マニアック評価vol641
2018年9月に追加モデルを発表したメルセデス・ベンツのSクラスに直列6気筒クリーンディーゼルエンジン搭載車に試乗することができた。従来は4気筒ディーゼルハイブリッドだったが、世代交代し6気筒ターボのディーゼルになった。この10月から納車が開始されたということで、一般道を使った試乗ができたので、お伝えしよう。
この6気筒クリーンディーゼルを搭載するラインアップは、「S 400 d」「S 400 d 4MATIC」で、それぞれにロングホイールベースの「ロング」を合わせた4モデルが追加された。また、4MATICはすべて左ハンドルで、通常のFRモデルはすべて右ハンドルの仕様になっている。
試乗したのはS 400 d 4MATIC ロングの左ハンドル仕様だ。いずれのモデルもエンジンスペックは同じで、トランスミッションも同じ9速ATを搭載している。
Sクラスは言わずもがな、メルセデスのフラッグシップモデルであり、こうしたプレステージクラスのベンチマークとされることの多いモデルだ。世界累計の販売台数は30万台を超えるモデルであり、世界でもっとも選ばれるラグジュアリーセダンでもある。「究極の快適性」をコンセプトに開発された現行Sクラスは2013年に登場し、17年に通信機能を搭載した「メルセデスミーコネクテッド」を初導入している。そして今回、新たなパワートレーン追加として、クリーンディーゼル搭載モデルがラインアップされた。ちなみに価格はS 400 dが1160万円で、もっとも高いS 400 d 4MATICロングが1505万円という価格帯になっている。
Sクラスのロングと言えばショーファーであり、後席居住性が大切だが、自ら運転してみると素晴らしい乗り心地の良さと静粛性の高さなどから、改めてプレステージクラスのゴージャス感を感じ、高級車を運転している満足度が高い。最近減ってしまった、ボンネットマスコットもスリーポインテッドスターがあり、ドライバーズシートからの視界に入る喜びが味わえる。
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この新しい6気筒ディーゼルエンジンは、こうした静粛性のあるモデルだと、もはや、ガソリンなのかディーゼルなのかは判別不可能だ。それほどディーゼルでありながら滑らかに走れる。そしてエンジンのふけ上がりも良いので、ますます分からなくなる。よほどのクルマ好きでもディーゼル、ガソリンの判別は容易ではないだろう。
しかし、走り出しの力強さや走行中のアクセルの踏み増しといった状況では、ディーゼルらしいトルクフルな加速をするので、ディーゼルらしい特徴でもあるが、言い換えれば、そうしたレスポンスと力強さは、運転していて楽しいと思わせるエンジンだとも言えるわけだ。アクセルひと踏みで大柄なSクラスをいとも簡単にロケットダッシュさせるのだから。
出力は340ps/700Nmで型式は「OM656」型。4気筒のOM654と共通部品も多い。またガソリンのM256とはモジュラー設計されているため、ここでも共通部品は多いエンジンなのだ。
エンジンのメカニズムのハイライトを少し見てみると、環境に配慮した技術が多く取り込まれていることが分かる。まず排ガス再循環のEGRでは、高圧のクールドEGRと低圧のEGRのミックスで燃焼の最適化を行なっていることや、排気バルブ側だけに可変バルブタイミングの「カムトロニック」を搭載し、冷間時の吸気行程で排気の一部を燃焼室に送り込むことができている。そうすることで、燃焼室内の温度をあげることができ、冷間時の排ガスクリーンに役立っているわけだ。
これらはいずれも排ガスの浄化に役立つ技術、機能で、さらに排出されるガスには、アドブルーが添加され浄化される。さらに、煤対策のDPFにもSCRコーティングもされ、NOx、PMの低減をした環境にやさしいディーゼルエンジンになっている。
ボディサイズは標準車が全長5125mm、全幅1900mm、全高1495mm、ホイールベースが3035mmで、ロング仕様は全長5255mm、全幅1900mm、全高1495mm、ホイールベース3165mmとフルサイズセダンになっている。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>