2015年5月15日~17日に開催されたニュルブルクリンク24時間レースは30台にものぼるGT3マシンを始め、合計151台のマシンが出場した。4月に行なわれた4時間耐久レースで、日産GT-R GT3が高速ジャンピングスポットで空中に舞い上がり、コースアウトして観客が死亡する大事故を受け、今回のニュルブルクリンクの超高速バックストレート部には250㎞/hの制限速度が採用された。
今回のレースでは総合優勝を争うSP9GT3クラスにアウディは新型R8 LMSを4台のカスタマーレーシングとして投入した。しかしこれまでの常連のBMW Z4 T3、メルセデスSLS ANG GT3と予選から激戦を展開した。なおポルシェはワークスの支援を受けたファルケン・ポルシェが現行型911 GT3Rで参戦している。
イギリス勢ではベントレー・コンチネンタルGT3がSP9クラスにワークスチームとして参加し、アストンマーチンは同じくSP9クラスにヴァンテージGT3、SP10クラスにヴァンテージV8 GT4、SP8クラスにヴァンテージV8などを送り込んでいる。
日本からは、日産がGT-R GT3が2台出場。1台はニスモのGTアカデミーチーム、もう1台はGT3レースに参戦しているシュルツチームだ。トヨタGAZOOレーシングからはレクサスLFA コードX(SPプロ・クラス)が出場。このSPプロ・クラスは、LFAとポルシェの先行プロトタイプ2台の合計3台のクラスだ。LFA コードXの中身は先行開発用とされている。
トヨタGAZOOレーシングは、SP3Tクラスに新たにレクサスRCが出場している。2.0Lターボクラスでの参戦であることから分かるように、RCは新開発の2.0Lターボを搭載した先行量産開発モデルなのだ。もちろんSP3TクラスにはスバルWRX STIも出場している。今回は強敵となっていたセミワークスのアウディTTSチームは不在だ。
5月16日、曇天のもとでスタートしたレースは、序盤から、BMW、アウディ、メルセデスの激しい戦いが繰り広げられ、トップの座も頻繁に入れ替わった。この激戦はレース終盤まで繰り広げられ、トップの入れ替わりはなんと35回に及び、ニュルブルクリンク24時間レースの新たな記録が残されることになった。それほど各車の性能は均衡しており、レースの半ばを過ぎてもトップグループは同一周回での戦いとなった。
レースの展開は、アウディよりBMWが有利に進めており、R8 LMSは夜間にトップのマシンがクラッシュし、もう1台も追突されて大破…と厳しい条件となったが、夜間にはBMW、メルセデスにもトラブルが発生し、最終的に残ったアウディ28号車とBMW25号車、そしてノートラブルのファルケン・ポルシェ44号車による戦いになった。決着がついたのは最後の1時間で、アウディ28号車が40秒差でBMW25号車を振り切った。
日本車で最高位は日産GT-R GT3を駆るGTアカデミーチームで、予選では31番手と沈んだが、決勝ではトラブルなく走り続け、総合9位でゴールを迎えた。
トヨタGAZOOチームはLFA コードXが序盤は15位前後を走行していたが、夜に入ってマーシャルカーと接触し20位以下にまで後退した。その後は順調に走行を続けたが終盤にギヤトラブルで6速が使えなくなったものの総合14位でゴールを迎えた。2.0Lターボを搭載したRCは終盤まで淡々と走り、クラス2番手に付けていたが、終盤に電気系のトラブルが発生し、クラス4位となった。
スバルWRX STIは予選でもポールポジション(総合43番手)を獲得し、ラップタイムはコースが空いていれば9分を切ることができると思われるほどだった。予選を担当したC.ヴァンダムは、乗り心地も改善しており、9分を切ることは容易だという。
もちろんこれはボディ剛性の見直し、空力特性の大幅な改善などが奏功した結果である、なおレースでは実績不足のパドルシフトを使用せず、レバー式のシーケンシャル・シフトを使用した。
今回はSP3Tクラスには強力なライバルが不在であり、WRX STIはレース序盤の降雨でもAWDの能力を生かし、クラストップの座を譲ることなく、ノートラブル、アクシデントなしで24時間を走り切り、3年振りのクラス優勝を成し遂げた。総合でも18位となり、周回数は143周というかつてない記録を残した。
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