【ホンダ】フリードにハイブリッド搭載 全気筒休止でEV走行が可能

マニアック評価vol70
2008年にが可能コンパクトなボディに広い居住空間というコンセプトで登場したフリードシリーズは、累計で27万台を販売し、ホンダの基幹車種として成長し、フィットに継ぐ人気を持つモデルである。そのフリードシリーズに軽量・コンパクトなIMAハイブリッドシステムを搭載したモデルが2011年10月28日登場した。

5ナンバーサイズのミニバンでは初のハイブリッドモデルとなり、快適な居住空間と、より低燃費、低価格を実現としたモデルとしている。このマイナーチェンジに伴い、従来のユーザー層にプラスし、大きいボディサイズからの乗り換えユーザーも取り込むことを目指している。いわば、「もっとちょうどいい」を目指したモデルと言えるだろう。

そのためにさまざまなデータを収集し、これまで8人乗りをチョイスしてきたユーザーは乗車人数よりも、2列目をベンチシートとして使える使い勝手の良さに魅力を感じている。また、7人乗りを選んでいるユーザーはウオークスルーに魅力を感じているユーザーが多いことが分かった。そして、8人という乗車人数より、ひとりひとりの居住空間を広げ、ゆったりとしたスペースを確保する方向へ転換したのだ。

そのため、全タイプで3列目を3人乗車から2人乗車へ変更し、7人乗りでは2列目をベンチシートとし、6人乗りではウオークスルーを確保。ひとりひとりの占有スペースを拡大している。そして5人乗りではスパイクでカバーしていくこととしている。そのため、6人乗りではキャプテンシートを採用し、アームレストを備えるなど装備面での充実が見られる。グレード展開では、これまでの「G」、「Gエアロ」に加えて、今回追加されたハイブリッドモデルがフリードシリーズのトップグレードになる。


今回試乗したモデルはそのフリード・ハイブリッドで、搭載されるハイブリッドユニットだが、1.5Lのi-VTEC+IMAである。エンジンは2バルブ/ツインスパークプラグで、最大の特徴は走行中に全気筒休止を行い、EV走行モードになることだ。減速時と低負荷の運転のときに、全気筒休止するためポンピングロスは生じない。「また、40km/h程度の車速のときに一定車速運転をしていただけると気筒休止します」とは技術開発室の永田昇氏だ。

その際、シリンダーバルブは閉じられ、空気バネとしてピストンは上下動を繰り返している。当然燃料は噴いておらず、シリンダー内ではピストンやクランクなどは動いているものの、燃料消費、CO2排出はされていないわけだ。また、エンジンは回転運動をしているため、フリクションは存在する。そのため、ピストンの表面処理やオイル類の攪拌抵抗の低減などがされている。ちなみに、気筒休止はロッカーアームを保持するピンがスライドし、ロッカーアームがカムを叩かなくなり、バルブが閉じたままになる仕組みだ。さらに、アイドリングストップも働き、5ナンバーサイズのミニバントップの低燃費を達成し24.0km/L(10・15モード)21.6km/L(JC08モード)となっている。

実際に走行してみると、気筒休止したことはまったく体感できない。つまり、低負荷運転や一定速度運転をしていれば、勝手に気筒休止しEV走行モードにもなり、結果燃費もよくなっているわけだ。もちろん、モニターでその運転状況を理解するための表示を確認することはできる。個人的には、この状況をEV走行とするかしないか?の議論は不毛のように感じている。

エンジンとモーターの組み合わせた出力では、99ps/5400rpm、159Nm/1000rpm〜1500rpm。実に低回転域で最大トルクを発揮することが分かる。一方、エンジンだけの出力をみると、88ps/5400rpm、132Nm/4200rpmであり、発進直後から高トルクを発揮するモーターアシストとの組み合わせにより、多人数乗車で街中を走行する場合でも、ストレスなく走行することができる。組み合わされるミッションはCVTで、もちろん、スポーツカーのようなパンチのある加速はしないが、十分なトルクを感じることができるわけだ。高速での合流車線が不安になるということはまったくなく、安心して走行できる。

上質な乗り心地
もともと、しっとりとした乗り味が好評だったフリードだが、ハイブリッド車はトップグレードに位置し、また、車重の増加もあるため、専用のセッティングが施されている。その結果、クラスを超えるしっとりとした乗り味を感じることができ、高級車特有のフィーリングにも近い感触は非常に好印象である。ミニバンに多い、剛性の不足した乗り味や室内に入り込む安っぽいノイズがないのは好評価できる。

その種あかしになるが、サスペンションまわりでは、リヤにハイブリッドのコントロールユニットやバッテリーを搭載してあるため、キャンバー角とトレッドを拡大(+10mm)することで、旋回時の安定性につなげている。スプリングのバネレート、ダンパーの減衰力特性も変更し最適化を図っている。したがって、あたりもソフトで変な突き上げは感じられない。さらに、左右のリヤダンパー間をクロスメンバーとガセットで補強し、リヤサスペンション取り付け部の剛性を高めたことで、しっとり感が造られている。さらに、静粛性の向上として、振動の伝達を抑えるという基本を見直した上で、遮音材、吸音材を効果的に配し、ガソリン車よりさらにハイブリッド車専用の部材を施しているという。さらに、遮音機能付きフロントガラスも採用し、全気筒休止によるEV走行、モーターアシストによるトルクフルだが静かな走りができ、クラスを超えた静粛性を得ているのだ。

ハンドリング
ステアリング操作は軽く、扱いやすい。直進性にも不安はなく、また小舵角時にも素直に反応するので、安心感がある。コーナーでは背高であるため、ロールを感じやすい。個人的にはもう少しヨーモーメントが顔を出すようなミニバンでもいい気もするが。

ブレーキでは、ソフトタッチのときに停止寸前にだけ顔を出すフィーリングがあった。そのケース以外は、タッチは自然であり、強めのブレーキングでも違和感なくリニアに感じることができた。そのソフトタッチのフィーリングでは、おそらく時速10km/h以下のときだと思うが、「気筒停止やブレーキ回生の制御変更、燃料カット、油圧ブレーキの制御など一連の作業を連続しておこなっているタイミングで、最も激しく忙しく動いているときです」と前述の永田氏。

特にフリード・ハイブリッドのアイドルストップは10km/hで走行していて作動をするので、減速するときに全気筒停止していたものが、再始動し直後にアイドルストップという離れ業もやってのける。モーターでの回生=発電も続けてしまうと、ブレーキを踏まずともギュッと停止してしまうので、それも徐々に回生解除する必要がある。つまり、車速を減速させる方向に働いているものが徐々に開放され、油圧ブレーキだけになる瞬間があり、それがブレーキペダルを介して感じる減速感の変化する瞬間でもある。

しかし、いろんな制動力の種類が変化してはいても制動力は確実に働いており、ブレーキが抜けたようだと表現するのは正しくないし、誤解を招く。あくまでも減速感が変わるだけで、車両に対して制動はされているから確実に停止はする。逆に、ブレーキを緩めるような状況になってもブレーキ回生されていれば、減速し続ける場合もあり、ブレーキフィールでは気になる点かもしれない。このタッチに関して、ナチュラルであればあるほど好ましいのは言うまでもないが、状況を理解していれば、不安に思うこともないだろう。

 

COTY
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