ブリヂストン 人工合成ゴムに成功 次世代タイヤの材料本命か?!

ミクロ構造
ポリイソプレンゴムのミクロ的分子構造。弾性を持つ「シス」構造が多いほど天然ゴムの物性に近づく

2016年12月16日、ブリヂストンは同社中央研究所で開発した新しい重合触媒(ガドリニウム触媒)を使用し、分子構造を最適に制御し、天然ゴムの物性に近似するポリイソプレンゴムの合成に成功したと発表した。

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技術発表を行った迎宇宙・中央研究所所長(左)と会田昭二郎・中央研究所フェロー

■人工合成ゴムを開発する理由

合成に成功した人工合成ゴム(ポリイソプレンゴム)は、天然ゴムを凌駕する性能を持つ次世代ゴムの実現につながる可能性がある。また、ポリイソプレンゴムは従来は石油から生成されるナフサから製造されるが、原料に再生可能資源であるバイオマス由来のイソプレンを使用することで可能性が高まり、環境適合性の高い材料になることが期待されている。今後、実用プロセスの条件検討、安定的なイソプレンの確保の検討を進め、2020年代の実用化を目指すという。

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タイヤの材料構成。天然ゴムは不可欠の重要な材料
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天然ゴムの代替となる人造ゴム「ポリイソプレンゴム」は物性で天然ゴムに及ばないとされてきた

天然ゴムはタイヤなどゴム製品に欠かせない重要な材料で、合成ゴムに比べ強度・摩耗性能や補強材との接着性能が優れるタイヤの重要な原材料と位置付けられるが、生産は東南アジアの熱帯雨林でのプランテーション農業に依存しており、単一地域のみでの生産であることや病害などのリスクを抱えている。この研究は、こうした天然ゴムと同等以上の物性を持つゴムを人工的に合成し、原材料の安定供給化を目指す目的で行なわれている。

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新開発のガドリニウム重合触媒を使用し、原料のイソプレンから天然ゴムに近似するポリイソプレンゴムを実現

■量産実用性のある人工合成ゴム

従来の人造ポリイソプレンゴムは天然ゴムに近いものの、天然ゴムの物性に及ばなかったが、ブリヂストン中央研究所で新たに開発した希土類レアアースの「ガドリニウム(Gd)」重合触媒を使用することで分子構造が天然ゴムに極めて近い(シス率99.0~99.9% 天然ゴムは100% シス率とはゴム物性の結合分子)、しかも天然ゴムや従来の合成ゴムよりも分子量のばらつきを小さくすることに成功した。

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またガドリニウム重合触媒は、従来は0度C以下でしか使用できなかったが、今回の開発により40度C以上という高温で触媒効果を得ることができ、触媒効果は従来より600倍も高く、量産実用性を備えていることも大きな特徴だ。

性能
新ポリイソプレンゴムを使用したタイヤ材料による性能評価で天然ゴムを上回る低ヒステリシスロスと強度を達成

さらに今回合成したポリイソプレンゴムを用いてタイヤ材料を作成し、性能評価を行なったところ、耐破壊物性と低燃費性能(ヒステリシスロス)において天然ゴムを用いたタイヤ材料よりも優れた性能を示すことが確認できた。

今後は、製造を担当する合成ゴムメーカーと協働して、量産化技術の開発を行ない、タイヤに使用されるのは2020年頃が見込まれている。

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