2017年6月16日、コンチネンタル・オートモーティブ・ジャパンは電気自動車や自動運転に欠かせないコネクテッドカーの実現に向けたさまざまな車載通信の取り組みについて、同社のインフォテインメント&コネクティビティ事業部の責任者、ヨハン・ヒーブル上級副社長が出席し事業戦略をプレゼンテーションした。
■車載通信の規格は4G LTEから5Gに
コンチネンタルのコネクティビティに対するビジョンについて、自動車の世界では物流のコストを大きく低減する自動運転や電動化といった動きに合わせ、車載常時接続技術(コネクティビティ)が重要なテーマになると位置づけている。
今回のプレゼンテーションでは「包括的コネクティビティ」という言葉が使用されたが、その意味はクルマがインフラと繋がるだけではなく、スマートフォンなどを持ち歩いている歩行者(V4P)や他の車両(V2V)ともつながりを持つことだという。つまり社会・道路インフラとの接続、車両と車両の接続、車両と歩行者との接続といった幅広い通信接続を構想しているのだ。
コンチネンタルは買収したモトローラ社が手がけてきた20年以上の車載通信に関する歴史を持っている。2016年には4G LTEに対応した通信車載モジュールを初めて導入し、現在ではNTT docomoと共同して次世代の5Gの通信技術の開発にも着手。5月に開催された「人とくるまのテクノロジー展2017」で会場と遠隔地の5G回線によるリアルタイム映像通信をデモンストレーションした。
もちろん5Gはスマートフォン用の次世代技術だが、車載通信モジュール用に自動車規格としてのタフさや信頼性が求められるため、コンチネンタルは車載通信モジュール開発に取り組み、2020年頃に5G対応ユニットを市販化する予定だという。
5G通信では、遠隔地との映像送受信などの大容量通信でもほとんど通信の遅延現象がなく、スムーズに大量のデータをやりとりすることができるのだ。
またコンチネンタルは5G通信の一歩先の技術として、静止衛星による通信を展開しているインマルサットと共同で衛星通信技術の開発も行なうとしている。アメリカを筆頭に国土の広大な国では、携帯電話の通信網が完備されず、走行中の通信途絶が生じたり、通信会社が違うためにローミングが必要となるなどの課題がある。
こうした携帯電話用の通信の課題を解決できるのが静止衛星通信で、グローバルに通信をカバーでき、自動車メーカーも各国の多様な通信規格や通信キャリアに適合させる労力を省くことができるのだ。コンチネンタルは2021年頃にはこのインマルサット通信の実用化が行なわれると見込まれている。
■常時接続によるECUのソフトウエア・アップデート(OTAアップデート)
コネクテッドカーの導入により各種のサービスが実現しているが、例えば自動車メーカーも積極的に取り組んでいるのが、通信システムを使用して車両のECUのデータをアップデートする「OTA(オーバー ジ エアー)アップデートだ。
コンチネンタルはすでに2005年から車載インフォテイメント・システムの通信によるファームウェア更新をスタートさせ、現在では自動車メーカー7社の9製品に技術を提供している。
このOTAアップデートは走っている車両でも各種ECUのプログラムデータを上書き更新することができ、自動車メーカーにとっては、従来は個々のユーザーに告知し販売店にユーザーのクルマを受け入れてECUデータを更新するという作業だっただ、その作業から解放されるためメリットは大きい。なおすでにテスラは車両ECUの無線通信による更新を採用しているが、テスラは充電のために停止中の間に更新するが、コンチネンタルのOTAアプデートは走行中でも更新できる点がポイントだ。
■車車間通信、歩行者との通信(V2X)
この他に、コンチネンタルは車両間の通信、車両と歩行者とのDSRC、LTE、5G通信など「V2X」、つまりITS技術にも積極的に取り組んでいる。日本でも国交省や通産省などとのコンソーシアムに積極的に参加しているという。そして2018年初頭からLTEによるV2X、5Gによる実証実験を開始する予定だという。
ITS技術として各国で検討されている車車間、路車間の通信を行なうDSRC(双方向・専用狭域通信)は規格がバラバラの状態だが、いち早く中国が導入すると見られている。
いうまでもなくこうした車両と社会・道路インフラとの通信、車車間通信、車両と歩行者との通信は、今後の自動運転に向けての必須技術と位置づけられており、今後は政府、サプライヤー、自動車メーカーを含めた実用化に向けての取り組みが期待されている。