【繁浩太郎の言いたい放題】こんなCX-3がなんでできるんだ? マツダの凄さ

■CX-3のほぼフルモデルチェンジなマイナーチェンジ

今回のCX-3はマツダによるとMMC(マイナーモデルチェンジ)の位置付けだが、私が変更内容を聞いて試乗(2WDガソリン車)した限り、FMC(フルモデルチェンジ)レベルの改良に思える。

マツダの次世代車両構造技術(スカイアクティブ・ビークルアーキテクチャ)は、マツダ独自の開発思想で、事実ハンドリング、加速フィール、NVH、シートフィールなどアウトプットが大幅に改良されている。特に、ステア・フィールはドライバーの意思をシャープに表現してくれ、さらに乗り心地が「丸くて」良く、SUVでありながら乗用レベルを超えてスポーツカー並以上の気持ち良さがある。

繁浩太郎の言いたい放題 マツダ CX−3 セルフィー
元ホンダで車両開発、とりまとめを担当した繁さん。いたく感心させられたマイナーチェンジのCX-3

なんで、こんな素晴らしい商品がマツダでできるのか?

■マツダの山と谷

マツダは紆余曲折を経てここまできている。
人で言えば人生の酸いも甘いも知っているということだ。
1970年代にはトヨタと日産に次ぐ第3位メーカーとなりながらも、バブル崩壊後マツダの業績は急降下し、フォードに助けてもらったが、その後、少しするとリーマンショックの影響でフォードは引き上げていった。
マツダは大変困ったと思うが、そこから自力で這い上がった。
この粘り強いパワーはどこからくるのか? と考えてみた。

■広島という「地政学的」強さを感じる

現広島東洋力-プは「原爆と敗戦からの再生の象徴」として、県民を中心にした様々な人から「思わず応援したくなるチーム」と愛されながらも、苦しい成績が続いた。しかながら、今では優勝チームにいたっている。
ファンが手作りで支え育てた歴史を持つ球団だが、私の中ではなにかしらマツダと重なる。

繁浩太郎の言いたい放題 マツダ CX−3 運転風景
クルマが丸く走る・・・とは独特の表現だが、乗ってみるとよく理解できる

■フォードから愚直に学んだマツダ

フォードが去った後、「どうしようか」相当悩んだらしい。
あとは自分でやるしかないと、会社の行く末を、自動車産業、ユーザー、技術の方向など、全て分析しながら真剣に議論したらしい。
どうやって生きていくか? どこに生きる道があるか?
そもそも、私達はどうなりたいのか?
長く深い議論の結果、「自分達の生き様」を掴んだ。
販売台数を追い、企業規模拡大を目指すよりも、限られた規模でマツダの考えるいいクルマをじっくり造る。
投資(人、モノ、金)のかかる電動化技術よりも、まだまだ続く内燃機関をしっかりとしゃぶりつくす。
これらを全社員に半年かけてブレークダウンした。
その時から、マツダは再び真に生き返った。

■大企業病とは無縁の健康体のマツダ

ここ数年、IT社会が本格化し世の中が変わってきた中で、大手企業や老舗の凋落や破綻が増え、また政治から日大騒動まで「保身」が先行し、日本は企業に例えると「大企業病」といえるだろう。
また、カーメーカーの中には村社会化して、大企業病対策に苦心しているところもあると聞く。

そんな日本社会の中で、マツダは「健康体」だ。
企業ビジョンつまり、自分達の生きる方向とあるべき姿、その道程が明確にされていて、それを社員全員で共有しているのだ。

試乗会などでお会いするカーメーカーの開発者の殆どは、質疑マニアルがあるのか決まったフレーズで話す、それ以外は「担当外です」や口を濁す。
マツダの開発担当者は「自分の意見をはっきりと言う」。他社の開発者とは全く異なる。
私は、こういう企業を「全員社長」と呼んでいる。
自分で話すことを考え判断できるのだ。
縦組織の壁はなく、また社員は任せられて自立している。
全社員のモチベーションは高い。

■自動車産業とマツダ

現在、自動車産業関連の動きとしてニュースになるのが・・・
・世界NO.1市場中国のEV化政策
・ダイムラーの言う「CASE」
(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)
・環境車のゆくえ(EUのディーゼルバッシング)
などで、変化の時期を迎えている。

普通の企業の社長なら、中国のEV化政策に対しては世界一の市場が言うことだから、と社内にEV開発の加速を指示するだろう。また、「CASE」では、今後のカーメーカーはライドシェア、カーシェアやモビリティサービスに軸足をおくことを意味し、そのために通信で繋がり、EVで自動化となって、カーメーカーがこれらをやるということは、つまりサービスプロバイダーになるということになり、豊田章男社長の「クルマ会社を超え、人々の様々な移動を助ける会社、モビリティ・カンパニーへと変革することを決意しました」につながる。
何もしないカーメーカーは、単に構成パーツメーカーになるかもしれない。

また、環境車としてのディーゼルはフォルクスワーゲンの不正以降、現実走行時のNOx濃度が問題になっている。ユーロ6まで規制は厳しくなってきているが、現実的には古いディーゼル車が多く街中を走っているという現実が問題視されている。
EVは電池がまだまだの中(性能と価格)ICE(内燃機関)なみの使用に耐えられない。また、ガソリンの生成過程で出てしまう軽油の使いみちも大切。まだまだディーゼルの役目は大きい。

という動きの中で、マツダは他社カーメーカーの動きとは異なる方向で、自分の線路をひいてその上を確実に進んでいる。

大切なのは、それが間違いか云々よりも、よくよく議論し考えた結果、自分達の線路を定め全員共有して進むことができていることが企業として素晴らしい。
大企業病で社内が村社会化した企業ではできない。

■今後のマツダ

だから、ユーザー不満の調査結果を反映したようなマイナーモデルチェンジでなく、CX-3のような大幅改良されたフルモデルチェンジのようなモデルチェンジができるのだろう。

今後も一般的なユーザー価値観調査で造るのでなく、「マツダが考えるいいクルマ」を造ってくると考える。
それは、結果的にユーザーの喜びを本当に考えていることにつながっていると思う。

繁浩太郎の言いたい放題 マツダ CX−3 自動車メーカー別販売台数
2017年の各社の販売台数。単位は万台

マツダの企業規模はカーメーカーの中では微妙だ。
400万台規模のカーメーカーは、1000万台メーカーを目指していると思うが、160万台のマツダは、規模よりも「ブランド」を大切にしているBMWやメルセデス・ベンツのようなプレミアム・ブランドを目指していると考える。
日本と世界で、プレミアム・ブランド化が成功するか。
これこそ、チャレンジだ。

当然、そのためには商品だけでなくお店、流通〜宣伝など全てが「マツダ・ブランド」のもとに展開されなければならないが、やはりその中心は商品だ。

モノづくりコンセプトがしっかりとした良い商品を世の中に出し続けることにより、きっと、ジワジワとマツダファンが増えていくだろう。
「ローマは一日にして成らず」。
過去モノづくりに携わった私としても頑張り続けて成し遂げて欲しいと思う。

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COTY
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