SUPER GT2024 第4戦は8月3日(土)、4日(日)に静岡県小山町の富士スピードウェイに延べ5万2200人の大観衆を集めて行なわれた。連日体温を超えるとされる酷暑の中、多くの熱心なファンが詰めかけていたが、SUBARU BRZ GT300にはまたしてもアクシデントが発生し、12周遅れの完走という結果になった。いったい何が起きているのだろうか。
第4戦は毎年8月第1週の週末開催で、真夏の富士スピードウェイで行なわれている。チームは夏の高温に向けてマシンを夏仕様へ変更した。見える部分ではボンネットフードの開口部が大きくなり、放熱性を高めた仕様に変更している。
見えない部分では機械類の熱対策が施され、高熱になると不具合が出る可能性があるものへの熱対策をしている。BRZ GT300の部品は開幕戦から大きなトラブルにはなっていないが、細かい課題は抱えており、この第4戦では徹底して見直しを行なっている。また約3週間前に行なわれたエントラント協会主催のGT300だけのテストではクラッシュするアクシデントもあり、マシン全体への信頼性回復も含め慎重な見直しをしているのだ。
一方、350kmのレース距離で路面温度が高くなることを見据えた準備として、タイヤの選択も重要になってくる。ダンロップでは構造やコンパウンドを変化させたニュータイヤと実績のあるタイヤの2タイプを持ち込み、土曜日の公式練習でマッチングを見ている。
戦略的には4本交換と給油のフルサービスで、ライバルチームが無交換をしてくるか?一つの勝負所でもある。300kmであればブリヂストン、ヨコハマとも数チームは無交換の可能性があるが、第4戦の路面温度は50度を超え、+50km伸延していることを考えると、全車4本交換と予測した。
土曜日の公式練習ではいつものように、山内英輝がセットアップをしていく。3〜4周計測してセットアップとタイヤ交換をする繰り返しだ。マシン自体もジオメトリーを含めた変更も同時に行なっており、タイヤのマッチングとセットアップの同時進行はプロのエンジニア集団でなければ熟せない。
山内は15周ほどしたところで井口卓人に交代している。5月に開催された同じく第2戦の富士スピードウェイでの公式練習でもほぼ同様のタイミングで井口と交代している。これは山内である程度セットアップに目処がつき、井口からも話を聞いて最終的な判断をしていく過程なのだろう、しかし井口がピットアウトしたところで赤旗中断となってしまった。
その後井口は10周ほどしているが、再び山内に交代し公式練習を終えている。公式練習でのタイムは10番手前後だった。スケジュールではFCYテスト、サーキットサファリの走行時間があり、そのタイミングでもBRZ GT300はセットアップを続けた様子だ。
午後はQ1予選B組で山内が走行する。今季はQ1とQ2の合算で予選順位は決まるが、タイヤは1セットのみ使用可となっており、Q2はユーズドでのアタックになる。そのため、Q1で山内がニュータイヤでタイムを出し、ユーズドで井口がポールポジションを狙う作戦だ。
ところがQ1予選が始まる前のFIA F4のサポートレース決勝でオイルが広範囲に出てしまい、オフィシャルによる処理は終わっているものの、Q1のA組とB組ではあとから走るほうが有利になるという判断をGTAが行ない、今回はQ1ではアッパー、ローワーグループ分けをし、Q2だけで予選順位を決める方式に変更されたのだ。
ここでドライバー変更ができたのか、不可能だったのかルールによるところだが、チームでは井口が今回ニュータイヤで走行するタイミングで赤旗になり、走行できておらず、ユーズドでしかセットアップをしなかったこともあり、予定通りQ1を山内、Q2を井口という順番で予選を戦った。
Q1で山内はB組トップタイムで、A組と合わせると2番手だった。Q2ではアッパーグループとなり、ここでのトップがポールになるが、井口は苦しんだ。Q2の前にGT500の予選もあり、路面にはラバーがのりグリップ力が上がっているはずだ。ユーズドではあるが、タイムアップに期待はかかる。だが、伸びない。Q2でQ1のタイムをうわまるチームは数チームあったが、やはりユーズドでのタイムアップには難しさがあるのだろう、予選結果は9位となった。
決勝
決勝では前後にフェラーリがいる。前が#45 PONOS Ferrari296で後ろが#6 UNI-ROBO Bluegrass Ferrari。そして横には#11 GAINER TANAX Zと#7 Studie BMW M4というGT-3勢に囲まれている。ドライバーは井口。この団子状態から抜け出し、トレインを形成してチャンスを狙う作戦。
静岡県警のパトカー&覆面パトカー&白バイ隊の先導パレードラップのあと、フォーメーションラップからのローリングスタートが切られた。
井口はポジションを一つ落として1コーナーをクリアしAコーナー、100R、ヘアピンとクリアしていくが、団子状態のままだ。そして第3セクターの13コーナー(逆バンク)で後続の#6Ferrariに追突されてしまったのだ。
井口は緊急ピットインを余儀なくされ、如何ともし難い気持ちでピットに戻る。メカニックがダメージを確認。左側リヤタイヤのパンク、そしてバンパー、フェンダー、リヤディフューザーの半分が破壊されていた。メカニックは応急措置をして再びコースに戻すも、すでに2ラップ遅れとなった。
レースとしてはこの時点で表彰台からは圏外となってしまった。それでも完走ポイントは必要なので、全力で走行することが求められた。ところがレース中FCYが発せられBRZ GT300は80km/hで走行していたが、FCYが解除され、グリーンフラッグとなってもBRZ GT300は加速しない。
井口から無線連絡が入る。FCYが解除できないという。ピットからの指示は安全な場所で一旦停止し、システムの再起動を指示。が、しかし、トラブルは改善されずコースの端を80km/hで走行してピットに戻った。エンジニアはコンピュータをつなぎ、チェックしていく。
その間、ドライバーは山内に交代し再スタートの準備をする。時間はどんどんと過ぎ、ライバルはストレートを猛烈な速度で駆け抜けている。山内のイライラは頂点に達しているに違いない。
FCYスイッチのトラブルを解消し再びコースに戻るも、すでに11周遅れという状況だ。四面楚歌ではあるが完走ポイントを取るために走行を続ける山内。幸い、山内は集団に飲まれず単独走行の状況が長く続き、マシンのセットアップ状況が掴めるという皮肉な環境にいた。
トップは#65 LEON Pyramid AMGで、1分39秒中盤で走行を重ねている。山内は1分40秒前半とコンマ5秒ほど遅いが、リヤのディフューザーの状況を考えれば十分に速い。途中2023年のチャンピオン#52 埼玉Green Braveがタイヤ無交換作戦でピットアウトした情報があった。が、結果終盤にタイヤ交換のためピットに戻り作戦を失敗していた。
山内は最後まで走り切り12週遅れという結果だったが完走ポイントは獲得した。小澤正弘総監督は「ディーフューザーが半分ない状態だとリヤのグリップは薄くなるし滑っているはず。それでもトップより0.5秒差の決勝レースタイムは十分な速さはあるということだと思います」と話している。
それにしてもオープニングラップで終了してしまうという悪夢はチームには重く暗雲を漂わせることになる。小澤総監督は「こういうときは愚直にやるべきことをきちんと積み重ねていくしかないです」と肩を落とす。
次戦は8月31日(土)、9月1日(日)に三重県の鈴鹿サーキットで第5戦鈴鹿350kmレースが開催される。いよいよ後半戦に入り、チャンピオンがチラつくチームも出てくるが、BRZ GT300は得意の鈴鹿で一矢報えるレースに期待したい。
そしてGTAからの発表としてGT300クラスの予選方式が次戦より変更になる。Q1とQ2の合算タイムに変更はないものの、Q1での組分けをなくし27台が一斉にタイムアタックをする。そしてアッパーグループ14台、ロワーグループ13台に分け、Q2では従来どおりロワー、アッパーの順で走行する。さらにタイヤは2セットまで使用できることになり、Q1、Q2ともニュータイヤを使用することも可能になった。果たしてどんな結果になるのか見どころがひとつ増えたことになる。
【スーパーGT 2024 関連記事】
☆スーパーGT2024 岡山公式テスト 新タイヤに合わせたセットアップと合算タイムアップを模索
☆スーパーGT2024 富士スピードウェイ公式テスト SUBARU BRZ GT300
★スーパーGT2024 第1戦岡山 SUBARU BRZ GT300 多くの課題を克服して臨みつつも26位フィニッシュ
★スーパーGT2024 第2戦 富士3時間レース SUBARU BRZ GT300悔いが残るガス欠15位完走
★スーパーGT2024 GTE GT300専有テスト SUBARU BRZ GT300 再び輝きを取り戻すことができるのか
★【スーパーGT2024】第4戦富士350kmレース SUBARU BRZ GT300 続くアクシデント、負の連鎖が止まらない 24位完走
*第5戦 鈴鹿サーキット(当初予定350km)【延期】
★SUPER GT2024 第6戦 SUGO300kmレース SUBARU BRZ GT300 5位入賞を果たすまで
★【スーパーGT2024 第7戦オートポリス】なんて日だ!17台ごぼう抜きからのクラッシュ
★【スーパーGT2024】第8戦もてぎ300kmレース 悪夢再び
■ 第5戦 鈴鹿サーキット(300km)12月7日、8日
スバル/STI Motorsport通信
スーパーGT 関連記事
SUBARU Motor Sport Magazine 公式サイト