フォードが進める「One Ford」戦略の第二弾、KUGA(クーガ)が、2013年9月7日から発売が開始される。それに先立ち、一般公道での試乗会が開催された。そのときのテストドライブの模様をレポートしよう。
One Ford戦略の下で、日本国内に投入されるグローバルプロダクトの第二弾となるクーガ。国内では2013年4月のフォーカスに次ぐモデルとなる。
先代のクーガは、2010年(欧州では2008年)の導入であり、それを考えればプロダクトライフはやや短かった。先代は欧州マーケットがメインのモデルであり、今回はグローバル戦略であるOne Ford Strategyの、まさにグローバルマーケット用として誕生しているモデルだ。
導入されるグレードは2グレードで、先代と同じく「Titanium/タイタニアム」と「Trend/トレンド」。標準車のトレンドが340万円、タイタニアムが385万円となっている。搭載されるエンジンは両モデルとも1.6Lのエコブーストでガソリンターボ+6速ATというユニットを搭載する。主に装備類での差別化がされたモデルだ。
試乗車は上級のタイタニアムで箱根のワインディングでの試乗となった。モデルの詳細は既報で、こちらの記事を参照して欲しい。
■ライバルはVWディグアンやBMW X1
2代目クーガは先のフォーカスとプラットフォームを共有するCプラットフォームの改良型で、Cセグメントに位置するモデルとなる。サイズは全長4540mm×全幅1840mm×全高1705mm、WB2690mm、JC08モード9.5km/L。パワーは182ps/240Nm。
ライバルは、フォルクスワーゲン・ティグアン、BMW X1などで、やや大きいが、アウディQ3なども競合となるだろ。
また国産車の、マツダCX5、ホンダCR-Vなど、300万円前後の市場が活性化している現在、この300万円台中盤からの輸入車も視野に入れるユーザーも多く、クーガは注目の1台と言えるだろう。
ライバル筆頭のティグアンのスペックを挙げてみると、1.4Lガソリンターボ+6速DSGで燃費は14.6km/L。150ps/240Nmのパワーでサイズは4430mm×1710mm×1800mm、WB2605mm、価格はエントリーモデルで345万円だ。またBMWX1は、エントリーモデルの18iが2.0LのNAで8速AT、燃費は12.0km/L。パワーは150ps/200Nmだ。サイズは4485mm×1800mm×1545mm、ホイールベース2760mmで価格は367万円からとなる。
ちなみに、クーガの車輌重量はトレンドで1690kg、ティグアンが1540kg、X1が1570kgであり、クーガがやや重い。この150kg前後の重量差分が燃費には不利となる。だが逆にこの重量は後述するが、走りにおいてしっとりとした上質感の演出には、プラスに働いていると思われる。
■走りをイメージさせる躍動感あるデザイン
次にOne Ford戦略における2代目クーガの開発目標を挙げてみる。これは4つのポイントで説明できるが、まずデザイン、そしてパワートレーン、ハンドリング、ユーティリティ。フォードではクオリティ、グリーン、セーフティ、スマートという言葉で説明している。
まずはデザインから見てみよう。デザイン言語はフォードが推し進めるキネティックデザインで、線が強くエクステリアからは力強い印象を受ける。テーマはアスリートのような躍動感で、誰が見ても走りをイメージさせるというものだ。フロントバンバーから下部にかけて台形にデザインされた開口部は、迫力とワイドな安定感を感じさせ、まさに“走る”印象がある。さらに彫りの深いデザインが随所にあり、こだわりと重厚感もある。
インテリアは立体感の強く、シンプルでのっぺりとしたティグアンとは正反対の印象を受ける。ダッシュボードも斜め上面と下面という構成を持っていたり、ピアノブラックとシルバーの加飾で高級感の演出も上手にされていると感じる。
シートは10方向に調整が可能で、最適のドライビングポジションを得ることができる。もちろんステアリングは前後、上下に調整できる。運転席からの眺めでは、キャビンフォワードされたインテリアなのだが、前述のダッシュボードのデザインの影響なのか、それほど意識はさせられない。また、アクセルとブレーキペダルの位置も違和感はない。
先代クーガで要望が多かったという、リヤの乗員スペースとカーゴ容量についても改良されている。
今回のフルモデルチェンジで全長が95mm延長され、そのほとんどが室内スペースの拡大とカーゴ容量に使われているという。カーゴスペースは10%以上拡大し、360Lから406Lへと広がり、リヤシートはリクライニング機能を付け、快適性が高められている。また、リヤゲートにはパワーリフトゲートをタイタニアムに標準装備し、さらにバンパー下側で足のキック動作に反応し自動でゲート開閉を行なう快適装備も持っている。
フォードとマイクロソフトで共同開発したSYNC/シンクというドライバーコネクト・テクノロジーでは、USBやBluetoothでデジタル音楽プレーヤーとの接続も可能になる。国内ではもはや必須のナビゲーションだが、これはオプションで用意されることになる。タイプは2種類あり、2DINタイプとオンダッシュタイプとなるようだ。
■上質感と高級感に驚かされた
クーガで走り出してまず思うのは、その上質感と高級感だ。コンパクトクラスのSUVとしては、トップクラスの上質な乗り心地と言えるだろう。静粛性が高く、ロードノイズも小さい。リヤシートでその辺りのインプレッションはとれなかったが、これはオーディオの音声認識のために車内の静粛性が高くなっているということだ。静粛性に関しては日本人は、他国民より気にする方なので静かなクルマはもちろん大歓迎だ。
エンジンは1.6Lのガソリンターボのエコブーストだが、エンジン音も静か。特筆はATの滑らかさだ。欧州のフォーカスに搭載する1.6Lガソリンターボにはゲトラグ製のDCTを搭載しているが、このクーガにはATをチョイスしている。ちなみにクーガの欧州仕様2.0Lターボディーゼルには、DCTが採用されている。北米仕様には、2.0Lターボのエコブーストと直列4気筒2.5Lもラインアップされている。
ガソリンエンジンの静かさとAT特有の滑らかさを選択した組み合わせと思える。特にATの変速は滑らかでありながら、シフトがスリップするような感覚はなく、ロックアップの範囲も広い先端のAT制御ではないだろうか。
この静粛性と滑らかな走りは乗り心地も同様に、上質感がある。装着するタイヤはコンチネンタルのプレミアムコンタクト2という新ブランドで、235/50-18を履く。18インチとは思えないほどのソフトな乗り味なのだ。
■高速コーナリングでも安定した走り
こうしてインプレッションを述べると、まるで高級セダンのようで、ゆったりとしたイメージを持つかもしれないが、クーガはハンドリングも正確でワインディングを楽しく走ることができるモデルだ。さらに最先端の制御技術により、かなりの高速コーナリングをしても安定した動きをする。
この2代目クーガはFFベースのオンデマンド式インテリジェントAWDで、リヤへのトルク配分を自動で行なっている。さらに左右輪へのトルク配分もブレーキを使ったトルクベクタリング機能があるので、ワインディングを安全に楽しく走れる。
また走りを積極的に、快適に安全にするためのアドバンストラックとRSC/ロールスタビリティコントロールがある。このアドバンストラックはABS、トラクションコントロール、ESP(横滑り防止)などを統合制御し、四輪個別にブレーキ制御するアクティブ・セーフティである。そしてRSCはSUVに特化した横転防止装置で、ジャイロセンサーが毎秒150回の頻度でロール角、ロール加速度をモニタリングし危険性を検知すればアドバンストラックで制御する仕組みになっている。また、オーバースピードでコーナーに進入した場合は、カーブコントロール機能でブレーキとエンジントルクを制御し減速させる機能も装備している(タイタニアムに標準装備)。
これらは実際の走りにおいてドライバーが感じる場面として、まず、オーバースピードでコーナーに進入したときに、弱アンダーだとコーナリングブレーキ、トルクベクタリングで回頭性があがり、アンダーが消えスムーズにクリアできる。そしてさらにオーバースピードで強アンダー、コースアウトの危険性を検知するとコーナーブレーキが働き、クルマは一気に減速しコースアウトから免れるということになる。
つまり、ひとつのコーナーの進入から立ち上がりまで、インテリジェントAWDによってトルク配分が行なわれ、トルクベクタリング、コーナーブレーキなどで制御されながら安定したコーナリングをするということだ。さらにレーダーセーフティも装備され、30km/h以下では前車との衝突を避けるアクティブ・シティ・ストップも装備している。
今回はワインディングでの試乗だけであったが、直進性の高さや安心感、ボディのしっかり感も高く、静粛性の高いモデルだった。全体の印象としては軽快感より重厚感のある大人な印象だった。
フォーカスのときもそうだが、ライバルとなるゴルフ7や、ボルボV40と比較すると、フォードのクルマは飛び道具的なもので勝負するのではない。全体の大人感、長く所有したくなる、飽きのこないモデルと言ったキーワードでレポートしたが、今回のクーガも同様で、フォード戦略は地に足を着けた戦略だと感じるのかもしれない。