マツダCX-3 よく分かる新型CX-3詳解 1.5Lディーゼルターボ搭載

マツダ 新型CX-3

マツダから新たなモデルがデビューする。2014年ロサンゼルスオートショーでワールドプレミアされた「CX-3」で、その全貌が明かされた。国内には1.5Lディーゼルターボのみの供給で、6AT、6MT、4WD、FFが取り揃えられ、機械式駐車場にも入る全高1550mmというボディサイズだ。

CX-3「XD Touring」
CX-3 「XD Touring」
マツダ 新型CX-3 XD TouringCX3_047_XD_Touring

◆ポジショニング
マツダとしてはCセグメントへのクロスオーバーモデル投入というのは、初めての試みでありスカイアクティブ・テクノロジー導入以降積極的な顧客獲得を展開している。

開発主査の冨山道雄氏は「カテゴライズとしてはクロスオーバーだけど、既存のカテゴリーに当てはめたつもりはない」と説明。プラットフォームはスカイアクティブ・モデルに共通のもので、ホイールベースはデミオと同じ2570mm。だが、それ以外はゼロからのスタートだったという。

マツダ 新型CX-3

CX-3のボディサイズは全長4275mm×全幅1765mm×全高1550mmで、デミオよりはひとまわり大きく、Cセグメントサイズに相当する。そして国内投入するモデルに搭載するエンジンは1.5Lターボディーゼルだけである。JC08モードはFFモデルで25.0km/L。スカイアクティブエンジンの特徴として、実用燃費重視というポイントが挙げられ、このモード燃費との差はわずかでカタログ値に近い実用燃費が期待できる。

マツダ CX-3 4面図

さて、新型CX-3のカテゴリーでは、既存のカテゴリーに当てはまらないということであるが、それはクロスオーバーという言葉から一般的にはクルマの形を融合したモデルをイメージする。ハッチバック、SUV、クーペ、スペシャリティカーを融合したものというのが一般的だろう。だがCX-3はそうではなく、ユーザーのライフスタイルを融合し、クロスオーバーさせるという思いで開発したと冨山氏は言う。「次の時代のスタンダードを作る、ユーザーにとってもっと相応しいものがあるのではないか?」という思いだというのだ。イメージとしてはマーケティングで言うところのアーリーアダプター向けの商品であり、それがボリュームゾーンへとシフトするモデルをイメージしているということだろう。

CX-3の魂動デザインでのポジショニング
CX-3の魂動デザインでのポジショニング

こうした思いから開発されたCX-3のラインアップは前述の1.5Lターボエンジンに6速AT、6速MT、FF、4WDで、3つあるグレードのすべてに用意される。標準モデルのXD(クロスディー)、XD Turing、トップグレードのXD Turing L Packageの3つがグレードとなる。

そのライフスタイルの融合をクロスオーバーさせる思いとして、3つの提供価値を説明している。ひとつには自己表現要求を満たすクルマでありたいという気持ちに応える、都会的で先進的なもの。純粋に運転が楽しめるという要求に応える人馬一体というクルマ造り、そして家族、仲間が楽しく刺激的な移動が体験できるモデルという価値を提供するという。

◆4つのキーバリュー
そのためのキーバリューとして、デザイン、パッケージング、ダイナミック性能、クラスレスの先進性という4点に注力して開発している。デザインではこれまでの「魂動」デザインの流れを汲んだ最新の進化系デザインである。軸の通った安定感と軸を中心に展開する力強さを随所に感じさせるデザインで、CX-3はデザインされている。

XD Touringのインテリア
XD Touringのインテリア
マツダ 新型CX-3 フロントシートマツダ 新型CX-3 リヤシート

 

パッケージングではスタイリッシュなデザインでありながら、十分なスペースを確保している。使いやすさも徹底的に練りこみ、とりわけ着座位置に拘っているという。運転視界、見晴らしのよさの提供、乗員同士がアイコンタクトのしやすい位置。そしてカッコイイ乗り降りをしてほしいという思いから、乗降性にも拘りを持って着座位置の適正化をしたという。

マツダ 新型CX-3 タイヤ
タイヤはプロクセスR40
ペダル・レイアウト
ペダル・レイアウト

つまりマツダが強い拘りを持つ、ドライビングポジションに他ならない。理想的なペダル配置、ステアリングのチルト、テレスコピック機能、十分なシート調整幅、そしてどんな体格のドライバーでもしっかりフィットする振動吸収タイプのウレタン採用シートなどである。ちなみに、チルト移動量は45mm、テレスコピック移動量は50㎜、シートスライド量は260mm、シートリフト量は40mmとなっている。

そして、ダイナミック性能ではスカイアクティブD搭載、スカイアクティブシャシー、ボディ、ミッション、そしてFF、4WDを搭載し人馬一体を表現している。

◆世界初の制共振技術搭載
エンジンではデミオに搭載した1.5Lターボと基本は同じエンジンになるが、制御の変更によりトルクを20Nmアップさせ270Nmという出力になている。馬力には変更なく105ps。圧縮比は14.8でディーゼルとしては低圧縮である。エンジン詳細はこちらを参照頂きたい。

マツダ 新型CX-3 エンジンルーム

マツダ 新型CX-3 1.5D1.5D エンジン性能曲線

 

そしてさらに、世界初のディーゼルエンジンに関する新たな技術が投入されている。それはディーゼル特有のノック音、カラカラ、ガラガラ音を立てるディーゼルを消音する技術だ。

i-ELOOPとセットでATモデルにメーカーオプションとして設定されるこの技術は、「ナチュラル・サウンド・スムーザー」というネーミングで、けっしてスピーカーによるサウンドチューニングというレベルものではない。ハード部品の解析技術によって生まれた新しい技術で、共振を抑えるものだ。マツダのパワートレーン開発本部・新畑耕一氏の説明によると、ディーゼル特有のノック音はピストンを質量、コンロッドをバネとする上下伸縮振動=共振であることを突き止めたという。そしてそれは3.5kHz前後の周波数の振動ピークがあることを解明している。

マツダ 新型CX-3 1.5D 
1.5Lディーゼルに新採用される「ナチュラル・サウンド・スムーザー」
マツダ 新型CX-3 ナチュラル・サウンド・スムーザーマツダ 新型CX-3 ナチュラルサウンドスムーザーマツダ 新型CX-3 ナチュラル・サウンド・スムーザー

 

この共振を抑えればディーゼル音は収まる。デミオのディーゼルを経験しているユーザーであれば、非常に静かなエンジンであることは経験済みだと思うが、今回はもっと静かになるというわけだ。デミオに搭載する時点でエンジンブロックを始め、空気振動によるディーゼル音が発生する箇所の解明により、形状変更をしている。そのため、スカイアクティブディーゼルは静かなディーゼルとなっていたが、このナチュラルサウンドスムーザーはピストン本体に工夫を凝らし、さらに静粛なディーゼルへとしている。

仕組みはピストンピンの中にダイナミックダンパー(振動吸振器)を仕込み、3.5kHz周辺の周波数帯と共振させることで打ち消すという手段を用いている。これにより大幅なディーゼルノック音が低減できているわけだ。エンジン音が静かになればボディに必要な吸音材など重量が重くなる材料を減らすことができ、ドライバーも「ガソリンとディーゼルの区別がつかない」というレベルになるのだ。

◆操縦安定性の見直し
人馬一体をつかさどる重要性能にシャシーがある。先代デミオからハイキャスターの方向にシフトし、現行デミオのハンドリングになったというのが、大雑把な言い方になる。そのハイキャスターという基本的な考え方に変更はないが、開発コンセプトの違いとボディ形状の変更から最適化の必要があるわけだ。

CX-3は想定ユーザーを30代の男性を強くイメージし、ファミリーでもカップルでもシングルでもある男性をターゲットにしている。つまり、デミオより運転していて楽しいと思える要素を増やす必要があるということだ。それには、クロスオーバーライクなデザインにより、着座位置は高くなり、アイポイントも高くなっているため、ロールも感じやすくなる。そのため、まずはそのあたりから最適化がすすめられているのだ。

マツダ 新型CX-3 フロント・サスペンション
フロント・サスペンション
リヤサスペンション
リヤ・サスペンション

まず、ロールセンターの変更だ。ロールセンターはデミオよりも高く設定し、反面ロール剛性を上げロール角を減らしている。もちろん電動アシストのEPSA制御を変更し、ダンパーも外径変更している。フロントは軸重が増える分、デミオよりも剛性が必要であり、アクセラに採用されているダンパー筒径で設計されている。ちなみにフロントはショーワ、リヤは日立オートモーティブというサプライヤーになっている。「2WDと4WDでは別減衰のダンパーですが16インチと18インチの違いは同じダンパーで乗り心地をつくりました」と操安性能開発本部の水島裕文氏は言う。

マツダ 新型CX-3 4WDシステム

当然4WDはCX-5やアテンザに採用されているオンデマンド式で、直進時でもリヤに一定の駆動力を分配するタイプだ。したがって駆動トルク変化が大きく直進性も強いので、電動アシストとダンパーの作りこみが必要だったということだろう。「目標としてはコーナリング時にボディのねじれが起きますが、その時に応答遅れがないようにするということが高い目標ではあります」と語る。

さて、フロントのジオメトリー変更ではデミオの数値から、キャスター角とキャスタートレール量を変更している。これは、よりワインディングなどを軽快に楽しく走る方向性の味付けだ。意外だがデミオよりややキャスターを起こしキャスタートレールを減らしている。また、ステアリングギヤのアウターボールジョイントの位置も変更している。これはロールしてバンプしたときに、バンプアウト量をデミオより少なくし、より曲がりに強くなる方向にしている変更だ。

これら曲がりに強くなるチューニングは、ターゲットユーザーに合わせるためのものであり、人馬一体を味わうための味付けとも言える。さらに、ロアアームブッシュの変更もしている。これはフロントロアアームの前側ブッシュの硬度を上げ、より横力がかかった時の一時たわみを少なくしてより応答性を上げている。その分、後ろ側ブッシュを柔らかくしていなしている、ということをしている。一方、リヤサスペンションは取り付け位置を高く変更し、よりダンピング効果を高めている。

直線/環状を組み合わせたボディ骨格
直線/環状を組み合わせたボディ骨格
マツダ 新型CX-3 ボディ補強
グリーンの部分を追加補強

これらのシャシー性能の見直しをすることと合わせ、スカイアクティブボディも開発が進められた。最新の解析技術により最適な補強が可能となり、シミュレーション技術と合わせて、数百、数千、数万のアイディアから最適を探すということも可能にしている。とりわけCX-3ではイラストのグリーン部分が新たに骨を足し、高い剛性を得ている。これらの補強により、サスペンションの働きもスペック通りに働き、ドライバーは意のままに操る楽しみを得ることにつながるというわけだ。

◆クラスレスの先進性
i-ACTIVSENSEをはじめ、先進装備をもっているのもCX-3の特徴だ。マツダ・レーダークルーズコントロー(MRCC)、スマートブレーキサポート(SBS)、スマートシティブレーキサポー(SCBS)、AT誤発進抑制制御、ハイビームコントロールシステム(HBC)、車線逸脱警報システム(LDWS)、リヤクロストラフィックアラート (RCTA)、ブランドスポットモニタリング(BSM)などが装備される。

CX-5、アテンザ改良モデルから採用された「i-ACTIVESENCE」
CX-5、アテンザ改良モデルから採用された「i-ACTIVSENSE」

◆マーケット
CX-3はマツダにとって初めてのフィールドという見方もできる。さらにこのモデルはグローバルモデルであり、北米、欧州で販売されるモデルだ。しかし、生産では国内工場のみで生産されメキシコ、タイでは現状予定されていない。また北米には2.0LのNAガソリンモデル投入が予想される。2015年現在の円安効果は高く発揮されるのは間違いない。為替変動によっては海外生産を開始するという、安心感のあるビジネスだとも感じる。そしてマーケットでCX-3がどのように評価され、人気を得ていくのか楽しみなモデルだ。

なお、CX-3の価格は未発表だが、230万円から300万円程度だろうと予想される。正式な価格は、2月下旬に発表される予定だ。

マツダ CX-3 諸元

マツダ関連情報
マツダ公式サイト

COTY
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