2019年10月に日本初のディーゼル・プラグインハイブリッドが発売となった、メルセデス・ベンツEクラスの「E350de」に試乗する機会があったので、早速お伝えしよう。
これほど静かだとは
プラグインハイブリッドの仕組みについては、もはや説明は不要だと思うが、モーターが駆動アシストするパラレルハイブリッドとモーターだけで走行するEVモードがあり、内燃機関であるエンジンと組み合わされている。そのエンジンが、ディーゼルと組み合わされたのがE350deだ。
とにかく、びっくりするほど静かで、そしてパワーがあることに驚く。試乗前にディーゼルPHEVであることを確認して走りだしたが、「本当に?」と疑いたくなるほどディーゼル感が全くない。試乗車は充電状況が100%満充電されていたので、走り出しからEV走行する。だから尚更ディーゼルのネガなど顔を出すはずもなく、滑らかで静かなEV走行をする。
このままずっとEV走行していたのではディーゼルとのマッチングも確認できないので、下り坂であえてパドルシフトを使ってギヤをダウンさせる。するとエンジンがかかりエンジンブレーキが働くが、それでも「本当にディーゼルなのか」と思うほどなのだ。
そうなると、どこでディーゼルのネガが出てくるのか? 探したくなる。ネガといえば音と吹け上がりの滑らかさといった部分だと思うが、そもそもタコメーターを見れば5500rpmまで回せる表示。その時点でガソリンかディーゼルか悩む。近年のダウンサイジング・ガソリンエンジンは高回転型ではなくなっているので、5500rpmは微妙だ。
ラフな操作でも
アクセルを強く踏み込みエンジンを回してみる。滑らかに吹け上がり静粛性も保たれている。とはいえガソリンエンジンとの比較では、その吹け上がりがゆっくりだと感じるが、そのフィーリングの違いを感じ取れるのは、ごく限られたユーザーではないだろうか。
で、音だ。ディーゼル音は加速の時や高回転側に回った時にディーゼル音だと気づくわけだが、その音すら室内には入ってこない。高回転側へ無理矢理回して耳を澄ますと、遠くでエンジン音が聞こえてくる。気にすれば、確かにディーゼルの音だが、その音色の区別はもはやマニアの領域と言っていいほどで、一般的には区別できないだろう。
Eクラスという車格のモデルに搭載しているから、当然の静粛性なのかもしれないが、これほど静かだとは・・・と驚かされた。また、「いいなぁ」という独り言も度々出ていた。
それと700Nmという強烈なトルクも印象に残った。Eクラス恐るべし。高性能エンジンを搭載し爆音を響かせるようなモデルに負けないフル加速をし、それでいて静か。賢さが思いっきりアピールされる瞬間だと思う。
これだけダウンサイジングが一般化されてくると、AMGのような特殊な高性能モデル以外での大排気量はもはや意味を理解しにくくなる。小排気量であればあるほどスマートに感じるように世間は変わってきているのではないだろうか。
滲み出る賢さ
少し乱暴に走りディーゼルのネガ探しをしたが、見当たらないことがわかり、普通に走行してみる。高速で巡航していると、エンジンは止まりEV走行に切り替わる。傾斜なのか、バッテリー状況なのか、ときどきエンジンが稼働する。そうした走行を繰り返すのだが、メーターを見ていないとエンジンの稼働状況は体感しないのだ。おそらく後席にいたらずっとEV走行していると感じるのではないだろうか。それほどメルセデスにふさわしい静粛性があった。
市街地に降り、周りの車列に溶け込んで走行するとアクセル開度は1/8で済む。ほとんどアクセルを踏み込むことなく周囲の流れに乗れる。もちろん、驚異的とも言える静粛性を感じながら、賢さの優越感すら湧き出てくるのだ。