2016年10月26日、住友ゴムは「IRC 2016 Kitakyushu (国際ゴム技術会議 北九州)」で、東北大学との共同研究により、今まで未解明だったパラゴムノキでの天然ゴムの生合成機構(生体がその構成成分の生体分子を作り出す仕組み)は、ゴムが合成されるためには3つのタンパク質が重要であることを発見し、その研究成果を発表した。この研究成果により、パラゴムノキの高生産品種の選定や植物以外でのゴム生産の可能性などさまざまな分野での応用が期待される。
タイヤなどのさまざまなゴム製品に不可欠の天然ゴムは、ポリマーの一種で、熱帯地域で栽培されるパラゴムノキなどによって生合成されている。天然ゴムの構造は、図のようなポリイソプレンを主骨格として持つことは知られていたが、どのように生合成されるのかは未解明だった。
また、これまで天然ゴムの生合成に関与するタンパク質の存在はいくつか報告されているが、それらの機能を直接確認できたものはなかった。今回の研究では、試験管内で直接天然ゴムの生合成が可能か確認することに取組んだ。
東北大学と連携しゴム合成タンパク質の機能評価のための技術開発を進め、ゴム粒子を用いたタンパク質機能評価方法の開発に成功し(図2、3)、天然ゴム合成においては、「Hevea rubber transferase 1 (HRT1)」「Rubber elongation factor (REF)」「HRT1-REF bridging protein (HRBP)」と呼ばれる3つのタンパク質が重要であるということがわかった(図4)。
また様々な検証より、各タンパク質のゴム合成での役割は、「HRT1」はゴム重合を行なうタンパク質、「HRBP」は「HRT1」と天然ゴムの蓄積場である膜粒子との結合を補助するタンパク質、「REF」は膜の粒子の安定性に関わるタンパク質であると考えられる結果が得られた。
今回の発見により、ゴム合成機構のより詳細な解明と、それによる天然ゴムの安定供給に関わる技術開発の進展が期待される。パラゴムノキの栽培は現在では東南アジア地域に限定され、病害が発生しやすいなど安定供給に不安があり、価格も不安定のため、天然ゴムの供給の安定化、パラゴムノキ以外からの天然ゴムの採集などの研究は、大きな課題となっているが、今回の研究成果はパラゴムノキの品種改良はもちろん、人工的な天然ゴムの模索にも繋がると考えられる。
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