【住友ゴム】タイヤ由来の環境問題のひとつ タイヤの摩耗で発生するTRWPとは

住友ゴム工業は2025年8月29日、自動車の走行時にタイヤと路面の摩擦によって発生する粉じん(TRWP:Tire and Road Wear Particles=タイヤ・路面摩耗粉じん)に対する取り組み成果を、国内外の学会で発表した。

住友ゴムは、TRWPが環境に及ぼす影響の解明と低減を重要課題と認識し、タイヤの耐摩耗性を高めることでTRWP発生量の低減に取り組んできている。現在はTRWPの発生、拡散、蓄積の3段階に着目して調査と研究を進めており、今回は「発生」のメカニズムと「拡散」の抑制に関わる研究について、発表した。

TRWPは、自動車の走行時にタイヤと路面の摩擦によって発生する微細な粉じんで、主にタイヤのトレッド部材と道路舗装材からなる混合物だ。タイヤは自動車部品で唯一路面と直接接触し、車両と乗員の荷重を支えながら、安全な走行を支える基本的な機能を担っている。

これらの機能を成立させるには、タイヤと路面の間に適切な摩擦が生じていることが不可欠だ。ただし、自動車の走行に伴いTRWPが発生し、大気中に拡散、さらに蓄積することで、環境にさまざまな影響を及ぼす可能性が指摘されており、ブレーキ粉塵と合わせてヨーロッパではすでに規制の検討が行なわれている。

住友ゴムは、TRWPの発生から環境中での挙動までを包括的に捉え、外部の研究機関や企業と連携しながら、発生、拡散、蓄積の各段階に焦点を当てた研究を進めている。

【発生:TRWPの形成メカニズムの解明】
総合的な道路インフラソリューション企業であるニチレキグループと協力し、TRWPの発生メカニズムに関する調査を進め、タイヤと路面の両面からアプローチすることで、TRWPの発生を抑制する技術の開発を目指すことになる。

【拡散:TRWPの特性解明と拡散抑制の研究】
空気力学の専門家であるドイツ・オストファリア応用科学大学のファルク・クリンゲ教授と共同で、走行中のタイヤ周辺に生じる空気の流れを利用したTRWP回収装置の開発に取り組んでいる。また、タイヤのゴム配合や走行条件と、回収されたTRWPの特性との関係を解析することで、拡散の低減につながる知見の確立を進めている。

2025年6月に開催された「EuroBrake 2025」にて、クリンゲ教授との共同研究で、風洞実験によるタイヤ周辺の空気の流れ(エアロダイナミクス)の可視化に成功したことを発表した。

さらに、プロトタイプでの実験により、回収装置のコンセプトが実証できた。回収装置は2重構造になっており、外から風を送り込むことでタイヤと路面近くの風の流れを変化させ、その力を利用して高効率にTRWPを装置内に回収するというものだ。

同様の回収装置は前例がなく、この研究における大きな成果と位置付けている。今回得られた知見を足がかりに、実用化に向けた取り組みを進めて行くことになる。

【蓄積:環境中のTRWPとマイクロプラスチックの定量分析】
TRWPはマイクロプラスチックの一種として分類されることがある。住友ゴムは、京都大学大学院の田中周平准教授と共同で、TRWPとマイクロプラスチックを区別して定量分析する手法を開発し、環境中におけるTRWPおよびマイクロプラスチックの存在量の把握を進めている。また、TRWPの拡散や蓄積の予防・抑制に向けた基礎的な知見の確立にも取り組んでいる。

TRWPは現時点では未解明な点が多く、特に環境への影響はさらなる研究と検証が求められている。

住友ゴムは持続可能な開発のための世界経済人会議傘下のグローバルタイヤメーカー10社からなる業界団体に発足当初より参画し、TRWPに関する調査研究、評価手法の確立、ステークホルダーとの対話などに取り組んでいる。また、一般社団法人日本自動車タイヤ協会(JATMA)や一般社団法人日本ゴム工業会(JRMA)の一員として、TRWPの評価に関するISO規格の策定にも関与している。

こうした業界団体での活動に加え、今回の発表内容など独自の研究にも取り組み、科学的データに基づくアプローチを通じてTRWPに関する課題と真摯に向き合い、環境負荷の低減と社会的責任の遂行に努めていく。

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