ルノーの新しいデザイン戦略の第2弾として国内投入されたのが、コンパクトクロスオーバーというカテゴリーに属するキャプチャー。2013年の夏に欧州で発売されているモデルが2014年2月から国内でも販売が開始される。市販に先駆け、一般道での試乗ができたので、その様子をレポートする。
◆ポジショニング
キャプチャーはコンパクトクロスオーバーと呼ばれ、先に発売されたルーテシアの流れを汲むモデル。サイズはルーテシアよりやや大きく、全長+30mmの4125mm×全幅+30mmの1780mm×全高+120mmの1565mm、ホイールベースは+5mmの2605mmでBセグメントいっぱいのサイズ。価格は2グレード構成でエントリーモデルの「ゼン」が249.8万円、上級グレードの「インテンス」が259.8万円。Cセグメントではあるがホンダ・ヴェゼルが187万円から268万円で、ヴェゼルHEVモデルとは競合する。
このコンパクトクロスオーバーは欧州では主にB/Cセグメントでの争いが激しく、ライバルも多く存在する。そのきっかけは日産のジューク、キャッシュカイの販売で、とくにジュークは欧州でも人気が高い。後を追うように各社からモデルがリリースされ、今ではフォルクスワーゲンのクロス・ポロ、プジョー2008(国内未導入)、BMW MINIクロスオーバー、スバルXV、ホンダ・ヴェゼルなどがあり、キャプチャーはこれらのモデルと戦うことになる。
すでに欧州市場ではこのマーケットは乗用車の中で17%ものシェアを占めており、メインマーケットと呼べる市場に成長している。国内ではまだ成長していないカテゴリーではあるが、これから活性化が想像できる。欧州で2013年もっとも売れたのがジューク、ついでキャプチャー、プジョー2008というデータがあり、キャプチャー、2008ともに夏場からの投入ということを考えれば今後は首位の座はフランス車が奪うことは確実だ。
このカテゴリーの人気の秘密は、SUV流のダイナミックなエクステリアデザインや、ミニバンの要素を採り入れた広い室内スペース、そしてコンパクトハッチが持つ運転のしやすさや俊敏性など、多角的なヒットする要素を取り入れたモデルだからだ。
キャプチャーはFFのみの設定。最低地上高は本格SUVなみの200mmと十分あり、4WDの設定があってもよさそうだが、コンパクトクロスオーバーの90%はFFが商圏というマーケティングデータがあるそうだ。つまり乗用車からの派生車がクロスオーバーで、4WDクロスカントリーからの派生がSUVという生い立ちの違いがあることも影響する。また、ユーザーが求める性能に、コンパクトである場合、FFで十分というユーザーが多いということだろう。たとえ雪道でも現在のスタッドレスの性能からすれば十分な走破能力があり、重量増や燃費のことを考えればFFを選択するという結論になることが多い。
◆インプレッション
クルマへの乗り込みは最低地上高があるので、かがむことなく楽に乗り込める。ハッチバックよりもシート位置が高いため乗降は楽だ。インテリアにはピアノブラックのパネルが配され高級感がある。特に艶のあるハンドルは特徴的。国産車に多く見られる樹脂感丸出しのハンドルとは一味もふた味も違う。ドライバーが頻繁に触れる場所、見る場所には安物感とならない工夫がされている。
したがってシフトレバー周辺、空調などのダッシュパネルなどで高級な印象となるパーツやデザインが採用されていて、満足度が高い。ダッシュボードも直線が全くと言っていいほどなく、すべて曲線でデザインされハイセンスな印象となるのもその理由だ。
シートはインテンス・グレードに着替えができるシートカバーが標準装備された。ジッパーで脱着でき、洗濯機で洗えるというもの。デザインも豊富にあるので買い足しをすれば、夏用、冬用、秋、春と模様替えを楽しむことも可能だ。もちろん汚れ対策として活躍するのは言うまでもない。が、シートカバー素材のためかザラザラした感触で、生地が固めのジャージに似た印象だ。
アイポイントはルーテシアより+100mm高い。この10cmの違いは大きく、運転席からの視界が一変する。またシートのアジャスト機能でシート高を上げればボンネット全体が視野に入ってくる。車両感覚をつかむのが苦手というドライバーには、このポジションは安心感が高まる。前方の視界も乗用車より広がった印象となるため、安心感のあるドラポジと言えるだろう。
後席は広々。160mmもスライドするリヤシートはニースペースが640mmあり、ルーテシアより+75mm広い。セグメントを超える広さとなっている。頭上付近のスペースも広く圧迫感は感じない。また、側面との距離も程よく、最近のクーペライクなデザインに多い側面の圧迫感はまったくなかった。また、トランクス容量も大きく、通常377Lでリヤシートをスライドさせれば455Lに拡大。リヤシートをたためば1235Lまで拡大する。さらに120kgまでの耐荷重を持つボードを備えているので、ラゲッジユーティリティのレベルは高い。
搭載するエンジンは1.2L+ターボに6速のDCT。ルーテシアと同じパワーユニットで、120ps/190Nmというスペックは1.6L自然吸気エンジンなみの馬力と2.0L自然吸気エンジンなみのトルクを持つ。スロットルレスポンスはやや鈍い設定で、ルーテシアとは大きく印象が違う。走り出しも穏やかでややレスポンスが悪く感じるが、燃費性能に振った制御のためと思われる。また「ECO」ボタンも備わり、さらに燃費に振った設定もある。
10分も走るとそのレスポンスには慣れてくるが、急な追い越しなど素早く反応して欲しいときはシフトをマニュアルモードでダウンシフトすれば気持ちよく反応する。が、1750rpmで最大トルクの90%を発生させる最新のダウンサイジングエンジンは、エンジンを回さないで走るのがイマドキ。
サスペンションは欧州のクリオ・エステートと共有するがダンパーは専用のチューニングがされている。高速での走りは直進の座りがあり、ルノーらしい安心感がある。乗り心地も良く高速でもフラットライドに動く。コーナリングではややロール感があるが自然なロールで、最近のロール感のないモデルとは一味違い、デジタル的なコーナリングではなくアナログ的なやや懐かしい曲がり方をする。ちなみに、上級のインテンスは205/55-17でエントリーモデルのゼンは205/60-16というタイヤサイズだ。
ラテン系のコンパクト車に多くみられたペダル位置のオフセットだが、キャプチャーには特に違和感はなかった。もちろん右ハンドル仕様でFFモデル、そしてコンパクトサイズというペダルレイアウトには厳しい状況だが、気にする必要がなかった。
欧州ではメインマーケットに成長しているコンパクトクロスオーバーの市場、日本では先行モデル的な存在という見方もできる。実はそれなりに国内でも車種は豊富にあるのだが、いまひとつ販売ボリュームは小さいモデルが多い。しかし、キャプチャーによって、そのコンセプト(既報記事参照)、デザイン、そしてルノーブランドと低価格という武器でブームの火付け役となるかもしれない。
■ルノー・キャプチャー価格表
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