【コンティネンタル】Japan TechRide 2013 市販モデルに採用直前の最新技術を体験

コンティネンタル・オートモーティブ社の旭テストコースで行なわれた「Tech Ride 2013 」

2013年9月5日、世界的な自動車部品サプライヤーである「コンティネンタル・オートモーティブ」のメディア向けイベント「Japan TechRide 2013 」が開催され、同社のテストコースで、市販モデルに採用直前の最新技術を体験してきた。

「コンティネンタル」は日本ではヨーロッパ車用のタイヤメーカーとして知られているが、実は同社はタイヤ部門が30%で、その他の70%はシャシー部品、シャシー電子制御、パワートレーン、ハイブリッド用部品、シートやメーター類などインテリアパーツを開発・製造して自動車メーカーに供給する巨大サプライヤーである。

現在は世界で46ヶ国、291拠点を持ち、もちろん日本にもテストセンターから工場まで展開している。現在では日本の自動車メーカーにもESC(横滑り防止システム)、レーザーレーダー/ミリ波レーダーを使用した衝突防止自動ブレーキシステムなどを納入しているのだ。

コンティネンタル・オートモーティブ日本のパワートレーン部門の日本&ASEAN地域担当・田中昌一上級副社長(左)とシャシー&セーフティ部門の日本・韓国地区代表を兼任するハゲドーン社長

TechRideのレポートをする前に、コンティネンタル・オートモーティブの最先端技術について、今、最も注目を浴びている「クルマの完全自動運転」に触れておきたい。

現在、コンティネンタル・オートモーティブ社の技術の方向性は、一つは自動運転化であり、もう一つが車両の電動化技術とそれに伴う周辺部品の開発だ。そして、先進技術「クルマの完全自動運転」コンセプトを推進していることで注目されている企業なのだ。同社は、既存の衝突回避技術を組み合わせた高度自動運転車をすでに試作し、ネバダ州の「自動運転車テストライセンス」 を取得して実走行を行なっている。これは公道での自動運転車の走行について、ネバダ州のDMV(自動車登録免許管理局)から初めて承認を受けたものである。また、テストライセンスは自動車の将来を表す「無限大」シンボルをつけた赤いライセンスプレートをVWパサートに装着し、開発が進められている。

この試作車は完全な自動運転ではなく、法的な枠組みに適合させて、ドライバーは後方やモニターを注視する必要がある高度自動運転というレベルだ。仕組みとしては、すでに市販している前後に2個ずつ、合計4個の短距離レーダーと、1個の長距離レーダー、ステレオカメラを組み合わせ、低速かつシンプルなシナリオでの部分的な自動運転カーとしている。このシステムを発展させた高度自動運転技術は2020年に市販レベルに、そして、完全自動運転は2025年までに生産準備を整えるとしている。

もちろん、この「完全自動運転コンセプト」は自動車メーカーにも大きな影響を与えている。例えば日産は、2020年までに同社の複数の車種の自動運転を実用化することを発表した。また、同社は長年、マサチューセッツ工科大学(MIT)、スタンフォード大学、オックスフォード大学、カーネギーメロン大学、東京大学など世界の大学と共同で自動運転技術の研究を行なっていることを明らかにしている。さらに自動運転開発専用のテストコースを建設中で、2014年度中には完成する予定だという。

電圧48Vの発電機/駆動モーター、48Vリチウムイオンバッテリー、DC-DCコンバーターで構成される「48Vエコドライブ」。従来の12Vシステムより強力な減速回生が得られ、48Vモーターによるベルト駆動アシストを行うマイルドハイブリッド。簡易なシステムで低コスト。しかも大幅な燃費向上を目指しドイツの自動車メーカーと共同開発中。2016年には市場導入の予定。

コンティネンタル社のもうひとつの柱であるクルマの電動化に伴う技術開発では、今回は試乗車はなかったが、フランクフルトショーに出展された「48Vエコドライブ」構想を始め、様々な電動化技術が開発されている。「48Vエコドライブ」は48V対応のオールタネーター/モーター、小容量のリチウムイオン・バッテリー、DC-DCコンバーターから成る減速エネルギー回生/ベルト駆動式マイルドハイブリッドで、これにより約13%の燃費向上が実現するという。その他ではより高電圧の本格的なハイブリッド関連ユニットの開発、電動化に伴うブレーキシステムなど多岐にわたる開発が行なわれているのだ。

さて、今回試乗のためにテストコースに用意されたのは、スバル・レガシィ、BMW 325i、アウディQ5ハイブリッド、江西・昌河鈴木汽車製の北斗星(1.4Lエンジン搭載のワゴンR)、ゴルフ7ハイライン、フォードC-MAXハイブリッド(2.0L・直列4気筒ガソリンエンジンに+モーター)の6台。いずれもすでに販売されているモデルだが、日本では見ることも乗ることもできない鈴木・北斗星やフォードC-MAXハイブリッドなどは珍しい存在だ。

今回は車の試乗そのものが目的ではなく、それぞれのクルマに搭載されているコンティネンタル社の試作品や市販システムを体験するものだ。

マニホールドの低負圧対策としてマスターバック用に電動バキュームポンプを装備したレガシィ
レガシィのエンジンルーム。オルタネーターの右側に装着された電動バキュームポンプ

 

 

・スバル・レガシィ:アイドルストップシステムの普及により、従来のマニホールド負圧を利用するブレーキのバキュームブースターが負圧を確保するのが難しくなりつつある。その解決策として提案されるシンプルな電動バキュームポンプが装着されていた。この場合、電動ポンプをどこに装着するかにより、キャビンに到達する作動音、振動が異なる。現状ではエンジン部にブラケットを介して取り付けるのがベストという。

障害物直前で自動ブレーキで停止するBMW325i
カメラ、レーザーレーダー一体型ユニットを装備

 

 

・BMW 325i:赤外線レーザーレーダーとシングルカメラを一体化させたシンプルな構成の衝突回避オートブレーキの試作品を装備。市街地など比較的低速域での衝突回避を目的としたもので、コスト的にも車両適合性が高い。なおこのシステムは、カメラにより人間も検知可能であることが特徴で、対応速度は40km/h。

コンティネンタル製パワーコントロールモジュール、TCUを採用しているアウディQ5ハイブリッド
コンティネンタル製パワーエレクトロニクスモジュール

 

 

・アウディQ5ハイブリッド:アウディQ5ハイブリッドにはコンティネンタル社製のインバーターとDC-DCコンバーターの一体化ユニット、トランスミッション内蔵のTCUが採用されている。これはすでに市販版だが、このユニットの特徴はモジュール設計による汎用性が備えられていることで、電気自動車からハイブリッド車まで、電圧は85V~400V、モーター出力75kWまで幅広く適合できる設計になっているのだ。言い換えれば専用品より量産規模が大きく、低コスト化できていることが最大の特徴で、専用設計品より競争力が高いのが特徴となる。

・昌河鈴木汽車「北斗星」:スズキのワゴンRをベースにした中国・昌河鈴木汽車による現地生産車で1.4Lエンジン/5速MTを搭載した中国での市販モデル。試乗車は上海から送られたものだ。このクルマはコンティネンタル社がエンジン制御全体の開発から制御ユニットの供給までを担当している。低コストの制御ユニット(Easy-Uエンジンコントロールユニット・ファミリー)は汎用設計を前提に、個別の車種ごとにチューニングを行なうシステムになっている。中国市場向けのチューニングが施された試乗車は、アクセルの踏み込みに対してよりダイレクトにトルクが出るようになっているのが興味深い。

レーダークルーズコントロールにより前車に追従するゴルフ7

・ゴルフ7ハイライン:このクルマは市販モデルそのもので、コンティネンタル社製のレーダー式フロントアシスト・プラスが装備されている。衝突防止&軽減というシティエマージェンシーブレーキ機能で、全車速域で前方の車両との衝突が予測される場合に、警告し、さらに最終段階では自動ブレーキが作動する機能、そしてレーダーを使用した全車速追従オートクルーズ機能を併せ持っているものだ。またこのシステムは自動ブレーキの作動時やクルーズコントロール時の加速フィールなどが、運転状態のセンシングから、滑らかさ、静粛さ、違和感のなさといったものがアピールポイントとなる。
 

フル電動ブレーキ「MKC1」を装備したフォードC-MAXハイブリッド。きわめて自然でコントロールしやすい

C-MAXハイブリッドのブレーキフィールを体感

 

・フォードC-MAXハイブリッド:フォードC-MAXハイブリッドはアメリカ市場で販売されているモデルで、フォーカスをベースにしたMPV「C-MAX」のハブリッドバーションで、プリウスを凌ぐ燃費で高い評価を得ている。このC-MAXハイブリッドには、コンティネンタル社が開発したプロトタイプの電動ブレーキ(ブレーキバイワイヤー)「MKC1」を装着している。ブレーキペダルの踏み込みを検知して電動モーターでブレーキ油圧を発生すると共にブレーキペダルに擬似的なフィーリングを作り出すこと、そして回生ブレーキとの協調制御も行なう先進ブレーキシステムで、近い将来のブレーキシステムの主流になると想定されているものだ。同様のシステムはすでに日本のサプライヤーでも製造・市販採用されているが、このコンティネンタル製は回生ブレーキとの協調制御の自然なフィーリング、ペダルに与えられる疑似フィーリングなどで言うことなしという仕上がりになっていた。

ブレーキ回生協調制御式のフル電動ブレーキ「MKC1」

次世代の標準ブレーキとなるポテンシャルを持つ

 

 

今回のプレゼンテーション、試乗などを通じて、改めてワールドワイドなティア1サプライヤーのテクノロジーコンセプトや先進技術の開発力が実感でき、今後はますます自動車メーカーにとって欠かすことのできないパートナーだということが認識できた。

 

コンティネンタル オートモーティブ日本公式サイト

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