ZF シャシー制御ソフト「cubiX」を吉利グループ向けに生産開始

グローバル・サプライヤーのZF社は2023年3月8日、シャシーの運動を総合的に制御するソフトウエア「cubiX」を吉利グループ向けに生産を開始したと発表した。

車両の前後・左右・上下方向の動き、ヨーイング、ローリング、ピッチングを統合制御する「cubiX」ソフトウエア

クルマを意のままに快適に走らせるためには、車両の縦、横、垂直の各軸方向の運動(ダイナミクス)を調和させることが必要だ。特に、自動運転でドライバーが運転から離れ、リラックスしている状況ではきわめて重要になる。この課題を解決するためにZFのcubiXソフトウェアが登場した。

ZFのcubiXは、シャシーのシステム全体を制御し、調和のとれた加速とブレーキ、正確なステアリング、バランスの取れたダンピングを確実なものにすることができるのだ。

「cubiX」搭載第1号の吉利グループ傘下のスーパーEV「ロータス エルトレ」。前後のモーターで905psを発生。0-100km/hは2.9秒

2023年の年初から、新しいZF cubiXソフトウェアを搭載した最初の車両が公道を走行している。中国の吉利グループのロータス電動SUV「エレトレ」は、2月に中国市場で納入を開始し、2023年半ばからはヨーロッパでの発売も開始する予定だ。

ZFのソフトウェアは、ブレーキ、フロント、リヤアクスル・ステアリング、アクティブロールスタビライザーなどのシャシー機能全体と新しいスポーツカーの電動ドライブを総合制御するシステムだ。さらにZFは新世代の統合ブレーキ制御システムや800Vのテクノロジー、SiC(炭化ケイ素)インバーターも供給している。

ZF社のビークルモーション・コントロールシステムの責任者のアンドレ・エンゲルケ氏は下記のように語っている。

「cubiXソフトウェア・シリーズの初公開により、ソフトウェア・デファインド・ビークル(ソフトウェア定義型車両:SDV)の車両運動性能に対する当社のシステム能力を見事に実証しました。我々はロータスの仕様にしたがって、車両の縦、横、垂直方向のダイナミクス全体を調和的に制御できるようにしました。ZFグループ全体が有するシステム・ノウハウは、ブレーキとステアリング・システム、アクティブ・ダンパー、ドライブライン・テクノロジーの分野で数十年の経験から得られたものなのです」

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cubiXソフトウェアは、快適性、ダイナミクスと効率を考慮して車両の動きを最適化し、同時に高度な運転支援システムの基盤にもなっている。ZF初の純粋なソフトウェア製品となるcubiXには、大きな利点がある。メーカーや特定の設計に関係なく、ダンパー、ブレーキ、リヤアクスル・ステアリングなどのさまざまなアクチュエーターと互換性があることが特長だ。これによりメーカーは、追加の統合作業なしで、同じ制御プラットフォームで異なるモデルシリーズに柔軟に実装できるのである。

ソフトウェアのアップデートやアップグレードは無線通信(OTA)で、つまり整備工場に持ち込むことなく実行することができる。このように、ソフトウェアは車両の生涯を通じて最新の状態に保たれるため、納車後もいつでも機能を追加することもできる、まさにソフトウェア定義型車両:SDVということができる。

cubiXは、ハードウェア部品の多くの個別の制御ではなく、包括的なドメインおよびゾーンアーキテクチャへ移行するソフトウェア・デファインド・ビークルへのトレンドの一例といえる。これまでは、ダンパー、ブレーキ、またはリヤアクスル・ステアリングにはそれぞれ独自のコントロールユニットがあり、車両の全体的なアーキテクチャに精巧に統合する必要があったのだが、このcubiXはそれらを解消し、自動車制御ソフトウェアの複雑化にも対応しているのだ。

新しい電気・電子車両アーキテクチャーは、ドメインと呼ばれる車両の特定機能領域のすべてのソフトウェアを中央制御ユニットに集約している。この包括的な制御により自動車メーカーを車両の性能、快適性、効率面での細かなチューニングとドライビングダイナミクスの妥協から解き放つことができる。

同時に、複雑な運転支援システムを簡単に組み合わせることができるなど、新しいアーキテクチャーに完全に統合できるソフトウェアとなっている。

cubiXはドイツ、チェコ、ルーマニア、イギリス、インド、中国の拠点で開発され、実用開発はアジア太平洋地域で行なわれている。

そしてこの革新的なソフトウェアのさらなる量産は、2023年以降に予定されている。

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