■メルセデス・ベンツ
進展するルノー/日産との提携関係
ダイムラーベンツと日産は、デトロイトショー開幕前日の1月8日に、2014年から日産のテネシー州デカード工場で、メルセデス・ベンツとインフィニティ用の4気筒エンジンを生産することを発表した。
2014年から生産を開始し、最大稼働時の生産能力は年間25万台規模となる予定だ。デカード工場で生産されるエンジンは、メルセデス・ベンツとインフィニティの両ブランドで複数の車種に搭載される予定になっている。
日産CEOのC.ゴーン氏は、「今回のプロジェクトは、両グループの提携が実質的な関係であることを示すマイルストーンとなります。また欧州域外で初めて実施される重要なプロジェクトとなります。現地生産によって、為替リスクの低減を図るとともに、北米におけるビジネスの成長を急速に伸ばすことができ、ルノー・日産アライアンスとダイムラー双方にとってウィン・ウィンと言えます」と語っている。
またメルセデス・ベンツ会長のディーター・ツェッチェ氏は、「メルセデス・ベンツの成長戦略2020にもとづき、顧客に近い場所で生産能力を増強することを決定しました。ルノー・日産との提携関係を戦略的に拡大することにより、当社は顧客市場に近いNAFTA地域において、好条件でエンジン生産を行えると同時に、両グループの協業によるシナジー効果を最大限に活用することができます。今後、当社は、北米という重要な成長市場で計画的に生産能力を拡大していきます」と語っている。
メルセデス・ベンツブランドのエンジンが北米自由貿易協定 (NAFTA) 地域で生産されるのは、今回が初めてで、生産されるエンジンは輸送にも有利なテネシー州デカード工場で2014年より生産開始される予定だ。そして、アラバマ州タスカルーサで組み立てられているメルセデス・ベンツCクラスに搭載される予定となっている。
このダイムラーベンツと日産の協業は、すでに合意されているスマートとトゥインゴの車体構造共同開発、ルノー車をベースにしたエントリークラスの新型小型商用車の共同開発、さらにトゥインゴ用の3気筒エンジン、4気筒ディーゼルを共同開発し、小型商用車やスマート、メルセデスの次世代コンパクトカーに供給すること。そして、メルセデスはインフィニティ用に4気筒、6気筒のガソリン、ディーゼルエンジン、トランスミッションを供給し、メルセデスのコンパクトカー用プラットフォームをインフィニティ用に供給する。また、EVではメルセデスはドイツ製の電池を、ルノー・日産はモーター、電装部品を供給しスマートEV、トゥインゴ ZEを実現するというプロジェクトとなる。
軽量、高い運動性能、ラグジュアリーを追求した革新的SLをワールドプレミア
また、新型SLのワールドプレミアを行った。60年前に始まる伝統を持つSLだが、また新たに常識を打ち破る革新的な技術を取り入れることで、SLという車名が意味するスポーツ性、デザイン、快適さを実現したモデルとなっている。
新型SLはほぼすべてがアルミニウムで作られ、旧型と比べ140kg以上も軽量化されているのだ。きわめて高剛性のアルミボディにより、これまでとは比較にならない高次元の俊敏さやスポーツカーらしいハンドリング、優れた乗り心地に貢献し、ラグジュアリー・ロードスタークラスで新たな基準を作り上げた。
ツェッチェ会長は、「今、世界には9億台以上、数千のモデルが存在しているがその中で極少数のアイコンたるべきクルマが存在し、このSLも突出した存在感、デザイン、究極のラグジュアリーさ、スポーツ性、運動性能においてその1台といえます。このSLは最善か無かをまさに体現したクルマなのです」と語った。
SLという車名は超軽量を意味しているが、このSLはごく一部の素材以外はオールアルミの量産モデルであり、燃料タンクカバーにはマグネシウム、Aピラー部に超高張力鋼管を内蔵に使用するのみだ。ボディシェルは従来のスチールボディより110kg軽く、このアルミボディは、きわめて剛性が高く、ハンドリング、燃費、安全性、快適な乗り心地に貢献している。前後のハブキャリア、サスペンション・リンク類もすべてアルミ製だ。
もちろんアルミ材は部位により、チルキャスト、真空ダイキャスト、押し出し材、差厚アルミパネルなどを使い分けている。この結果、SL500は従来より125kg軽い1785kgに、SL350 は140kg軽い1685kgとなっている。
サスペンションは、標準のセミアクティブタイプと、オプションのフルアクティブ・サスペンション(Active Body Control)が設定される。パワーステアリングは、車速感応・可変ギヤ比式の電動機械式(EPS-apa)を新採用。
エンジンはSL500用の新型V8(4663cc)は排気量を800cc減らし、435ps、700Nmの出力となり、燃費は22%改善している。
SL350用のV6(3499cc)は排気量に変更はなく、306ps、370Nmの出力で、燃費は約30%低減させている。いずれのエンジンとも新世代直噴で、スタート&ストップを装備している。0→100km/h加速は、350SLが5.9秒、500SLが4.6秒で、いずれも従来型より向上している。
インテリアは最上級の素材、仕上げとして、最上級の快適さを生み出す。装飾パネルは本木目が3種類、アルミ材が2種類設定され選択が可能となっている。またボデサイズは全長が+50mm、全幅が+57mm拡大されたことで、室内スペースはさらなるゆとりが生まれている。
ボディデザインは、SLの伝統様式を守りながら、新たな方向性を付け加えている。基本フォルムはロングノーズ、ワイドなリヤエンドによるクラシックさと、細部の現代風テイストをミックスさせたものだ。Cd=0.27で、低い空気抵抗だけではなく風騒音、室内への風の巻き込みを徹底して抑え込んでいる。
ルーフは、電子油圧式のヴァリオルーフで3種類を選択できる。ノーマルの塗装ルーフ、ガラスルーフ、そして新登場のマジックスカイコントロール式だ。マジックスカイコントロールは、スイッチによりガラス濃度を明暗に変更することができるものだ。ヴァリオルーフのフレームはマグネシウム製で、従来タイプより6kg軽くなっている。またその開閉は20秒以内で完了する。
新規のテクノロジーとしては、マジックビジョンコントロールがあげられる。フロントガラスを払拭する時にワイパーブレードからウォッシャー液が供給され、他車にようにスプレーする必要がなくなっている。またオプションでヒーテッド・ワイパーブレードも装着できる。
もうひとつ、ハイエンド・オーディオシステムに含まれるフロントバス・システムも特筆できる。バススピーカーをフロント隔壁の下側に設置することで、コンサートホール同等のクリアなサウンドを実現しているのだ。
安全性、ドライバーアシスタンスに関しては、メルセデスでも最高峰のシステムをフル装備し、もっとも安全なロードスターであることを強調している。
■GM
・キャデラックATS
GMはデトロイトで、アメリカ・ラグジュアリーをブランドコンセプトとした新型モデルキャデラックATSのワールドプレミアを行った。ATSは最新の軽量アーキテクチャーを採用し、ドイツの名立たる競合プレミアム・モデルに挑む高い志を備えたコンパクト・ラグジュアリースポーツセダンだ。
キャデラックATSは、キャデラックのコンセプトである「アート&サイエンス」の新たな表現であり、コンパクトなサイズとドライビングダイナミクスを基本テーマに開発され、車両重量はセグメントの中で最軽量レベルの1542kgに抑えられている。
主な特徴は・・・
・ほぼ50:50の前後荷重配分
・キャデラック初の5リンク独立リヤサスペンションと軽量な高張力鋼を使用した効率的なストレートリンク
・フロントにマルチリンク型ダブルピボット式ストラットとダイレクトマウント・スタビライザー
・任意に設定できるマグネティック・ライドコントロール付FE3スポーツサスペンション
・アンダーフロアの空力カバー
・ZF社製ベルト駆動式の電動・可変パワーステア(EPS-apa)
・4チャンネルABS、ブレンボ社製高性能ブレーキ
・AWDの設定
このような仕様からも本気度が感じられる。エンジンは新開発のNA、2.5L・4気筒エンジン(202ps、258Nm)と、1500rpmから最大トルクを発生する2.0Lの4気筒ツインスクロールターボ(270ps、353Nm)、それと3.6LのV6型(320ps、362Nm)の3種類を設定している。ハイウェイモードの燃費は、30MPG*(12.7km/L)以上とされている。4気筒エンジンは可変容量オイルポンプなどを備え、摩擦抵抗を徹底的に低減。直4、V6型ともに直噴システム、可変バルブタイミング機構を装備、直4はバランスシャフトも装備している。 *MPG=単位はマイル/ガロン
・シボレーコンセプト コード130RとTru 140S
シボレーの2台のコンセプトカーは、次世代ユーザー層、つまり現在の若者の欲求、意見を反映したクルマだ。これを実現するためにシボレーは全米で調査し、若者の意見を取り入れたデザイン、機能を盛り込んでいる。
コード130Rは、ターボエンジン+モーターという組み合わせの4座席パラレル・ハイブリッドカーだ。スタート&ストップ、ブレーキエネルギー回生を備える一方で、滑らかで力強い加速を目標にしている。デザインは、ダイナミックさと少々のノスタルジーを加味した個性的なフォルムとしている。
Tru 140SはFF駆動方式で、適度に先進的な4座席のスポーツクーペとしている。ボディは3ドア・ハッチバックだ。カラーリングは新しいマットホワイトを採用し、シボレーのクロスフラッグ・グリル、クロームカラーのホイールを組み合わせる。デザインは迫力、エキゾチック、俊敏さを表している。プラットフォームはシボレー・クルーズと共通で、ボルトとも兄弟関係にある。性能的には直噴1.4Lとモーターの組み合わせ、スタート&ストップの装備などを想定している。
装備としては2台とも、WiFi、スマートフォンとの接続、ヘッドアップディスプレーなどもユーザーから求められている。燃費は40MPGで、搭載されるエンジンは1.4Lターボ・エコテック。出力は150psで想定価格は2万ドル以下とされている。
■フォード
フォードはデトロイトで、シェルビーGT500、リンカーンMKZコンセプト、新型フュージョンを発表した。
2012年モデルのシェルビーGT500は、フォード・スペシャルビークル・チームが、更なるチューニングを行い、コブラのロゴが入った専用のレカロシートに、コンフォート、スタンダード、スポーツという3モードを持つ電動パワーステア、EPSを装備。またスマートフォンによるボイスコントロールができるAppLinkを新採用した。
エンジンは5.4LのV8型・DOHCにルーツ式過給機を装備し、550psを発生。6速MTを組み合わせた硬派のためのハイパワーカーである。
リンカーンMKZは、次世代のリンカーンの方向性を明示したコンセプトモデルだ。その目的は次期リンカーンというではなく、新たなブランドを再構築することを証明する役割としている。
そのデザインは、現行モデルを進化させ、よりエレガントさとリンカーンの伝統を強調している。インテリアは明るく、暖かさを感じさせるデザイン。そして新たにプッシュボタン式ギヤシフトを採用し、プラットフォームは新開発の中型プラットフォームで、FF、4WDが設定される。エンジンはエコブーストシリーズ、さらにはハイブリッドモデルもラインアップされる。
デトロイトにおけるフォードの最大のハイライトは、新型フュージョンのワールドプレミアだ。フォードのワールドカーであるフュージョンは、他の地域ではモンデオとして展開され、フォードの世界戦略を担っている。
新型フュージョンのパワーユニットは、直4・NA2.5L(170ps)、直4・1.6Lのエコブースト(179ps)、直4・2.0Lエコブースト(237ps)という標準ガソリンエンジンモデルと、新開発のアトキンソンサイクルの直4・2.0L(185ps)、電気的CVTを搭載するハイブリッド、さらにハイブリッドと同じエンジン、トランスミッションを搭載するエネルギ(プラグインハイブリッド)という3種類のラインアップとし、スタート&ストップシステムを備えることでクラストップの燃費性能をアピールしている。
さらに、新型はカメラ、レーダーを装備し、レーンキープアシスト、アダプティブクルーズコントロール、アクティブパーキングアシストなどドライバー支援システムも充実している。なおハイブリッドは現行モデルにも設定されていたが、新型は電池がニッケル水素からリチウムイオン電池にアップグレードされ、このため、EVモードでの最高速は75km/hから100km/hにアップしている。また現行モデルのエンジンは2.5Lだが、新型フュージョンは新開発のアトキンソンサイクル2.0Lに変更され、より高性能と燃費を両立。シティ燃費は47MPGを達成している。この燃費は2012年型トヨタ・カムリ・ハイブリッドやヒュンダイ・ソナタ・ハイブリッドを凌駕しているのだ。
フュージョンの燃費チャンピオンカーは新開発のエネルギ・プラグインハブリッドである。このモデルは燃費の世界チャンピオンとなったとしており、換算燃費は100MPG以上とされ、先行したシボレー・ボルト、トヨタ・プリウス・プラグインハイブリッドを上回っている。