ジェイテクト「人とくるまのテクノロジー展」リポート

ステアリングシステムの生産・販売で世界トップに位置するジェイテクトは、2022年5月25日に開幕した「人とくるまのテクノロジー展2022横浜」で、トヨタ bZ4X、レクサス RZに採用されているステアリングシャフトのないリンクレスのステアbyワイヤーのステアリング・システムを初展示した。

展示されたステアbyワイヤー。コラム部のモーターは展示用で、生産タイプとは違っている

世界初のステアリング系を電気信号で操舵するステアbyワイヤー「ダイレクトアダブティブステアリング」を実現したのは日産が2013年秋に投入したV37型スカイラインGTだった。

スカイラインGTで世界初採用された「ダイレクトアダブティブステアリング」

ステアリングホイールの回転を電気信号に変換し、その電気信号でモーターを駆動しラックギヤを動かすことで、応答遅れのないシャープなハンドリングによる意のままの走りと高い直進安定性による安心感を両立させている。そしてステアリングギヤ比は走行状況に合わせて9.0〜20.0までという幅広い範囲で自動可変制御するなど、従来の油圧式や電動アシストの機械式ステアリング機構では不可能な制御を実現している。

ただ、写真のように従来の機械式のステアリングシャフトをバックアップ用に装備しており、通常はそのシャフトのクラッチはオフ状態で、万が一の電子制御システム、モーターの故障時にクラッチが接続され、機械式の操舵が可能になっている。

ダイレクトアダブティブステアリングは、2重のステアリング制御とし、故障時のバックアップ・システムが採用されているが、当時の保安規準の見解により機械式のバックアップの搭載が余儀なくされたのだ。

トヨタ bZ4X、レクサス RZで採用されるステアbyワイヤー

ジェイテクトとトヨタが共同開発したステアbyワイヤーは、機械式のステアリングシャフトを装備しない、電子制御とモーターのみによるシステムだ。つまりこれは、近い将来の自動運転の時代を見越した先進システムであり、世界各国の保安規準も自動運転、高度運転支援システムを想定した法規に変化しつつあることを想定している。

操舵システムとしては、従来のコラムアシスト式EPS用のコラム・モーターと、ラックギヤを駆動するパラレル・ラックアシストEPSから流用したラックアシスト・モーターを採用し、コラム・モーター部にはトルクセンサー、操舵時に反力を発生させる操舵反力制御ECUを装備している。

もちろん制御は2重系とし、電源故障による操舵不能を回避するために、バックアップ用電源として、ジェイテクトが開発した高耐熱リチウムイオン・キャパシターを装備している。

メイン電源喪失時のバックアップ電源に高耐熱リチウムイオン・キャパシターを採用しているということは、メイン電源喪失時にはこのキャパシター電源により、操舵が確保され、最寄りの安全な場所で停車できるということだ。

ただ、この電源喪失時にどのようなバックアップをするかについては、各自動車メーカーや、各国の保安規準により違いがありそうだ。

ステアbyワイヤーは、走行状態に合わせて自在にギヤ比を可変制御でき、Uターン時でもステアリングホイールを半回転させれば可能になるなど従来の機械式ステアリングでは不可能な操舵が実現する。

また轍(わだち)のある路面、横風など微小な修正舵が必要なシーンでも、ステアbyワイヤーであれば、ドライバーに意識させずに自動修正を行ない、ドライバーのストレスを低減させることもできる。

今回トヨタ、レクサスが採用しているステアリングホイールは円形ではなく飛行機の操縦ハンドルのような形状で、従来のステアリングホイールのように持ち替えて1回転以上も回す必要がないため、この形状になっているのだ。また、この形状であれば、メーターパネルなどの視認性もより向上するメリットも生まれる。

将来的には、自動運転中はステアリング・コラム部をインスツルメントパネルに格納するなども可能になり、レベル5の無人自動運転車であれば、ステアリングホイールそのものをなくすることも可能になる。

実用上の課題としては、モーターによって作られる操舵力、保舵力、路面からのフィードバック(反力)、あるいはカウンターステアを切った時にどのようなフィーリングにするをなどモーター制御のチューニングの質が問われることになり、ドライバーにとって好ましいステアリングフィールが実現できるかがカギになると思われる。

ミライに採用されたJFOPステアリング

トヨタ ミライに採用されているJFOPステアリング

今回の展示で注目すべきステアリングシステムは、トヨタ ミライに搭載されているJFOPステアリングだ。JFOPとはジェイテクト・フェイラー・オペレーショナルの頭文字で、ステアbyワイヤーではなく従来型の電動アシスト・パワーステアでも、電源喪失や操舵システムの故障時でも操舵性能を確保するシステムの意味だ。

このJFOPの意義は、高度運転支援システム、あるいはそれ以上の自動運転システムで走行している時に電源喪失の状態でも、運転システムの機能が維持されることだ。もし操舵が維持できなければ、自動運転システムが破綻してしまうことになる。

そのため、ハードウエアの故障、あるいは電源喪失になっても、非常用バックアップ電源により最寄りの安全な場所で停止する、あるいはそのまま自動運転で走行を維持できるなどの冗長システムを備えているステアリングシステムをフェイラー・オペレーショナルと呼ぶ。

ミライに採用されているシステムは、電源はもちろん2重電源で、ハードウエア、電子制御も2系統化させ、片方が故障、あるいは電源喪失してもそのまま走行できるシステムとなっている。

そのため、自動運転でカーブを走行しているような場合で、ハードウエアの故障、あるいはメイン電源が喪失しても、バックアップシステムがそのまま稼動し、安全に自動運転が維持できるようになっているのだ。<レポート:松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>

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