vol.1では制御の考え方がこれまでにない、全く新しい考え方に基づいて開発されたことをお伝えしたが、実際に試乗してみてはどうなのか? そこをお伝えしよう。
ホンダ「クラリティPHEV」は満充電されていると114.6kmのEV走行距離があり、最高速度は160km/hまで出る。そうなると、日常の使い方ではEV走行しか体験しない。試乗コースは横浜のみなとみらい地区をベースに周辺の高速道路と一般道だ。だからEV車と勘違いするレベルだったというのが結論だ。
このクラリティPHEVのアクセルペダルにはクリックポイントを設け、開度が75%を超えるとエンジンが始動する箇所をドライバーに分かるように設定している。これはE-CONモードで、よりEV走行を長くできることを知らせる意味を持っていることになる。アクセル開度75%を超えないように踏んでいれば、ずっとEV走行するからだ。
さて、横浜のみなとみらい地区を走行してみると、やはりエンジンは一度もかからない。走行モードはE-CON。ノーマルとスポーツを選ぶと順番にエンジン始動率が高くなる。だから、通常はE-CONで走行する。
しかし、発進時の加速感の鈍さや、ドライバーの狙い通りに加速しない、などの理由からこうしたいわゆるエコモードは敬遠されがちだが、このクラリティPHEVはモーター駆動だけに、その鈍さは感じない。75%を超えない程度に踏み込めば、モーターらしく大トルクで加速するし、その際にエンジンもかからない。
スポーツモードにすると、モーターの大トルクを最大限に活かした走りに変わる。そのため、市街地では「ここまでのトルクは要らないだろう」と思うほど力強くなる。そのまま首都高速に乗ったが、スポーツモードでは、車線変更や追い抜き加速など申し分なく、あっという間に制限速度に達する。この時、エンジンはかかりやすくなっているものの、充電状況が良好であれば、エンジン始動はしない。なので、首都高速のような速度域でもE-CONモードで十分普通に走行できるのだ。
vol.1でお伝えしたバッテリー残量0となってもEVフィールで走行できるのか?は残念ながら、バッテリーを使い切ることができなかった試乗時間と距離だったので、別な機会に期待を持ってレポートしたい。ここまでの試乗したフィールでは、まさにEV車という感覚だし、電欠の心配がない現状究極のPHEV車だと思う。
インテリアと乗り心地
インテリアは近未来的な印象で、シフトレバーはなくボタンスイッチでドライブやニュートラル、パーキングを選択する。現行のレジェンドから導入されNSXにも採用されているタイプで、先進的でカッコいい。メーター表示はすべてデジタル表示で、メーター内表示も情報が整理されており、ひと目でパワートレーンの状況が把握できる。左にバッテリー残量が表示され、右側に燃料計というのも見やすい。ちなみに、燃料タンク容量は26Lとかなり小さいのだ。
ドラポジはヒップポイントが高いと感じる。床下にIPUを搭載していることや、もともとのプラットフォームがFCV用で開発されていることも影響してのことだろう。このドラポジに関しては、セダンというより車高の低いSUVくらいな印象だった。
乗り心地はソフトで高級車らしい印象。操安性までは分からなかったが、NVHはかなり高いレベルだ。フロントウインドウには吸音するラミネートウインドウを採用していたり、EV車に求められる静粛性にはかなり気を使った設計になっていることが分かる。だから、かなり静かだ。
セダンとしてアピールするクラリティPHEVだが、これだけのバッテリーなどを搭載しながらも、クラストップのトランク容量を持っている。5名がゆったり乗れる室内空間がありながら512Lのトランク容量で、トランクスルー機能も持っている。ゴルフクラブも4セット搭載できるということなので、十分な大きさと言える。
ドラポジが高いと前述しているが、クルマの全高は1480mmに抑えられている。全長4915mm、全幅1875mmで、ホイールベースが2750mmというミッドサイズセダンで、天井高もあり、広さも確保されている。
ナビゲーションまわりでは8インチディスプレイにApple carplay、Android Autoも接続できる。またBluetooth通信も搭載し、広い駐車場で自車位置が簡単にわかる「カーファインダー」機能なども搭載しており、実用域での利便性が高そうだ。
スペックを確認しておこう。搭載するエンジンは1.5Lのレギュラーガソリン仕様でJC08モードは28.0km/L、WLTCの市街地23.0km/L、郊外モード24.3km/L、高速走行25.1km/Lとなっている。出力は、105ps/135Nmで、搭載するモーター出力は、135kW(184ps)/315Nmだ。ちなみに搭載するバッテリー容量は17kWhとなっている。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>