GSユアサがリチウムイオン電池用正極材 リン酸バナジウムリチウムを開発

GSユアサより、リチウムイオン電池用の正極材料「リン酸バナジウムリチウム」の開発成功が発表された。

リチウムイオン電池は高出力化と安全性を高めるために、正極材や電解質、負極などの材料の開発が進められている。そのうち正極材料はコバルト酸リチウムからニッケル系やマンガン系などを経て、次世代の材料としてポリアニオン系正極材料が注目されている。その中でも実用化でリードしていたのが中国のBYD社が採用しているリン酸鉄リチウムだが、GSユアサは同じポリアニオン系でも、リン酸バナジウムリチウムに注目して開発を進めてきた。リン酸鉄リチウムは、材料としての電気抵抗が高く、また製造コストも比較的高いという不利な点があるのが理由だという。

安く、安全で高出力の電池材料の開発に成功

そうした中、GSユアサは従来よりも比較的安価な合成法によってリン酸バナジウムリチウムイオンの合成に成功。できあがった電池は、リン酸鉄リチウムイオンと同等の安全性を確保しながらも、さらに20%上回る出力特性を得ることに成功したという(ただし最大電流の値などは未公開)。

つまり、安く、安全で、なおかつ高出力が望め、さらに低抵抗であるため充放電性能に優れているというメリットはある。ただし、このリン酸バナジウムリチウムを正極に利用するリチウムイオン電池は、従来のコバルト系などと比較するとエネルギー密度が低いという弱点はある。しかし、逆に出力密度に優れるという特性は、長時間出力し続けるEV車よりも、大きな出力を頻繁に出し入れするハイブリッド車に向いているといえる。

そのためGSユアサでは、このリン酸バナジウムリチウムイオンの正極を使ったチリウムイオン電池をピュアEVではなく、ハイブリッド電気自動車向けとアイドリングストップを含むマイクロハイブリッド電気自動車向けに開発を進めるという。適材適所という選択だ。高い安全性と性能、低いコストをバランスさせる新製品の登場を待ちたい。

試作モデル仕様

公称電圧(V) 3.5

容量(Ah) 5.0

寸法(mm) 長さ112×幅21×高さ81

質量(g) 318

20100909_ リチウムイオン電池の試作品

↑リン酸バナジウムリチウムを正極材料に使ったリチウムイオン電池の試作品

AutoProveのひと言

GSユアサは、これまでコバルト酸リチウム(第1世代)やマンガン系(第2世代EV車用)で開発をしてきたが、これは第3世代リチウムイオン電池を開発したということだ。正極にリン酸バナジウムリチウムをつかったことで、発火がしにくくなり安全性が高くなる。つまり、熱暴走が起きたとき、コバルト酸リチウムなどは酸素を放出するために発火していたが、リン酸バナジウムリチウムは酸素を放出しないために、発火しにくいということだ。さらに製造コストも抑えられるというのもメリットである。そして瞬間的に大きな電流を必要とするケースに強い性格があるのだ。それは、ABSが働き、電動パワステが稼動し、ESCも働くなどというケースで、電気不足にならないタフさがあるといことだ。そのため、アイドルストップやマイクロハイブリッド車にむいているというわけだ。

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