メルセデス・ベンツがグローバルで推進するBEV 今後の展開と戦略は?

メルセデス・ベンツ本社は2022年6月下旬に今後のBEVの展開と生産の戦略を発表した。今後のBEVは、プレミアム・ラグジュアリー・クラスのBEVに焦点を当てた製品ポートフォリオを再構築し、そのためのグローバルな生産ネットワークを展開するとしている。将来の製品ポートフォリオは、トップエンド・ラグジュアリー、コア・ラグジュアリー、エントリー・ラグジュアリーの3つのカテゴリーに絞り込むことになる。

メルセデス・ベンツの生産、サプライチェーンを担当するヨルグ・バルツァー取締役は、「EQシリーズの成功を受け、生産体制の計画を明確にし、次のステップに踏み出します。私たちは従業員代表とともに、メルセデス・ベンツの戦略である『電気自動車のみを作る』という方針をぶれることなく実践して行きます。私たちのグローバルな生産ネットワークは、持続可能で、デジタルで、柔軟性に富むものにします。今ではグローバルで電気自動車の生産を急速に拡大する準備が整っています。新しい生産体制により、柔軟性と効率性をさらに高め、生産拠点を強固な体制にすることを目指しています」と語っている。

メルセデス・ベンツのジンデルフィンゲン工場、ブレーメン工場、ラシュタット工場、ケチケメート工場では、2025年頃からトップエンドラグジュアリー、コアラグジュアリー、エントリーラグジュアリーの各セグメントで新型車の生産を開始する予定になっている。

ジンデルフィンゲン工場は、トップエンド・ラグジュアリー・セグメントの主力工場であり、2025年からBEV用の「AMG.EA」プラットフォームをベースにしたモデルを生産する予定だ。ブレーメン工場とハンガリーのケチケメート工場は、BEVプラットフォーム「MB.EA」をベースにした車両を生産する。またラシュタットとケチケメートでは、2024年以降に、「MMA((Mercedes Modular Architecture)プラットフォーム」をベースとした新たなエントリー・ラグジュアリー・モデルも生産する予定だ。

EQEを生産するブレーメン工場

メルセデス・ベンツは、「2022-2026年事業計画」の一環として、ヨーロッパの生産拠点に20億ユーロ(2700億円)以上の投資を行なうことになっている。これは、次世代電動プラットフォームを生産に導入するという新たな段階を意味し、欧州拠点における将来の雇用を確保するものだ。

生産計画には6機種のEQシリーズが含まれている。これらは、3大陸の6つの拠点で生産ラインで量産できるようになっている。各生産拠点はフレキシブル生産体制の採用、最新鋭のデジタル生産システムにより、BEVを大量に生産することが可能になっているのだ。

EQシリーズ用のバッテリーは、3大陸に工場を持つグローバルなバッテリー生産ネットワークから供給される。バッテリーのこうした現地生産は、BEVを量産する上できわめて重要なポイントだ。また今年から世界中のすべての自社工場でCO2ニュートラル生産が可能となり、ドイツでも今年から再生可能資源のみからなる電力(CO2フリー)を購入している。

ジンデルフィンゲン工場

トップエンド・ラグジュアリー・セグメントの車両生産するジンデルフィンゲン工場では、BEVの高級セダン「EQS」の生産が昨年開始された。ここでは、Sクラス、メルセデス・マイバッハSクラス、EQSが同じラインでフレキシブルに生産されている。この生産ラインは、メルセデス・ベンツにおける生産の未来を体現するマザー工場となっている。

ジンデルフィンゲンはラグジュアリーBEV生産のマザー工場

もちろん、ジンデルフィンゲン工場は、セダン、エステート、オールテレインのオフロード仕様のメルセデス・ベンツEクラス、CLS、メルセデスAMG GTファミリーの生産も行なっており、まもなくGLCの生産も開始されることになっている。

最先端のフレキシブル、デジタル化生産システムを導入

ブレーメン工場では、数カ月前にBEVの「EQE」の生産を開始した。すでに2019年5月からEQCの生産が行なわれており、2機種のBEVモデルに加えて、セダン、エステート、クーペ、カブリオレのCクラス、クーペ、カブリオレのEクラス、GLC、GLCクーペ、AMG SLが生産されている。2025年頃にはMB.EAプラットフォームをベースにしたモデルの生産が開始される予定だ。

ドイツ南西部に所在するラシュタット工場

ラシュタット工場では、BEVの「EQA」を生産している。またここではエンジン車、PHEVのコンパクトカー、Aクラス、Bクラス、GLAの生産も担っている。そして2024年からは、MMAプラットフォームをベースとした新型車の生産が開始される。エントリー・ラグジュアリー・セグメントでは、メルセデス・ベンツはモデルバリエーションを7種類から4種類に減らす一方で、よりラグジュアリー性を高める方針にしている。このような方針により、Aクラス、Bクラスの生産は終了することになる。

ハンガリーのケチケメート工場

ケチケメート工場では、2021年からコンパクトSUV「EQB」が生産が開始され、ハンガリーで初のBEVとなっている。またここでは、CLAクーペ、CLAシューティングブレーク、およびPHEV、Aクラス・AMGバージョンも生産されている。2024年からは、MMAプラットフォームをベースとしたニューBEVモデルと、MB.EAプラットフォームをベースとしたモデルが生産ラインから出荷される予定だ。

2005年から中国市場向けにメルセデス・ベンツを生産している北京ベンツ汽車は、今年初頭から順義工場で「EQE」の生産を開始。ここでは4モデルがラインアップされている。EQCの生産は2019年に開始され、2021年以降、EQAとEQBを現地生産。Cクラス(ロングバージョン)、Eクラス(ロングバージョン)、Aクラス(ロングバージョン)、GLA、GLB、GLC(ロングバージョン)、AMG A35 Lもここで生産されている。

アメリカ・アラバマのタスカルーサ工場では、まもなくSUV「EQS」の生産を開始し、今年後半にはSUV「EQE」の生産も開始される。両モデルは、GLE、GLEクーペ、GLS、メルセデス・マイバッハGLSなどのエンジン車のSUVと同じラインで生産されている。

BEV技術を内製化を目指す

バッテリーの供給体制はどうか? アキュモーティブ社が2012年からドイツのカメンツでハイブリッド車やBEV用のバッテリーシステムを生産している。ここの第2バッテリー工場は2018年に操業を開始し、2019年からEQC用バッテリーシステムを、2021年から小型電気SUV用バッテリーを生産している。ここで生産を開始して以来、リチウムイオン・バッテリーは100万個以上生産実績を持っている。

シュトゥットガルトにあるウンターテュルクハイム拠点では、2つの工場がバッテリーシステムを生産しています。ヘーデルフィンゲン工場では、2021年からEQSとEQE用のバッテリーを生産。今春には、ブリュール工場でPHEV用バッテリーの生産が開始され、新型GLCなどに搭載される予定だ。

また、ポーランドのヤウォルにあるのバッテリー工場は、2020年からCクラス、Eクラス、Sクラス向けのPHEV用バッテリーを生産している。2021年には、コンパクトモデルのメルセデスEQA、EQB用のバッテリーシステムも加わっている。

北京ベンツ汽車は、北京近郊の工業団地に電池生産工場を新設しEQC、EQE用のバッテリーを生産している。

また2019年には、タイにおける現地組立工場(トンブリ自動車)と合わせて、バンコック近郊に電池生産工場を新設し、ここでBEV用、PHEV用のバッテリーを生産している。

アラバマ州タスカルーサ工場向けには、近郊に新しいバッテリー工場を新設し、今年操業を開始し、今年後半のEQS SUVとEQE SUV向けに高効率バッテリーシステムを生産することになっている。

メルセデス・ベンツは、今後は製造と開発における垂直統合のレベルを深め、BEV技術を内製化する方針だ。次世代の電気駆動システムは自社で開発し、2024年末にはEQブランドの将来モデル用の電気駆動システムの部品の製造と組み立ては、シュツットガルトのウンターチュルクハイム工場で開始される予定としている。

もうひとつの重要なステップは、イギリスの電気モーター会社YASAを買収したことだろう。この買収により、メルセデス・ベンツは次世代の超高性能モーターとして、独自の軸流モーター技術とノウハウを確保したことになる。将来、ベルリン工場ではこれらの超高性能軸流電気モーターの製造と組み立てを行なう計画だ。

メルセデス・ベンツの「2030年」

メルセデス・ベンツは、2020年と比較し、2030年までに乗用車1台あたりのライフサイクルにおけるCO2排出量を少なくとも半減させるという目標を掲げている。そのため車両の電動化、グリーン電力による充電、バッテリー技術の向上、生産におけるバッテリーと再生可能エネルギーを含むリサイクル素材の包括的な使用を実現することにしている。

今年から全世界の自社工場でCO2ニュートラル生産を行なっており、ドイツでも今年から再生可能資源のみからなる電力(CO2フリー)を購入。さらには各拠点で再生可能エネルギーの生産量を増やすことを目指している。来年末までに、11MWp以上の容量の太陽光発電所を稼働させる予定で、2025年までには太陽光発電システムの設置に大幅な投資を実行する。また10年半ばまでに10億ユーロ相当の風力発電の新規電力購入契約に投資する予定となっている。

2030年までに、生産に必要なエネルギー需要の70%以上を再生可能エネルギーで賄う計画で、15%は自社拠点での再生可能エネルギーによる発電を予定している。これは、自社拠点での太陽光発電や風力発電の拡大と、それに対応する電力購入契約のさらなる締結によって達成される予定としている。さらに2030年までに水の消費量を35%削減するという目標も掲げている。

次の段階として、メルセデス・ベンツは物流をCO2ニュートラルにすることも目指しており、ここでは車両やバッテリーなどのコンポーネントの鉄道輸送が重要な役割を果たすことになっている。

メルセデス・ベンツは、このように2030年を目指し、グローバルでBEV化を推進し、同時に企業の生産、サプライチェーンを含めてカーボンユートラルに向けてのチャレンジが開始されており、その歩調に合わせて内燃エンジン車の生産は縮小されていくことになる。

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