住友ゴムは2024年5月15日、タイヤと車両の相互の振動によって発生するノイズの予測手法を新たに開発したと発表した。
走行中のタイヤを想定したタイヤ転動シミュレーションを活用することで、この手法を開発し、応用することで、タイヤメーカーと車両メーカーの双方で静粛性能の改善が期待される技術だ。
自動車の走行時に、路面凹凸の刺激がタイヤを通して車両に伝わり発生するロードノイズは、乗員の快適性を左右する非常に大きな要因の一つだ。今後、普及が予想されるEVではエンジン音が発生しないため、ロードノイズがより顕著になり、ノイズの低減が今まで以上に求められる。
ノイズが低減し車内静粛性が向上することで乗員の快適性を向上させることはもちろん、開発工数削減による納期短縮や試作の削減による省資源を図る事が期待できるのだ。
住友ゴムは、これまでロードノイズ低減のため、様々なタイヤシミュレーションを活用してきたが、タイヤと車両が連成して発現する現象のため、タイヤだけでは実際に車両に装着された時の性能を高精度に予測することが困難であった。
今回は、複雑なデータを分解して、それぞれの部分の動きを伝達関数として表現し、それらを組み合わせて全体の動きを予測する「伝達関数合成法」を用いて、タイヤのみ、車両のみのロードノイズ性能を結合させて、タイヤと車両が連成するロードノイズ性能を簡便に予測する手法を開発した。
この手法の実験では評価することが困難な、タイヤ転動状態でのタイヤ軸フリー転動振動特性（図のB）を、シミュレーションで評価することを初めて可能にしている。
また、このタイヤ軸フリー転動振動特性をタイヤ静止状態と転動状態で比較した場合、ジャイロ効果などにより振動特性の違いが出ることが確認でき、伝達関数合成法を転動状態で行なうことの有効性が確認できている。
この研究内容は2023年自動車技術会秋季講演会で「伝達関数合成法によるタイヤ-サスペンション連成軸力予測手法の開発」として発表し、シミュレーションに必要な特許を出願中だ。
この手法確立により、タイヤ・車両の振動特性について、伝達関数という機密性が低く軽量なデータで両者を連成したロードノイズ性能予測を簡便に実施できるようになる。
住友ゴムはEVの電費性能向上に効果的な「タイヤ空力シミュレーション」と今回のシミュレーション手法をタイヤ開発に活用することで、EVタイヤや高機能タイヤなど日々変化する多様なユーザーニーズに迅速に対応することが期待できる。
