コンチネンタル 「Tech Ride 2016」 最新技術の運転支援システム開発車に試乗

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ブラインドゾーンから現れる横断車両に自動ブレーキを作動させる「フロント・クロストラフィック緊急ブレーキ」

2016年9月14日、グローバル自動車サプライヤーのコンチネンタル・オートモーティブが恒例の試乗イベント「TechRide」を同社の千葉県・旭テストコースで開催した。

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プレゼンテーションを行なったコンチネンタル・オートモーティブ・ジャパンのクリストフ・ハゲドーン社長

今回は、技術プレゼンテーションとして、今後のパワートレーン戦略、ヨーロッパをベースに開発している車車間・路車間通信(V2X)、コンチネンタルタイヤのタイヤの磨耗状態を車両に伝えるタイヤ情報システム、コンチネンタルが2015年5月に買収したドイツのエレクトロビット・オートモーティブ社の紹介が行なわれた。

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車車間で通信することで危険を回避するV2Xの車載通信ユニット

エレクトロビットは、高度運転者支援システムやインフォテインメントシステムといった複雑な車載機能向けのソフトウェア開発の専門会社で、同社の車載ソフトウェアはドイツ製のクルマのスタンダードとなっているほどメジャーな企業だ。こうしたソフトウェア開発部門を充実させたことで、コンチネンタルは次世代先進技術を開発するためのリソースが全方位的にスタンバイできたといえる。

■プロトタイプ車に試乗

◆レーンキープ・アシスト&渋滞時自動追従アシスト
単眼カメラ+ミリ波レーダーという現在ではシンプルなセンサーを使用して、先行車に追従し車線内を維持するように操舵アシストを行ない、渋滞している状況では、前車に追走して自動的にアクセル、ブレーキ、ステアリングを操作してくれるシステムだ。

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単眼カメラ+ミリ波レーダーで、前車自動追従、レーンキープ・アシストを行なう。渋滞時も前車自動追従が可能
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車線中央をキープするレーンキープ・アシストとアダプティブクルーズ・コントロールを作動させている状態

今後は多くの車両に採用される予定のシステムで、シンプルなセンサーで高機能を目指している点がポイントだ。カメラは車線を認識する役割がメインで、渋滞追従状態で車線が薄くなったり途切れた場合は、前走車を認識して追従するようになっている。加速やブレーキ、ステアリングの自動操作は乗員が違和感を感じないように自然な作動が特徴だ。

◆横方向からの自転車の飛び出しに対応した自動緊急ブレーキ
2018年頃にユーロNCAP試験に追加されると予想される試験項目に対応したシステムだ。路肩に駐車したクルマの影から横方向に飛び出してくる自転車を検知して緊急ブレーキを作動させる。したがってドライバーからは前もって自転車の飛び出しが予測できない状況でのシステム作動がカギとなる。

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見通しの効かない物陰から飛び出してくる自転車に対応して自動緊急ブレーキが作動。画面中央のカメラ画像でも自転車は認識されている

ユーロNCAPの試験方法はまだ確立されていないため、今回は自車が30km/hで進行し、クルマの陰から5km/hのダミー自転車が飛び出すという設定でデモンストレーションが行なわれた。クルマの陰になって見えない自転車を検知するのは現在では広角ミリ波レーダーを使用し、飛び出した自転車と衝突しないように最大1.0Gの緊急ブレーキをかける。

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飛び出してきた自転車との衝突を寸前で自動ブレーキで回避

テスト車はミリ波レーダーが自転車を検知して自動ブレーキが作動するシステムだが、このテスト車には単眼カメラも搭載されており、そのカメラ画像でも自転車は検知されていた。今後はレーダーとカメラの併用、あるいは単眼カメラだけでテストをクリアできる可能性もある。

いずれにしてもこれで、歩行者の飛び出しだけではなく自転車の飛び出しにも自動ブレーキが対応できることことになり、市街地走行での安全性の向上はさらに進化する。なお、自車と同方向に走る自転車にはまだ未対応だという。

◆塀に遮られた交差点で右方向からのクルマの飛び出しに対応する自動緊急ブレーキ
交差点の右角に大きな建物や塀がある場合、あるいは大型トレーラーが位置している場合、ドライバーはその方向を見通すことができない。そのブラインドゾーンからクルマが飛び出してくる状態での自動緊急ブレーキのデモンストレーションが行なわれた。この「フロント・クロストラフィック緊急ブレーキ」はユーロNCAPで2020年頃に導入される試験項目と予測されている。

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見通しの効かない交差点で右方向から来るダミー車との衝突を自動緊急ブレーキで回避

テスト車には24GHzの超広角ミリ波レーダーが装備され、クリープ状態で交差点に進入する。右から来る約20km/hのクルマをレーダーで検知し、衝突寸前で自動ブレーキを作動させるというシステムとなっている。日本で多く見られるこうした交差点で運転支援システムが作動するかどうか今後の大きな課題だが、こうしたシステムが実現することは重要だ。

◆自動パーキング
完全無人状態で自動パーキングするシステムはすでに市販化されているが、それらの超音波センサーを使用したシステムとは異なり、コンチネンタルは車両の前後左右に設置した4個のカメラにより360度の画像を生かし、枠線を検知して自動パーキング、リモート・パーキングができるのが特徴だ。

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自動リモートパーキングのデモ。スマートフォンの画面で駐車を指示すると無人で枠内に駐車を行なう

超音波センサーを使用したシステムでは、前後・左右に駐車している車両が枠線に対して正確に駐車していない場合は自車もその車両に合わせた駐車位置になるが、コンチネンタルのシステムは枠線の中央に正確に駐車できる。もちろん、駐車スペースを画像で検知すると自動駐車のための運転計画が生成され、何回も切り返し操作を行なうようなぎりぎりのスペースでも自動駐車できる。

◆ドラムブレーキ用の電動パーキングブレーキ
電動パーキングブレーキはリヤ・ディスク・ブレーキの車両に採用されているが、リヤがドラムブレーキの、つまり低価格車用の電動パーキングブレーキも披露された。

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ドラムブレーキ用の電動パーキングブレーキを装備して坂道発進。作動は従来のディスク用の電動パーキングブレーキとまったく同じ

低価格車向けのシステムのため、ドラムブレーキに外付けする形でモーターと駆動ギヤユニットを付加し、ギヤの回転によりドラムのシューをワイヤーで作動させるという簡素なシステムとなっている。作動は、従来のディスブレーキ用の電動パーキングブレーキとなんら遜色がない状態に仕上がっている。

◆ハイブリッド車用のブレーキシステム
ハイブリッド車用のブレーキは、モーターによる回生ブレーキと最終的に停止するための油圧ブレーキの協調制御が必要で、制御が複雑になるためブレーキバイワイヤー、つまり電子制御の専用ブレーキが使用されている。

コンチネンタルの新たな提案は、ブレーキバイワイヤーではなく、従来のESP用の油圧ブレーキ用の電動ポンプをそのまま使用し、ハイブリッド車の減速状況、つまり回生ブレーキの強さに合わせてブレーキ油圧を可変制御するという、いわばソフトウエアを生かした、よりシンプルで低コストのブレーキシステムだ。

ブレーキペダルから検知した減速の意思に対して、回生ブレーキが強い場合は油圧を抑え、回生ブレーキが弱まると油圧を高め、最終的には油圧ブレーキで停止する。要求減速力に合わせた油圧のかけ方の制御がポイントになっている。

◆タイヤ磨耗検知システム(eTIS)
コンチネンタルは従来からタイヤ空気圧センサー・システムでは大きなシェアを持っているが、従来のバルブ部にセンサーを設置するのではなくトレッド部内側にセンサーを配置するシステムを開発している。

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トレッド内側のセンサーで空気圧、荷重、回転を検知。磨耗状態のモニターも可能に

このシステムではタイヤの空気圧、荷重だけでなく動回転半径の変化を検知して磨耗状態を検出することもできるのだ。現在のところ+-1mmという精度でタイヤの磨耗を検出し、あらかじめ設定された磨耗限度に達するとドライバーに警告することができる。

◆レベル3自動運転車向けのHMI
現在、各国が実現を目指しているレベル3の高度運転支援システムは、高速道路、自動車専用道路でのハンドル手放しによる自動運転だ。この場合、ドライバーは周囲の交通環境を監視している義務があるが、ドライバーが監視していない状態、あるいは自動運転ができない環境では直ちに手動運転に切り替えることが求められる。

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フロントガラスの下端のブルーのLEDライトが自動運転が作動していることを示す。システム・スタンバイ、システム・キャンセルなども発光色で示す

そのため、レベル3の運転システムでは、自動運転と手動運転の切り替えの直感的な意思確認、あるいはドライバーが運転できない状態では、自動運転がキャンセルされて自動的に停止するといった制御も必須となる。

コンチネンタルはすでに日本の道路でも1万5000km以上の自動運転実証試験を行動で行っているが、自動運転の技術だけではなく、こうした人間とクルマのシステムとのインターフェース(ヒューマン・マシン・インターフェース=HMI)の開発も行なっている。

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ドライバーモニターカメラにより、ドライバーが正常かどうかを運転姿勢、目の開閉状態で検知

テストカーでは、ドライバーの顔、目の位置や目を閉じているか開いているかを検知するドライバーモニターカメラや、自動運転システムの稼働が可能な状態、あるいは稼動している状態などを示す大型のLED照明装置を装備していることが披露された。

これにより、レベル3の自動運転がスタンバイ、あるいは作動中、自動運転ができない状況、ドライバーが居眠りなど手動運転ができない状態など、そのときの状況をシステムとLED照明により、直感的に分かるHMIの装備で実現する。この点では、レベル3の部分自動運転の実現を目指している自動車メーカーより、世界各地で公道実証実験を先行したコンチネンタルが一歩先を行っている証明ともいえる。

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すでに1万5000km以上の公道走行を経験しているコンチネンタル・オートモーティブの自動運転実証実験車

今回のコンチネンタルがデモンストレーションした先進技術は、いずれも高価なセンサーを使用せず既に量産されているセンサーを使用しながら、より高機能化を目指していることが特徴で、これは言い換えればより幅広い量産車をターゲットにしていることがわかる。

コンチネンタル・ジャパンのクリストフ・ハゲドーン社長は、数年で売り上げを2倍にすることを計画している。高度運転支援システムの技術は、競合他社や自動車メーカーも開発を行なっているが、より低価格で各コンポーネントを統合制御するシステムを持っていることがコンチネンタルの強味である。

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