2015年7月1日、ZF TRWはベルリンにあるテストコースで半自動運転による高速走行支援システムのデモンストレーションを行なった。このこのデモ走行は、40㎞/h以上で走行しながら、自動ステアリング、自動ブレーキ、自動加速を実現する高速走行支援を行なうというもの。
■半自動運転のデモンストレーション
デモで使用する車両は、ZF TRWのAC1000レーダーとS-Cam 3ビデオカメラ、ベルトドライブ式電動パワーステアリング(EPS BD)、アダプティブクルーズコントロール(ACC)機能と車線逸脱警告(LCA)機能を統合した横滑り防止装置EBC 460が搭載されている。
ACC機能により、前方に速度が遅い車両が近付いたり、別の車両が車線に割り込んだりしない限りは、車両はドライバーが設定した速度で巡航し、速度が遅い車両がいる場合や前方が空いた場合は、ドライバーが指定した車間距離を維持するように自動的に加速、減速が行われる。
また同時に、前方監視カメラと電動ステアリングシステムによって車両は車線の中央を維持して走行する。もちろんドライバーは、いつでもこれらのシステムをオーバーライドして手動運転に戻すことができる。
ZF TRWは、安全システムを包括的に供給するサプライヤーで、その安全システムは柔軟性、拡張性に優れており、 同じセンサーを自動車メーカーごとに異なる要件に合わせ、様々な機能に活用することができる。例えば今回のデモ車両に搭載されている運転支援システムを、緊急ステアリング支援機能として利用することも可能だという。さらに今後は、車両の自動追い越し(車線変更制御)を可能にする360度センサーシステムも導入される。
■カメラとレーダーを統合したフュージョンステムの本格生産開始
ZF TRWはレーダーとカメラ技術を統合したフュージョンシステムを乗用車、商用車向けに本格生産を開始することを発表した。
この市販システムは、カメラとレーダーからのデータを30~40ミリ秒ごとに統合することで、自動緊急ブレーキ用の横滑り防止装置(ESC)を介して急ブレーキをかける場合など、搭載システムからのアクションを許可するタイミングを確認することが可能になる。
レーダーは範囲と相対速度の計測に優れている一方、カメラは側方計測と対象物の正確な検知に理想的であり、これらのセンサー技術は高度な補完関係にある。複数のレーダーとカメラを統合したフュージョンシステムを、ZF TRWの高度なセーフティドメインECU(SDE)と組み合わせることで、運転機能の部分的な自動化を可能とし、最終的には高度な自動化を実現する未来の運転システムへと進化させることができる。
ZF TRWはレーダーとカメラの両方を供給することにより、付加価値を加えている。同社はシステムインテグレーターとして独自のアルゴリズムを開発しており、複数の部品メーカーからセンサーを購入した場合より、反応速度を高速化できており、より幅広い機能を実現できる。また、このフュージョンシステムは、製品化に要する時間を短縮できるよう統合パッケージとして設計、検証することもメリットとなっている。
■新世代のカメラの生産、開発も本格化
ZF TRW社は世界の幅広いセグメント向けのカメラ「S-Cam 3」の生産を開始したことも発表した。現時点では4つの主要グローバルプラットフォーム向けで、2015年末までの間に、ヨーロッパ、北米、アジア地域の多数のコンパクト、C/Dセグメントのセダン、およびクロスオーバーモデルに搭載される予定。
S-Cam 3は、前世代カメラの6倍の処理能力に加え、交通信号認識、大型動物、一般的な物体検知、夜間の歩行者検知による自動緊急ブレーキをはじめとする多彩な機能を提供できる能力を持つ。
さらにZF TRWは、イスラエルのモービルアイ社のEye Q4チップを搭載し、自動運転機能の要件を満たすようにデザインされた第4世代ビデオカメラ「S-Cam 4」製品を、2018年に市場投入する予定だ。S-Cam 4は、S-Cam3を発展させた単眼モノカメラタイプと、長距離検知機能を向上させたレンズと、短距離用の魚眼レンズというハイグレードな3個のレンズを搭載した複眼レンズタイプがラインアップされる。第4世代ビデオカメラS-Cam 4は、ヨーロッパの大手自動車メーカーによる幅広いプラットフォームへの採用が決定しているという。
単眼式、複眼式の「S-Cam 4」は自転車横断に対応するなど新たなユーロNCAP (安全性能評価基準試験要件を満たすよう設計され、モービルアイ社のイメージプロセッサEye Q4に加え、対象物認識アルゴリズムとしてZF TRWの縦方向・横方向の制御アルゴリズムと統合することにより、高度な運転支援、半自動運転システムとして活用するための性能が強化されている。