オランダ・アムステルダムに本社を置き、グローバルに地図情報、交通情報サービスを展開しているTomTom (トムトム)が2018年10月10日、リアルタイムマップやナビゲーションに対する取り組みと日本におけるビジネスの始動に関する説明会を開催した。
TomTomは1991年の設立でカーナビゲーションなどを提供する企業としてスタートしているが、現在は交通情報サービス、自動運転に不可欠の高精度3次元デジタル地図の作成などの事業を展開し、企業や政府機関、交通管理機関などに位置情報、ビッグデータの提供なども行なう地図、交通情報サービス企業となっている。
説明会ではまず取締役会メンバーで、TomTomのデジタル地図事業を推進してきたアラン・デ・タイエ氏が登壇し、現在のビッグデータ革命とその技術を活用したリアルタイム地図の現状を説明した。ヨーロッパ全域で走行する多数の車両からのリアルタイム情報、道路インフラからのリアルタイム情報により、交通に関するビッグデータを累積し、リアルタイムの地図データを取得。1時間あたり200万件以上の地図を生成する能力を持ち、ナビゲーション用の地図データは1週間に1回更新するペースだが、必要に応じて1時間ごとのデータ更新も可能だという。
つまり車載センサーからの「プローブデータ」の収集は、継続的に更新される自動車用のマップを作成するためで、デジタル地図作りの工程はAI、機械学習、ディープラーニングなどの技術を用いて自動化されている。地図作りにおけるコアテクノロジーは、CPP(コンテンツプロダクションプラットフォーム)と呼ばれ、それぞれの情報をトランザクションごとに処理し、各トランザクションが非常に高い品質を持っている。
道路で発生した変化をプローブによりすばやく捉えて1つのトランザクションとして処理を行ない、その変化はすぐに地図に反映されて自動車に伝えられるという仕組みだ。
クルマに搭載されているセンサー情報をクラウド(CPP)に送り、反映した地図情報や交通情報などをクルマに再配信することを繰り返す「クローズド・ループ」を形成しているのだ。
自動運転に求められる高精度3次元マップは誤差約10cm以内と、通常のナビシステムのマップよりもさらに高精度で、常時更新されなければならない。高精度3次元マップの現在のカバーエリアは40万km以上にも上り、今後さらにクローズド・ループの技術を活用してカバーエリアを拡張していく方針だ。
この自動運転用のデジタル地図に関しては、ドイツ系自動車メーカーとコンソーシアムを組んでいるHERE社とライバル関係にあり、LiDARを駆使したデジタル地図を展開しているHERE社とクローズドループを使用するTomTomは異なる技術アプローチを行なっているのは興味深い。
またTomTomの自動車部門のマネージングディレクターのアントワン・ソシエ氏により、正確な地図作り、カーナビ用のソフトウェアとコネクテッドサービスについて解説が行なわれ、すでにPSAグループ、BMWグループ、北米での日産とナビシステムが採用されていることを明らかにした。
トラフィック&トラベル・インフォメーション部門の副社長のラルフピーター・シェイファー氏は交通情報サービスに関する取り組みが説明され、すでに日本での交通渋滞に関する情報収集も行なわれているという。
セールスバイスプレジデント兼日本代表の山田茂晴氏は、今後の日本でのデジタル地図作り、交通情報サービスについてのアクションを開始していることを明らかにした。日本では、政府系の交通情報インフラの活用、地図情報ではゼンリンとの連携や、ダイナミックマップ基盤との連携、プローブ情報によるクローズドループ作りには、すでにプローブ情報を収集採用している自動車メーカーなどとの連携を模索するとしている。