電動化 Electric Mobilityの分野
ZFではドイツ・シュバインフルトにモーターの生産工場をもっており、三相交流のインダクションモーターもラインアップしている。もちろん、パワーコントロールユニットの開発、SiCを使ったユニットなどの研究も行なっているが、電動化エリアでの提案はユニークなものだった。
マイルドハイブリッド
P4に配置したハイブリッドのテスト車、ダチア ダスターに試乗した。こちらはAMTを標準とし、シフトアップ時の加速Gの失速感をなくすことができるユニットだ。ドライバーはAT車と同様にアクセルペダルを踏み続けても失速せず加速感が維持できる。P4ポジションに搭載したモーターがシフトチェンジの時に駆動アシストしているためだ。
そして、このダチア ダスターはEV走行も可能のタイプで、本来FFモデルの1.5Lディーゼルを搭載しているのだが、EV走行できることも披露した。これはリヤ・アクスルにモーターを搭載したデモカーだ。
小型トラック用EVモジュール
Ce Trax lite(セトラックスライト)といういすゞエルフを電動化したデモカーで、集配車両をイメージしたモデル。こちらはZFの電動駆動ユニットCe Trax liteをリヤアクスルよりやや前方に搭載している。モーターは150kWの出力で、メルセデス・ベンツの市販EV車EQCに搭載しているモーターと同じものを使用している。
モーター用2段減速機
モーターにも変速機を持たせる提案だ。最高車速と最高トルクは背反性能であり両立できない。したがって、従来は最大トルクが欲しければ最高速を犠牲にしてトルクを出す。車速が必要であればトルクを犠牲にするという二律背反だが、それを両立させるのがこの2スピード減速機だ。
トルクが欲しい時はローギヤで、最高速が欲しい時はハイギヤを選択することで両立できる。また、実際の車両に搭載したときは、アクセル開度と車速によって自動変速するので、人間が操作する必要はない。つまり小型モーターでも出力の大きいモーターと同等の走行性能を得ることができるということで、モーターの設計自由度が向上するわけだ。
ZFとは
こうしたすぐにでも搭載可能な事故ゼロアイテム、排出ガスゼロを国内のカーメーカーにアピールするイベントであったが、現在、ZFは広島、愛知、宇都宮、横浜に拠点を持ち、日本のカーメーカーに対応している。また、中国・アンチンにもテックセンターがあり、国内のメーカーも対象に開発が行なわれている。
ZFは自動運転に対し「see think act」というワードで、必要な機器、システムを開発し、もともとトランスミッションで有名だが、そうしたハードとシステムをセットで提供できる強みを持っている。もちろん、モーターだけ、ギヤだけといったパーツレベルの販売も可能だが、制御を含めたシステムサプライヤーとして存在感の高いTier1だ。
またZFのビジョンはVision Zeroであり、事故ゼロ、排ガスゼロだ。そして2019年7月にはMobility Life Balanceキャンペーンを立ち上げている。これは人々の暮らしがそれぞれの人生観に適したモビリティサービスが利用できる世界を目指すことであり、さまざまなサービスが展開されていく中、サプライヤーとして提供できる技術を安全とCO2といった分野で貢献していく姿勢を掲げている。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>