太陽が眩しい季節に、素敵なオープンカーの試乗会に参加してきた。場所はスロベニアの国境に面するイタリアの小さな避暑地、トリエステだ。実は今年(2016年)の4月に同じメルセデスのSクラスカブリオレに南フランスで試乗したばかりなので、とても贅沢なフルサイズ・カブリオレの余韻も残っている。<レポート:清水和夫/Kazuo Shimizu>
■ソフトトップを採用する4シーターオープン
Sクラスカブリオレは、その名のとおりSクラスクーペをベースに、CクラスカブリオレもCクラスクーペをベースに開発したソフトトップを採用するオープンカー。方やフルサイズ、こちらはコンパクトとクルマのサイズこそ異なるが、メルセデスの場合、2+2クーペのオープンカーはソフトトップで開発されている。
一方、2シータースポーツカーのSLとSLCはルーフが大きくないので、電動格納式ハードトップのバリオルーフを使うのがメルセデス流だ。ライバルBMWは2+2のキャビンにもかかわらず4シリーズのオープンに電動格納式のハードトップを採用していて対照的だ。ソフトトップかハードトップかは議論が別れるところだが、ルーフを閉めた時にどんなキャラクターを与えるのかでトップの仕様は決まる。
メルセデスは、ベントレーやアストンマーティンと同じように、ソフトトップが持つ柔らかい素材は温かみとゴージャス感を与えると考えている。一方、BMWはルーフを閉めた時、通常のクーペスタイルになるようにハードトップを採用する。どちらも一理があるので、そこが各ブランドの考え方の違いなのだろう。
■CクラスカブリオレとAMG
Cクラスカブリオレは、Cクラスファミリーの最後に登場したラインアップだ。最初にステアリングを握ったのは、476ps/650Nmの実力を持つ4.0L V8型ツインターボを搭載したAMGのC63カブリオレだ。
この4.0L V8型ツインターボは、AMGの掟に従って「ワンマン・ワンエンジン」のコンセプトで、F1エンジンと同じくらい緻密に組み立てられる。ふたつのタービンがVバンク内に搭載した設計は「ホットインサイドV」コンセプトと呼ばれ、排気バルブからタービンまでの距離が短いためターボのレスポンスが高まり、エンジン全体がコンパクトになるというメリットがある。AMG自慢のスポーツカー、AMG GTと同じエンジンだが、AMG GTがドライサンプであるのに対してC63カブリオレはウェットサンプという違いがある。
0-100km/h加速で4秒を切る実力を持つ476psエンジンは、C63のコンパクトなボディにはあまりにも過激だ。ESPが備わるので安心はできるが、FR なのでS字が連続するコーナーでスロットルを踏み込むと、グッと車体が沈みこみリヤがムズムズしてくる。しかもカブリオレなので、ダンパーを「スポーツ+」にセットするとボディが負けている感じがした。さすがに荒れた路面では、突き上げも大きい。
■ベストハンドリングはAMG C43
ここまでヤンチャなCカブリオレでなくてもいいという人には、AMG C43はどうか。エンジンは3.0L V6型ターボで、Eクラスにも使われる実績があるエンジン。3.0Lながら最高出力367ps、最大トルク520Nmのパフォーマンスは立派だ。
ギヤボックスは9速のトルコンATなので、街中で走りやすい。4MATIC(AWD)を採用したAMG C43は、峠でも適度にアドレナリンがでてくるし、愉しいハンドリングに夢中になれる。気になるボディ剛性は、AMG C43の締まったサスペンションともマッチングが良い。
もう1台のC300カブリオレは、抜群に快適な乗り心地だった。調べてみるとAMGはノン・ランフラットタイヤでパフォーマンスを重視するタイヤを選んでいるが、C300はランフラットタイヤだった。しかし、ランフラットタイヤながら、オプションのエアサスペンションを装備していたので、C300は意外にも抜群な乗り心地だったのだ。
予算に余裕があるならAMG C43はオススメだ。AWDなのでウインタードライブにも連れ出せる。ハンドリングはAMG C43に軍配を上げるが、しかしボディ剛性とのマッチングは、エアサスペンションが備わったC300がベストだった。
ちなみに我が家では、ソフトトップのオープンカーをたくさん乗り継いできている。911カブリオレ、ミニカブリオレ、スマートカブリオレとずっとソフトトップ派だ。ソフトトップが好きになった理由は、亡くなってしまった徳大寺先生の一言だった。「ルーフに落ちる雨の音がいいんだよね」と。確かに、そのとおりだ。そしてなによりも、2+2のソフトトップの優雅さに惚れ込んでしまう。ソフトトップは開けたスタイルが正装なのだ。