2017年8月31日、コンチネンタル・オートモーティブは、市街地での仕様を想定した電動の無人運転タクシーの試作車「CUbE」を使用し、ドイツ・フランクフルトで実証実験を開始したと発表した。
都市への人口集中は増加の一途をたどっており、2014年の国連調査によれば2050年までに世界の人口の3分の2が都市に集中すると予想されており、そうした都市部でのクルマの運転は大きな負荷となる。例えば2016年のロンドンにおけるクルマの平均速度は12.5km/hで、こうした環境では交通事故、排出ガス、時間のロス、駐車場問題と、ドライバーはもちろん社会のストレスは極めて大きい。
また都市部では1日のうち平均で23時間もクルマは駐車したままで、貴重なスペースを占領する無数のこうした自家用車より、無人運転車を利用するほうがはるかに合理的と考えられる。
ドイツ・ベルリンでは、約350万人の市民が移動に費やす時間は1日あたり平均で70分と言われているが、この移動には公共交通機関などのあらゆる輸送手段を含んでいる。またベルリンでは、自家用車は短距離の交通手段に過ぎず、その結果1日の大半が駐車中なのだ。また自家用車で移動時に乗車している人数は平均で1.3名で、ベルリン市民による1日の平均移動距離は合計で20.2km(1日あたり平均3回の移動を合計)。都市部の自家用車を大幅に減らためには、いつでも呼び出せるロボットタクシーが理想的なソリューションと位置付けられる。
巨大都市化が進む世界で、モビリティが根本的な変化を遂げようとしている。テクノロジーカンパニーのコンチネンタル社は、自動化、新たなモビリティコンセプト、電動化のノウハウを生かし、未来の都市交通と都市部での生活の質的な改善に向けた対策を開発しているのだ。
コンチネンタルの取締役会メンバーで、シャシー&セーフティ部門を率いるフランク・ヨーダン氏は「将来の都市部におけるパーソナル・モビリティは自動運転化が進み、電動化され、共有という概念が一般化するでしょう。我々が無人運転のロボットタクシーのために部門の垣根を越えたソリューションの開発に取り組んでいる理由はここにあります。今回は自社製のセンサー、アクチュエータ、制御ユニット、通信やネットワーキング技術を使用して無人のロボットタクシーの実践的な試験を開始します」と語る。
■2030年に無人運転車は25%になる
コンサルティング会社ローランド・ベルガーの調査によると、2030年までに輸送サービスにおいては無人運転車が25%に達すると予想されており、、コンチネンタルが「セルフドライビングカー(無人運転車)」と銘打った全社的開発プロジェクトをスタートするきっかけとなっている。
コンチネンタルは、特に都市部での使用を想定した無人運転モビリティのためのデモ車両、CUbE(Continental Urban mobility Experience)を製作した。このCUbEは、コンチネンタルの拠点であるフランクフルトで試験走行を開始し、拠点内は、市街地と同様の道路標識、交差点、横断歩道や縁石など典型的な都市インフラを備えており、リアルワールドので試験に匹敵する最適な条件を備えているという。
この車両に用いられている技術は、量産車両にもすでに採用されている運転支援システムやセンサーをベースにしているが、レーザースキャナーなどの新技術も採用されている。コンチネンタルは、これらの技術に関する知見をベースに、車両を完全に自律制御するためのシステム開発をさらに進めて行く。
この「セルフドライビングカー」プロジェクトの責任者はアンドレ・ホーム氏は、「これらの試験走行を通じて、都市部での無人運転型の安全な旅客輸送を可能にする、さまざまな技術要件を把握できます」と語る。
現在、コンチネンタルはロボットタクシー向けの冗長ブレーキシステム設計とセンサー類のプラットフォームの構成最適化に取り組んでいる。
無人運転カーに向かうトレンドは、車両のインテリアにも大きな影響をおよぼすことになる。「未来のクルマは単なる移動手段ではなくなります。プライバシー、リラクゼーション、コミュニケーション、仕事に焦点がよりシフトしていくでしょう。したがって、インテリアの目的も将来は異なってきます。人々は運転以外のことをするようになるからです。」とコンチネンタルのコンチテック部門で表面素材事業開発・マーケティングの責任者を務めるアレクサンダー・ヨキッシュ氏は語る。
将来は、デザイナー、エンジニア、スタイリストの創造性と革新性がより求められるようになり、カスタマイズ、デザインの自由度、カラーデザインといったオプション、透明な表面素材に照明を組み込むなどの機能統合が内装材に求められるというのだ。
なお、コンチネンタルは、フランクフルトモーターショー期間中に、このCUbEのデモ走行を行なうとしている。