Tia1(ティア・ワン)が提供する技術が自動車には欠かせないものであることは、一般的にはあまり知られていないが、タイヤやガラス、バッテリーなどは自動車会社が作っていないことは容易に想像できる。今回は、「そういえば、これもそうだ」というスマートキーについての便利話だ。
コンチネンタルは世界初に1994年にイモビライザーを世に出し、今では当たり前の認証アイテムだ。IDの暗号化をすることで、クルマとキーを照合し、合鍵ではエンジンがかからないために盗難防止装置としての認識を持っている人も多いだろう。その後、キーに関する技術は進歩を続けていて、コンチネンタルではインテリア事業部のボディ・セキュリティ部門としてアクセスシステム、認証システムが開発され続けている。
今回のプレゼンテーションはウルフガング・ピーシュ氏で、インテリア部門の開発に27年かかわり、アクセスコントロールシステムを15年開発しているエンジニアだ。
現在クルマのキーでは、RF/LF通信を使ったキーとクルマのアクセスというのが一般的だろう。いわゆるリモコンキーだ。これを一歩先に進めると、さまざまな利便性やインテリジェンスが生まれてくる。
ちなみに、コンチネンタルではクルマのキーのシェアを欧州では35~40%、北米では60%、アジアでは30%のマーケットシェアを持っている業界のトップリーダーだ。世界18拠点で開発され1万3000人の従業員、内3000人のエンジニアを抱えて開発されているという。ライバルとなる企業ではデンソー、ボッシュなどいわゆるティア1だ。
コンチネンタルではこのRF/LF通信をクラシック・システムと呼んでいるが、実際は現実より一歩先にいる。たとえばキーを持ってクルマに近づいたとき6m離れた場所で、ウエルカムライトが点灯し自動でアンロックされる、ということが可能だが、現状では人間がスイッチを押す、ドアに触れるなどのアクションを起こさないと稼動しない。また、トランクオープナーも、スイッチを押すとか、バンパー下に足をかざすなどのアクションを必要としている。しかし、この通信システムと認証システムがあれば、キーに触れることなく、このようなことが可能となっていくわけだ。
◆Future Trend
で、さらにこの先をいくスマートアクセスとして、スマートフォンを使ったアクセスが考えられている。これはクルマとキーの通信は従来のRF/LF通信だが、キーとスマホではブルートゥースやNFC(おさいふケータイ、Suicaなどに使われる近接距離通信)を利用して、アクセスする方法だ。
スマホとキーがアクセスできると、たとえばスマートウォッチが利用可能で、スマートウォッチでドアのロック、アンロックができる、トランクオープンが可能となる。もちろん、ドライバーがクルマから離れれば、自動でロックされる機能などへと機能は拡張され、利便性は高まる。また、自動車メーカーには新たな装置や機器をクルマに搭載する必要はないメリットがある。
これとは別に、もう一方で、もはやキーは不要である、という考えからスマホにアプリをダウンロードすることでクルマのキーとして活用することも可能としている。クルマとスマホの通信技術としてはブルートゥースやNFCを使うことになるが、ここで問題なのはセキュリティと信頼性を高めることであり、コンチネンタルではOTAKeys(オタキーズ)という合弁会社をすでに設立している。
OTAKeysは、自動車会社と一緒にインフラの提供と信頼できるサービスの提供をするためのサービス会社で、本当の意味でのキーレスとするには、その背景でしっかりとしたサービスが必要であり、犯罪者がクルマに仕掛けてくる攻撃を避け、悪用を防ぐためのサイバーセキュリティをしっかり整えておく必要があると説明している。
このスマートアクセスには、このようなバックエンドでのサービスが不可欠であるため、そのようなサービスは不要と考える地域に対しては、シャドーキーというシステムもある。これはキーレスであることは同じだが、薄型の小さなデバイスを用い、スマホの背面に貼り付けて使う。スマホからバッテリーを供給され、アプリをダウンロードして利用する、というものだ。
いかがだったろうか?現在でもリモコンキーのユーザーであれば、キーをカバンの中、ジャケットのポケットに入れたまま、という方も多いだろう。クルマの施錠&アンロック、エンジンスタートもキーを取り出さずともできている。これが今度はスマホに変わる可能性を示している。スマホには自動パーキング機能など、自動運転に関する技術でも欠かせない存在となってきている。こうしたスマートアクセスや認証技術の進歩により、クルマがより便利になり、刺激的なものになっていくためのツールとして見逃すことができない分野でもあることも間違いない。<レポート:髙橋 明/Akira Takahashi>