PSAグループの最新「CMP」プラットフォームを解剖

PSAグループが開発したCMPプラットフォーム(Common Modular Platform)は、プジョー、シトロエン、DSオートモビル、オペルなどのグループブランドをカバーしています。このCMPは、最新のモジュラー構造のマルチエネルギー対応プラットフォームであり、グループPSAの長期戦略に適合させて開発されR&Dコストと製造工程の効率化、電動化を含むパワーユニットの多様化に対応した完全新規設計プラットフォームです。

一般的に、プラットフォームとパワートレーンで、車両原価の40%は占めるため、モジュラー構造とすることで、コストダウンと各モデルの多様性を維持しながら生産開始までのリードタイムを短縮し、製造設備と工場の製造キャパシティの最適化を実現することができるのです。

グループPSAの電動化戦略

2019年から電動化パワートレーンの市販化攻勢発表しているグループPSAは、上級モデル用のEMP2(プジョー308、SUV 3008、SUV 5008、シトロエングランドC4スペースツアラー、C5エアクロスSUV、DSオートモビル DS7クロスバック)とこのB/CセグメントをカバーするCMPで全てのモデルを担うことになります。

CMPプラットフォーム(左)とEMP2プラットフォーム

C/Dセグメントの車体は、EMP2プラットフォームを採用し、こちらはガソリン、ディーゼル、そしてガソリンエンジンのプラグインハイブリッド(PHEV)に対応します。2021年までに、プジョー、シトロエン、DSオートモビル、オペル、ヴォクソールの5つのブランドで8車種のPHEVモデルを市販予定になっています。

一方、販売台数が多いB/Cセグメント、つまりグループの中核となるモデル群はこのCMPを採用します。また、100%電動パワートレーンにも対応し、これを「eCMP」と呼びます。2021年までにグループPSAは7モデルの電動化車輌をeCMPをベースに開発し、逐次市場導入を行なっています。

結果的に、PSAグループの電動化戦略ではBセグメントと一部のCセグメントではフルEV(CMP)、Cセグメント、Dセグメント以上ではフロントモーターまたはリヤモーター4×4のPHEV(EMP2)を採用することになります。

この2つのプラットフォームによって世界中のあらゆる国、地域のあらゆるカスタマーに、内燃エンジン、プラグインハイブリッド、フルEVという選択肢を提供できることになり、2025年までにはグループPSAのすべてのモデルが各種の電動化パワートレーンを実現する計画です。

CMPプラットフォームの特長

CMPは、コンパクトなシティカー(Bセグメント)、エントリーレベルとミッドレンジのセダン、SUV(Cセグメント)をカバーします。ブランドではプジョー、シトロエン、DSオートモビル、オペル、ヴォクソールのグループPSAが持つ5ブランドすべてが使用することになっています。

そのため、2種類のトレッド、3種類のホイールベース、3種類のモジュール化されたリヤアクスル、多様なホイールサイズが採用できるようにモジュラー設計が採用されています。


もう一つの特長は、CMPは最初から内燃エンジン、EV仕様の混流生産を可能にしていることです。この混流生産ができるということはカスタマーや市場需要の変化、そして内燃エンジン仕様とEV仕様の販売比率の変化に柔軟に対応した生産ができることを意味し、EV専用ラインを作る投資を抑制することができるわけです。

内燃エンジン搭載状態

CMPによる最初の電気自動車モデルはDS3クロスバックE-TENSE(2020年7月29日から日本で発売開始)です。これは100kW(136ps)の電動モーターと容量50kWhのリチウムイオン バッテリーパックを搭載し、高性能なヒートポンプシステムによるバッテリーの温度管理を採用。

同時に、内燃機関も世界でトップクラスの環境浄化システムを採用したピュアテック3気筒エンジンと、CSR(NOx対策)テクノロジーを備えた最新の1.5LブルーHDiクリーンディーゼルを搭載でき、ヨーロッパ、日本、中国などの排気ガス基準に対応することができるグローバル規模での地域適合性を想定して開発されています。

CMPは軽量化も同時に目指しており、ボディも含めて、超高張力鋼板、高張力鋼板を積極的に採用し、さらに冷間プレス材、アルミ材、複合材を組み合わせて採用。この軽量化によりCO2削減は1.2g/km以上の効果を得ています。

またCMPは空力性能も重視した設計で、アンダーボディのフラットで滑らかな形状設計とフロント部分の最適化されたエアインテークなどにより、優れたエアロダイナミクス性能を実現。この空力設計でCO2削減は1.5g/km以上の効果が実現しています。

さらに低転がり抵抗対策として、前後アクスルの機械的な摩擦抵抗を低減。この低摩擦化により、CO2削減は2.5g/km以上となっています。

上質さの追求

CMPは、より上級セグメントの車両が持つ質感、快適性能をB/Cセグメントで実現することもCMP開発の大きなターゲットとなっています。

快適性の面では、静粛性能の追求です。ノイズ面での性能を大幅に向上させるために効率的なノイズの遮断とノイズ周波数のチューニングをボディ設計の段階から行なっており、実際にセグメントでトップレベルに仕上げています。

またアクスル周りに起因するバイブレーションを、構造による対策とフロアのアクリル系素材の採用による対策により軽減させています。

この他に、より効果的なクーリングシステム、空調システムにより室内の快適性を向上させています。

トップレベルのボディ精度を追求しパネル隙間も縮小

CMPのもう一つの特長はきわめて高い、製造段階での精度、質感の向上と信頼性の向上が図られていることです。

ユーザーが使用する状況での品質、信頼耐久性を高め、少なくとも3年間は新車の状態を維持できるよう今まで以上に留意して開発、生産されています。グループPSAは既存のBセグメントプラットフォーム(BVH1)の開発、改良を通じて多くの知見を蓄積しており、このセグメントにおける最高レベルにある高い品質、質感を実現しています。

衝突安全性能では、主要マーケットにおける安全評価テスト(ユーロNCAP、チャイナNCAP)で5つ星の獲得を目標に次のような機能を備えています。車両、歩行者、自転車に対応できる自動緊急ブレーキとし、これまで以上に暗いシーンでも作動します。

レーンキープアシストは車線だけではなく道路の縁の部分も認識。ブラインドスポットセンサーは、フロント、サイド、リアの近接センサーを採用しています。速度制限標識検知は、道路標識を認識し制限速度をドライバーに表示、また速度調整を行なうようになっています。さらに、万が一の衝突時には、不用意に車輌が動かないようにブレーキ力を自動的に保持するようになっています。

DS7クロスバックで最初に投入した先進運転支援システムを、このコンパクトセグメントにも導入。ストップ&ゴー機能付きアダプティブクルーズコントロール(ACC)にレーンポジショニングアシスト(LPA)を統合。車輌の速度管理と車線維持が実現しています。

また第4世代のシティパーク システムを採用し、駐車時に速度、ブレーキ、ステアリング操作のすべてがアシストされます。

これらの先進運転支援システムを幅広く導入するため、電子プラットフォームも最新版が採用されています。

eCMPの特長

電気自動車バージョンは、各ブランドで共通の容量50kWhのリチウムイオン バッテリーを採用し、車両によりWLTPサイクルで300~350km、NEDCサイクルで400~470kmの走行が可能です。

このバッテリーパックは、一個当たり約13.1kgのモジュールを18個組み合わせ、容積約220L、重量約350kgとなり、このバッテリーユニットを前席座面下、後席座面下、センターコンソールなどに車体を上から見たときにH型に、重量配分を考えてレイアウトされています。

内燃エンジン、EVに対応できるCMPの特性により居住空間、ラゲッジスペースは基本同等となっています。バッテリーは前後シート間のフロア部分に配置され、優れたスペース効率を実現しているのです。

電気自動車バージョン

またリチウムイオンバッテリーは、液冷ヒートポンプで充放電時のバッテリー温度の管理と最適化を図り、充電性能の安定化、バッテリー寿命の確保を行なっています。

また、各ブランドでこの50kWhバッテリーパックを共通化することで、バッテリーの量的な確保と、調達コストを低減していることも特長で、価格的に競争力を持つ電気自動車となっているのも注目ポイントです。

EV仕様車は、重量増に対応してリヤのトーションビーム式アクスルに横方向の支持を担当するパナールロッドを追加しています。このパナールロッドにより横方向の入力に対応しています。

CMPは2018年12月に初めて生産を開始し、今後2年以内でグループPSAの世界中の製造工場で生産を開始する予定となっています。つまりグループPSAの主要戦略エリア(フランス、スペイン、スロヴァキア、中国、アルゼンチン、ブラジル、モロッコ、アルジェリア)でマーケットにマッチした多くの製品バリエーションを量産できるようになることを意味しており、CMPはまさに高い競争力を持つグローバル戦略プラットフォームと表現することができます。

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