シェフラー 日本で初のシンポジウムを開催 アジアでの研究開発体制を大幅に強化

シェフラー シンポジウム

2014年10月29日~30日、ドイツの自動車部品サプライヤーのシェフラーが4年に1度開催する「シェフラー・シンポジウム」が東京・有明のコンファレンスセンターで開催された。

シェフラー社は、クラッチやトランスミッション部品のLuk(ルック)、精密部品、ニードルローラーベアリングのINA(イナ)、精密ベアリングのFAG(エフエージー)という自動車に密接に関わる3ブランドを擁する自動車・産業用部品の大手サプライヤーだ。現在では自動車の駆動システムのシステムサプライヤーにも成長し、世界で8万人の従業員を擁し、1.8兆円の売上高を記録している。日本では、シェフラー製品はスバルやJATCOのCVT用のチェーン、ホンダのハイブリッド用DCTのi-DCD、マツダのスカイアクティブ・エンジンの部品供給などがある。

シェフラー シンポジウムシェフラーLOGO

シェフラーは1978年から4年に1度シンポジウムを開催し、多くの自動車メーカーのエンジニアが参加し、最新の自動車テクノロジーや、今後の自動車の未来像を議論し、情報交換する場としているが、今回の東京での開催は日本では初めてとなる。

このシンポジウムはシェフラー社が技術プレゼンテーションを行なうだけではなく、自動車メーカーの技術者同士の交流、議論の場としていることが特徴だ。今回のシンポジウムには日本の全自動車メーカーやサプライヤーのエンジニアが約300人参加している。

シンポジウムでは、最初にシェフラー社の最高技術責任者・兼副CEOのペーター・グッツマー博士による同社の現状と今後のクルマのメガトレンドである電動化に関する基調講演、続いて企業戦略コンサルタント会社、ローランドベルガー社の長島聡氏による近未来の社会における交通、自動車が迎えるシナリオの講演が行なわれた。

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ペーター・グッツマー博士
シェフラー シンポジウム
シェフラー・ジャパン 四元伸三CEO

ペーター・グッツマー博士は、「自動車産業は大きなパラダイムシフトを迎えています。環境問題への高まる関心や自動運転、半自動運転など安全にかかわる課題は、パワートレーンやシャシーシステムなど自動車システムの電動化が重要なテーマとなるでしょう。さらにグローバリゼーションや情報ネットワークの統合が自動車の未来を決める重要な因子になると思います。また世界中で多様なニーズに対応できる多様なソリューションが求められ、結果として、ますます複雑なシステムが必要になり、自動車産業は急激な変化にさらされています。しかし、将来の自動車がバーチャル・リアリティの世界でしか走らなくなるということではありません。日々の生活で必要な移動手段として、内燃エンジンをベースにしたパワートレーンはまだしばらくの間は多数を占めると考えられますし、ハイブリッド運転と組み合わせることによって新しい革新を生み出していくことでしょう。トランスミッションもまた、内燃エンジンと電動モーターを組み合わせながら自動車全体のシステムとして最適化するためにも、その革新の重要性が増すと考えています」と語っている。

■シェフラーの現状
シェフラー社の今期の売り上げは、ヨーロッパで5%、アジアで9.6%増加し、南米は低減したという。アジアでは中国での売り上げが9.6%アップしている。したがって今後も、よりアジアのマーケットを重視する方向に加速している。全売上高の5.5%を研究開発費に引き当て、来るべき電動化への技術の蓄積を行なっているのだ。

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2030年でも内燃エンジン車は56%と予測
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その一方で急速に燃費、CO2性能の向上が求められる

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燃費向上、CO2削減のために段階的に燃費向上を目指し、内燃エンジン、駆動系の改良、48Vマイルドハイブリッド、電動駆動システムを展開

シェフラーの予測では、2020年の自動車市場は内燃エンジン車:80%、ハイブリッド車:19%、EV:1%で、2030年には内燃エンジン車:56%、ハイブリッド車:35%、EV:9%と推測しており、電動化技術は不可避と見ている。

しかし、シェフラー社は世界的に最量産車種のA~Cセグメントは高コストのフル・ハイブリッド車とするのは困難であり、それより40~60%低コストで実現できる48Vマイルド・ハイブリッドを主流技術として推進する。そのためにサプライヤーであるにもかかわらずコンセプトカーを造り、自動車メーカーにプレゼンテーションをしているのだ。

また中国では、政府により新エネルギー車両プログラムが策定され、プラグインハイブリッドを今後のメインストリームとする政策が進められ、しかもバッテリーを含む主要コンポーネンツはすべて国産化することになっているため、シェフラー社は「技術のローカル最適化」を推進している。

中国と同じく重要な市場と位置付ける日本においても、今後1年間かけて日本市場向けのコンセプトカーを造るという。これは日本の自動車メーカーとのコラボレーションになるという。

 

■アジア太平洋地域を重視する戦略を強化
アジア太平洋州地域の生産、研究開発能力を拡大するため、さらなる戦略的投資を決定している。主要な成長市場であるアジア太平洋州地域におけるエンジン、トランスミッション、シャシーシステムとソリューションの技術的な競争力をさらに強化する目的だ。

その一環として日本の研究開発拠点を拡大し、製品の開発、シミュレーション、評価試験、性能確認のためのキャリブレーション能力を強化する。また、タイでは2015年に建設を開始し2016年に稼動する新工場の5本の製造ラインで当面はクラッチの部品製造を開始することが決定した。将来的にはエンジン、トランスミッションの部品製造に拡張させることも想定されている。

シェフラー シンポジウム
アジア太平洋地域担当のアンドレアス・シックCEO
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アジア太平洋地域のジョイディープ・ロイCTO

日本では2015年5月にシェフラー・ジャパンの本社と研究開発施設を現在の横浜市神奈川区から移転し、研究開発機能の強化、エンジニアの人員増加を行なう。現在の横浜拠点の約2000平方メートルから、移転後は4700平方m、2020年までには現在の3倍となる6000平方mへの再拡張を計画しているという。

また2015年中には、従来からの広島、大阪、名古屋の拠点にさらに宇都宮に新たなアカウントマネージメント拠点を開設する予定だ。

シェフラー社は、日本の自動車メーカーはグローバル市場における存在感をますます高め、2020年までにシェフラー・ジャパンの自動車事業部門の売り上げの約3分の1は日本国内、残りの3分の2は海外における日本の自動車メーカー向けビジネスからなると見込んでいる。このためシェフラー・ジャパンは日本の自動車メーカーとのパートナーシップを一層強化するという。

またシェフラーは10月からアジア太平洋州地域担当の最高技術責任者(CTO)職を設置し、シェフラー・インド・オートモーティブ部門のマネージング・ディレクターであったジョイディープ・ロイを任命した。ロイは日本の横浜拠点をベースに、日本、韓国、東南アジアなどアジア太平洋州地域を技術面から統括することになる。

■展示部品

リヤ電動駆動システム
電動駆動用のアクスルユニット
48V後輪駆動ユニット
回生・駆動用48Vユニットのリヤアクスル搭載ユニット

ホンダ DCT
ホンダ・フィット用の i-DCDとレジェンド用DCT(右)
シンクロナイザー
低摩擦・高耐久のシンクロ・リング

スイッチ・バルブリフト
VWグループのバルブリフト高低切り替え機構
バルブリフター低摩擦化
バルブリフターの低摩擦化

ハイブリッドモーター
トランスミッション内蔵式駆動用モーター
可変バルブリフト
可変バルブリフト機構

iトルコン
ロックアップクラッチとトルコンを統合したi-TC
油冷ベルトドライブ
油冷式カム・ベルト駆動

ダイムラー9GTronic
メルセデス用の新開発9速AT(9G-Tronic)
ダイムラー9GTronic
9G-Tronic

ベルト駆動スタートストップ
ベルト駆動ISG用のコンポーネンツ
湿式DCT
DCT用の湿式デュアルクラッチ・ユニット

振り子ダンパー付きダブルマスフライホイール
振り子式ダンパー内蔵のデュアルマス・フライホイール
電子制御水温管理
電子制御式冷却水制御ユニット

電動VVT
電動式可変バルブタイミングシステム
ウエッジ型ワンウェイクラッチ
ATのトルコン用ウエッジ型ワンウェイクラッチ

シェフラー・ジャパン公式サイト

COTY
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