【ルノー・日産/ダイムラー/フォード】燃料電池車開発で共同開発に合意

雑誌に載らない話vol63

フォードのラジ・ナイル製品開発担当副社長(左)、ダイムラー・ベンツのトーマス・ウェーバー研究開発担当副社長(中)、日産の山下光彦研究開発担当副社長(右)

2013年1月28日、新たに3メーカー間で燃料電池車(FCV)に関する戦略的コラボレーションが発表された。これは先日発表されたトヨタ/BMWの協業契約よりさらに強いインパクトがあり、新たな世界戦略の枠組みが完成したことを意味する。ルノー・日産連合とダイムラー社がフォード社と燃料電池車の量産化技術の開発を加速させるために協業することに合意したのだ。その内容とは・・・

ダイムラー、フォード、日産は3社で燃料電池システムの開発スピードアップを図るとともに、コストダウンする技術を開発するために連携するという覚書を取り交わした。そしてこのコラボレーションにより、少なくとも2017年初頭には世界初となる量産市販モデルを発売することを目指すことが確認されている。

3カ国、3社のコラボレーションにより、燃料電池システムの世界標準スペック、世界標準となるコンポーネンツとして開発され、また、この3社のコラボレーションにより公官庁の政策策定者、サプライヤー、関連企業に明確な方針を伝え、世界規模での水素インフラストラクチャーの開発・普及を促進させることも目的の一つとするとしている。

メルセデス・ベンツ社のBクラス燃料電池車

そして、このコラボレーション・プロジェクトに関して、3社は均等な資金を負担する。もちろん3社間で最大限に設計を共通化させ、量産効果を引き出し、効率を高める戦略である。3社のそれぞれの燃料電池車に関する経験は長く、各社の燃料電池車の試験走行距離は世界各地の様々なコンディションの中で1000万kmに達するといわれている。こうしたノウハウを持ちより、開発スピードを加速させること、開発コストを抑制し結果的に販売価格を低めること、そして燃料電池車に関する世界的なリーダーシップを確保することが今回のコラボレーションの目的である。

フォード社のフォーカスFCVのコンポーネンツレイアウト
フォード・フォーカスFCV

ルノー・日産連合とダイムラー社は2010年から多方面でのコラボレーションに合意しており、燃料電池車の共同開発も進めているが、今回、ここにフォードが加わった形になる。燃料電池車に関してはダイムラー・ベンツ社が1994年に世界初となる燃料電池実験車(NECAR)を発表して世界に衝撃を与え、燃料電池技術に関しては大きくリードしていたが、量産化に向けての開発コストの負担は大きく、ダイムラー・ベンツ社ももはやルノー・日産、フォードなど他社と協業せざるを得ないというのが現実だ。しかし、その一方でリーダーシップも確保するという方針を堅持しているといえる。

なお今回の共同開発に関して、ダイムラー、フォード、日産はこれまでに独自の燃料電池車を開発しているので、今後は各社のシステムやコンポーネンツを比較検討し、スタック(発電部)、電池、電動駆動システム、燃料の水素貯蔵タンクなど主要なコンポーネンツを共通化させるところからプロジェクトはスタートする。その中で、ルノーは量産化やコスト低減に関して関与していくと推測できる。

なお、燃料電池車に関してはホンダがすでにFCV「クラリティ」を世界で20台限定でリース販売した実績があり、トヨタは2015年に市販型燃料電池車「FCV-R」を発売すると発表している。ホンダも同様の対応をすると見られる。2015年から水素補給インフラの整備が開始されるためだが、この時点での燃料電池車を完全な量産タイプとするのは難しいと推測される。

日産の小型化された新型スタック(右)

2012年9月のパリショーで会談したダイムラーのツェッチェCEOとゴーンCEO(右)

なお、ルノー・日産とダイムラー社のコラボレーションに関しては2012年9月のパリショーの時点で、カルロス・ゴーンCEOとディエター・ツェッチェCEOが会談し、第2ステップとなる協力関係を決定し、発表している。

その内容は、ルノーとダイムラー社が新しい低燃費の直噴ターボ4気筒エンジンの共同開発、共同生産を行い、そのエンジンを2016年にダイムラー、ルノー、日産の車両に搭載すること。そして、ダイムラーが中心となって進める新型トランスミッションは、日産への技術提供とJATCOメキシコ工場で生産も行い、2016年から日産、インフィニティの車両へ搭載される。この新型トランスミッションはシフトバイワイヤー、パークバイワイヤー、アイドリングストップ適合システムを採用するとされている。

ルノー公式サイト
日産自動車公式サイト
ダイムラー公式サイト
フォード公式サイト

ページのトップに戻る