頭性も高いです。

ーー大輝
去年までWRX STIに乗ってた勝田さんがGRヤリスで走るから強敵になるのは間違いないし、奴田原さんも出てきますからね。でも、負けるわけにはいきません。

群馬県伊勢崎市にあるアライモータースポーツ

というように、WRX STIにとって素性は違えどGRヤリスとは真っ向勝負になる。またR5のシュコダ・ファビアは次元の違う速さを持っている。そうした強敵に対しさまざまなステージで勝負していくことになる今年の全日本ラリー。どのような戦いになるのか注目だ。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>


The Mortor Weekly

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