コンパクトサイズのステーションワゴンタイプとして、フィットをベースとしたホンダ・シャトルに試乗してきた。<レポート:髙橋 明/Akira Takahashi>
試乗は横浜の市街地で、一般道路と首都高速を使ったコース。信号待ちや交差点の右左折、車庫入れなど日常使いの環境を中心とした試乗だった。試乗モデルは売れ筋となるHYBRID XとトップグレードのHYBRID Zの2モデルに試乗した。シャトルには他に1.5Lのガソリン自然吸気エンジンを搭載したベースグレードGも設定されているが、今回は試乗できかった。
車両価格はベースグレードのGが169万円からで、トップのHYBRID Zが238万円。中心は219万円のHYBRID Xとなる。シャトルには4WDも設定されている。市場は年間20万台から27万台程度の販売台数規模で、ライバルはプリウスα、カローラフィールダーなどと争うことになる。
ボディサイズは全長4400mm×全幅1695mm×全高1545mm(4WD1570mm)、ホイールベース2530mmだ。開発の狙いに立体駐車場に入ることも視野に入れているが4WDモデルでは1550mmを超えるため、入庫できず残念だ。
シャトルの特徴のひとつに、荷室を中心としたユーティリティがあり、使い勝手にこだわったモデルでもある。そしてi-DCDを搭載する省燃費のハイブリッドモデルというのが特徴でもある。いわずもがな、フィットをベースとしたステーションワゴンで、セダンのグレイスなどと兄弟車となる。出力はハイブリッドシステム137ps、エンジン出力110ps、トルク134Nmといスペックで34.0km/Lという省燃費だ。一方の1.5Lのガソリンモデルは132ps/155Nmで21.8km/Lという数値になる。
ハイブリッドの走りだしはモーターが行なうなど特徴的なi-DCDだが、システムを理解していなくても特に違和感なく、普通に反応してくれる。ただ、従来のガソリン車からの比較で言えばすこし、レスポンスの点で穏やかだという印象になるだろう。これは燃費を考えたエコ設定で走行した場合で、Sボタンを押すとレスポンスも良くなる。
また、これまでのi-DCDと違った印象をもったのは、ブレーキのタッチだ。ハイブリッド車は回生システムを持っていることなどから油圧式ブレーキとは異なり、ペダルフィールにもその違いがある。が、だいぶ油圧式ブレーキに近いタッチになっており、好印象をもった。<次ページへ>
試乗会場のホテルを出発し、みなとみらいの市街地を抜け、首都高速に入る。合流車線での加速ではやはりSモードを使いたいという印象で、エコモードはレスポンスという点でまどろっこしい。
交通量も多い首都高速だが、車内は静かだ。遮音材をラミネートしたフロントウインドウ(HYBRIDモデル)やフロアアンダーカバーに吸音タイプを採用する、風切り音低減のAピラー形状、もちろん、吸音材などの見直しも行なわれた結果だろう。
また、乗り心地も入力がまろやかで、好感触だ。SACHS製の振幅感応型ダンパーは小さい入力、大入力で最適な減衰力を発揮するダンパー構造を持ち、いい仕事をしている。静粛性や乗り心地ではクラストップレベルという印象だ。
一方でステアリングの操舵フィールでは、少し違和感が残った。センター付近から少しの操舵では反応は穏やかで、想定ユーザーを意識したものだと感じたが、ハンドルを切った状態からの切り足し、切り戻しでは動きすぎる印象だった。センター付近の反応との違いに違和感があるという印象で、スポーティカーのような反応していた。また、ジオメトリーでもリニアなステアフィールを意識したのか、弱アンダーな部分が感じられず曲がりすぎるという違和感も残った。しかし、ステア操舵力は軽く、最小回転半径4.9m(FF/16インチモデル)で、コンパクトボディと相まって女性でも扱いやすい。狭い駐車場でも切り返しは楽にできる。
シャトルの特徴のひとつでもある、ユーティリティでは3ナンバークラスの荷室容量をもち570Lもある。開発の狙いには大容量や汚れたものを気にせずおける場所など、ユーザビリティを大切にしている。たとえば9.5インチのゴルフキャディバック4本が横積みできる、樹脂素材の床下収納は濡れ雑巾でサッと掃除できるなど嬉しい能力、装備だ。また、リヤシートバックにあるマルチユースバスケットを説明会ではアピールしていたが、筆者のようなおじさんには、いまひとつピンとこなかった。あれば便利かもしれないが…。
エクステリアではフロントグリルとヘッドライトを一体的にし、LEDヘッドライトの光源をリフレクターで反射させる構造にしている。夜間でもシャトルの顔であることがわかる工夫がされているのは特徴的だ。サイドビューではフィットに共通する強いアクセントラインが力強くあり、シリーズであることを暗に印象付けている。またステーションワゴン部のサイドデザインではフロントからの流れに乗らないデザインは理解に苦しむ。
インテリアはクラスレベルな印象で、表面的な装飾はもちろん美しいが、本質的な内側から湧き出てくるような、分かりにくいけど伝わってくるというものが欲しい。個人的な好みになるが、タンカラーの「リゾーターブラウン」は落ち着きとセンスを感じた。またファブリックでもスエードのような手触りを持つシートは好印象で、ピアノブラックのインパネなども手伝い、全体的に落ち着いた印象だ。
シャトルはさまざまな価値や能力が混在した印象で、より熟成されていくとマチュアなモデルになるのかもしれない。全体の統一感をリゾーター向けに熟成されていくことを期待したい。