プレミアムDセグメント最新ディーゼル比較レポート

マニアック評価vol431
XE_03

近年徐々に増えてきているディーゼル乗用車。かつてのディーゼルは走らないイメージしかない。エンジンは回らないし、ガラガラとエンジン音もうるさい。しかし、最近のディーゼルは静かでガソリン車との差がなくなってきているという記事も多い。そこで実際乗ってみるとどうなのか? 特に欧州プレミアムDセグメントにはディーゼル搭載車が国内に増えてきているので、検証してみたい。<レポート:高橋 明/Akira Takahashi>

さて、ディーゼル車にネガなイメージを持っている人は未だに多いだろう。排ガスへのイメージ、走りの悪さ、その両方に疑問を持っているということがあると思う。特に排ガスでは、2015年北米で起きたフォルクスワーゲンのデフィートデバイスの違反問題で排ガスがクローズアップされたことが挙げられる。

これはある基準をクリアすれば走行OKとする試験があり、その基準をパスするためにルール違反をしたということが問題であり、排ガス品質が悪いという問題とは別問題ということ。そして、その基準とは、各国で異なるが欧州ではユーロ5とか、ユーロ6と呼ばれているものだ。国内であればポスト新長期規制と言われているものになる。

これらの基準値を計測するために特定の試験を行ない、基準値をクリアしているか否かのチェックをする。が、試験に受かるために使ってはいけない制御方法がある、だから使用禁止というルール決めの中で、使ってしまった、というのがデフィートデバイス問題だ。詳細まではわからないが、いわば試験データがよくなるようにした、という見方ができるわけで、ならば、実際はどうなのか?試験してみようということが起きた。ところが、その試験は北米のテストモードとは違う方法で試験し、その結果は基準値の数十倍だった、という一連の報道になったわけだ。その試験での基準値はないから、北米の試験モードの基準値と比較すること自体も問題のすり替えに近い気もするが……。

そして、試験方法が変われば計測されるデータも異なってくるのは理解できるだろう。そのことも根底にある問題だった。ちょっと違う例になるが、燃費計測ではJC08モード計測がある。その数値と実際の数値には乖離があることは多くのユーザーが知っていること。試験とはそうしたものになってしまうのは現実としてあるという話だ。

欧州プレミアムブランドから相次いでディーゼルモデルが投入されている
欧州プレミアムブランドから相次いでディーゼルモデルが投入されている

話を戻すと、試乗したモデルはBMW320dツーリング、メルセデス・ベンツC220dアバンギャルドワゴン、ジャガーXE20d Pure、ボルボV60 D4 SEといった欧州プレミアムモデルだ。高級車というカテゴリーにディーゼルを各社が搭載していることだけでも、ネガ要素が小さいことはカンのいい人なら分かるだろう。

ドイツ勢では唯一アウディが搭載していないが、欧州ではもちろん投入している。しかし、フォルクスワーゲングループの一員、アウディとしては前述の問題を引きずっているのだろう、アウディジャパンは導入に踏み切れないようだ。導入してもユーザーからのイメージによる拒否反応が怖いということだ。

■ドラビリこそディーゼルなのだ

320d_08

さて、クリーンディーゼルとなった高級車のもう一つの懸念点、ドライバビリティはどうなのか?というのが本題だ。それはイメージだ!と断言しておこう。

BMWは2012年に現行のF30型が国内導入されディーゼルも搭載した。2013年、最初に試乗した時に非常に驚いたことを記憶している。それはパドルシフトを装備した320dの走りに感心した。低速トルクが太くワインディングであろうが高速であろうが、エンジンを回さずとも軽快に走る。ハンドリングはもちろんBMWのそれだから、エンジンとのマッチングさえよければBMWらしい走りとなる。そのマッチングが素晴らしかったわけだ。

この魅力に取りつかれ結局320dツーリングMスポーツを購入し、いまでは本当に買って良かったと思っている。先に羅列したモデルすべてに共通するディーゼル車の特徴だが、2000rpmも回せばすべて完結できるというのがポイントだ。したがって日常使いにおいてのドライバビリティはディーゼルのほうが勝っていると思う。また、自動車メーカーの最先端の技術で競う自動車レース「WEC」でアウディや少し前のプジョーはディーゼルのレーシングカーを開発しているし、アウディはそのディーゼルで世界チャンピオンにも輝いている。これらのことからも、もはや「ドラビリにおけるネガはない!」とも言えるのではなか?

タカハシの愛車でもある320dツーリングMスポーツ
タカハシの愛車でもある320dツーリングMスポーツ
3シリーズのディーゼルはツーリングとセダンに設定
3シリーズのディーゼルはツーリングとセダンに設定
Mスポーツは専用のステアリングホイールなどを装備
Mスポーツは専用のステアリングホイールなどを装備

例えば高速道路を100km/hで走行中、車種によって若干回転数が異なるが1500rpm以下で走行している。そしてアクセル少し踏み込むと1700~1800rpmに回転があがる。するとその回転域は最大トルクを発揮するトルクバンドに入るのだ。つまり、最大級の加速力がそこで得られるというわけ。これはガソリン車では絶対にないフィーリングだ。

そして4000rpm付近までその最大トルクは発揮され続けるので、そこに不満を持つことはまずないと断言できる。これらのプレミアムモデルはいずれもターボを装備している。したがってディーゼル車が得意とする低回転域でのトルクはエンジンそのもののトルクが出力され回転が上昇するとターボによって過給されトルクが発生するという流れだ。

少しスペックを比較してみよう。BMWは排気量1995ccのターボで184ps/4000rpm、380Nm/1750-2750rpm、JC08モード燃費は19.4km/L。メルセデス・ベンツは2142㏄で170ps/3000-4200rpm、400Nm/1400ー2800rpm、燃費は20.3km/L。ジャガーXEは1999ccで180ps/4000rpm、430Nm/1750pm-2500rpm、燃費が17.16km/L。ボルボV60 D4は1968㏄で190ps/4250rpm、400Nm/1750-2500rpm、燃費は20.9km/Lというデータだ。

スペック比較表
スペック比較表
BMWの2.0Lディーゼルターボはバランス性に優れる
BMWの2.0Lディーゼルターボはバランス性に優れる
4車種中唯一の2.2Lながら高い燃費性能を誇るC220dのエンジン
4車種中唯一の2.2Lながら高い燃費性能を誇るC220d
ガソリン車のようなレスポンスが際立つボルボのD4エンジン
ガソリン車のようなレスポンスが際立つボルボのD4エンジン
今回の4車種の中で圧倒的にトルクフルなジャガーの2.0Lディーゼル
今回の4車種の中で圧倒的にトルクフルなジャガーの2.0Lディーゼル

メルセデスに至っては1400rpmで最大トルクを発の揮するわけで、少しのアクセル開度で力強い加速感が得られることは容易に想像できるだろう。トルク番長はジャガーのオリジナルエンジン「インジニウム」だ。430Nmもあり、V8型なみのトルクと言ってもいい。ひとつ気づいた人もいると思うが馬力がそれほど大きくないということ。このあたりも低回転トルクで走るのがディーゼル車だということがわかる。

ちなみに価格だが、ジャガーがセダンであとはステーションワゴンでの比較になる。単純比較が難しく装備によって大きな差が付くので、あくまでも参考程度に見てほしい。税込で前述のBMW 320dツーリングMスポーツが618.84万円、メルセデス・ベンツ C220dアバンギャルドが595万円、ジャガー XE20d Pureが536.76万円、そしてボルボV60 D4 SEが479万円となっている。これらの高級車に対してコスパというのもナンセンスかもしれないが、ボルボがもっともコスパがいいという結果になる。また、同モデルのガソリン車と比較するとディーゼルのほうが高価。これはエンジン本体や周辺機器にコストがかかるためだ。

メルセデス・ベンツは日本市場にいち早くディーゼルを投入している
メルセデス・ベンツは日本市場にいち早くディーゼルを投入している
C220dはセダン、ワゴンともに2015年9月に追加
C220dはセダン、ワゴンともに2015年9月に追加
ディーゼルエンジンには9速ATが組み合わされる。これも低燃費に貢献
ディーゼルエンジンには9速ATが組み合わされる

ちなみに各社の排ガス対策手法だが、PMは全モデルDPFを装着し、NOxは吸蔵触媒と尿素SCRにわかれる。ベンツ、ジャガーが尿素SCRで、NOx吸蔵触媒がBMW、ボルボが採用している。尿素SCRは走行距離にもよるが、おおむね車検時に補充という程度のメンテナンスでOKということだ。もちろん、全車クリーンディーゼルでエコカー減税の対象であり、エコカーというわけ。

最後にBMW320dのオーナー、タカハシの実感として燃料費はガソリン車時代の3分の1になるとお伝えしよう。比較はこのディーゼル車の前は同じF30型の328iで4気筒2.0Lガソリンターボ。いわゆるダウンサイジングした3シリーズとの比較。ガソリンはハイオク、今は軽油。単価でも数十円違い燃費で5~6km/Lは平均で違っている。もっと言うと軽自動車のNAとほぼ同等の燃料代で済む。ターボの軽自動車より燃料代は安いことが多いのだ。

これは実用の話として、モード燃費=カタログ燃費は19.4km/Lなのだが、実際20km/L以上の燃費も出るし、通常の乗り方で17~18km/Lは走る。都内、高速走行ナシのような条件でも14.0km/L前後は走っている。

 

■個人的インプレッション

V60_04

さて、ここからは少々稚拙な評価を書かせてもらう。ここまでは根拠のある話として進めてきたが、稚拙という意味は根拠が浅く、個人的な好き嫌いが反映した内容になるからなので、「何言ってんだコイツは」と思われる方は読み飛ばして頂きたい。

まず、ディーゼルエンジン自体のフィールの違いと言えば正直なところBMW、ベンツ、ジャガーは似たような印象でボルボだけ違う。それはいい意味でガソリン車のようなレスポンスをすることだ。特にエンジンの回転下がりは特筆もので「本当にディーゼル?」と何度も車検証を見直すことになる。

V60のディーゼル(D4)は2015年7月から日本に導入
V60のディーゼル(D4)は2015年7月から日本に導入
V60以外にもS60/XC60やV40にもD4を積極的に投入するボルボ
V60以外にもS60/XC60やV40にもD4を積極的に投入するボルボ
スポーティさよりもラグジュアリーさが感じられるV60のインテリア
スポーティさよりもラグジュアリーさが感じられるV60のインテリア

また、各社アイドリング時の音はガソリン車よりも大きい。が、高級車であるため遮音がしっかりできていて、また振動も全くない。高級サルーンであることは保証されている。高速では前述のようにエンジンの回転が1500rpmを下回る回転域で走るためエンジン音は皆無と言っていい。そして滑らかだ。高級車に求められる滑らかさではボルボが一番。ついでジャガー、BMW、ベンツという順か。これこそ根拠のない経験に基づくフィールチェックだが。

一方、ハンドリングではBMW、ジャガーがいい。サスペンションではジャガーが一番。BMW、ベンツはランフラット・タイヤを装着しているので不利だ。それは乗り心地に反映している。

インテリアの質感などは各社プレミアムモデルだけに、素晴らしいが個人的にはジャガー、ベンツ、ボルボ、BMWの順。エクステリアは個人の好みを強く反映させジャガー、BMW、ベンツ、ボルボの順。

ジャガーXEに日本導入は2015年6月からで当初よりディーゼルモデルを設定
ジャガーXEに日本導入は2015年6月からで当初よりディーゼルモデルを設定
ハンドリング性能に優れるジャガーXE
ハンドリング性能に優れるジャガーXE
スポーティかつクオリティが高いジャガーXEのインテリア
スポーティかつクオリティが高いXEのインテリア

最後にマイカーBMWのディーゼルは1万㎞を超えたあたり。新車の時よりアイドル時の音や低速時のゴロゴロ感が薄れ、どんどん滑らかになってきている、という報告もプラスしておこう。詳細は以前のメルマガ「ドイツ車の都市伝説は本当か?」で詳しく書いている。

以上購入の際の参考になればいいなぁ。

320d_07

AutoProve 有料メルマガ 毎週金曜 配信中!

ジャガー・アーカイブ

ジャガー公式サイト
メルセデス・ベンツ・アーカイブ

メルセデス・ベンツ公式サイト
BMW・アーカイブ

BMW公式サイト
ボルボ・アーカイブ

ボルボ公式サイト

COTY
ページのトップに戻る