廃タイヤから新品タイヤへ。ブリヂストンが目指す「水平リサイクル」

ブリヂストンは2022年10月20日、使用済みタイヤをカーボンニュートラルと資源循環の観点からタイヤをリサイクルことでタイヤ原材料に戻し、ニュータイヤとして生循環させる「水平リサイクル」を目指すリサイクル・プロジェクトをメディア向けに紹介した。

現在、日本国内の使用済タイヤの回収率は約94%と高く、そのほとんどは粉砕されてボイラーで燃焼させて熱エネルギーとして回収するサーマルリカバリーが行なわれているが、この場合はCO2の発生量が多いという大きな課題があり、当然ながらタイヤの材料として回収されることはない。

そのため、今後の課題は、使用済みタイヤをリサイクル処理して、タイヤ材料として回収するマテリアルリサイクル(資源再利用)、つまり水平リサイクルを実現することだ。

今回は、リサイクルの専門家の叡啓大学特任教授・神戸大学名誉教授の石川雅紀教授が水平リサイクルにより循環型社会を構築することの重要性を解説した。日本における水平リサイクルの象徴が、ドリンク類のアルミ缶を回収してアルミ缶へと再生させている事例が挙げられた。さらにその後はペットボトルの回収、リサイクルも実現しており、このペットボトルのリサイクル率では日本は世界の中でトップランナーになっている。

石川教授は、2050年までにカーボンニュートラル社会を達成するためには、こうした製品を回収し、その素材により製品を製造するという水平リサイクルの取り組みが大きく貢献するとしている。その背景には、回収した製品を燃焼させるサーマルリカバリーではCO2の発生量が多く、今後はCO2課税(炭素税)が課せられると熱エネルギー回収のメリットがなくなることが想定されるからである。

叡啓大学特任教授・神戸大学名誉教授の石川雅紀教授
ブリヂストン リサイクル事業準備室長 岸本一晃氏
ブリヂストン 先端材料部門長 大月正珠氏

そしてブリヂストンのリサイクル事業準備室長:岸本一晃氏と、先端材料部門長:大月正珠氏が同社の基本保身や具体的な取り組みを紹介した。

ブリヂストンは、今後はタイヤを製造、販売するだけではなく、使用済みタイヤをタイヤ原材料に戻すリサイクル事業も構築させ、「作って売る」「使う」「戻す」の3つの事業を循環させることで、タイヤ・メーカーとして持続的に供給が継続できることを目指している。

今後大きな課題となるリサイクルについて、今年4月に「EVERTIRE INITIATIVE(エバータイヤ イニシアチブ)」活動をスタートさせ、リサイクルを目指し、コラボレーションするパートナーとプロジェクトを推進していくという。

現在の日本では使用済みタイヤの回収率が約94%と高く、セメント工場、製紙工場、電力会社などで使用済みタイヤを燃料に使用して熱エネルギーとして再利用するサーマルリカバリーが約70%を占め、アスファルト、パッキンなどほかのゴム製品として再利用するマテリアルリサイクルが約20%程度である。

つまりサーマルリカバリーの割合が非常に多いため、資源循環の観点で高い回収率を生かし、使用済みタイヤの原材料へのリサイクル、すなわち水平サイクルが重要なテーマとなっているのだ。そのため使用済みタイヤを、タイヤとして再利用できる、タイヤとして再利用できないが原材料のゴムとして別の製品に転用する、タイヤを分解して別資源として再利用するものなどに分類し、石油を使用しないで新たなタイヤを作ることを目指すことになる。

しかし、タイヤを分解してタイヤの原料として回収することがかなりハードルが高い。タイヤのゴムは、天然ゴム、石油由来の合成ゴム、カーボンブラック、シリカ、配合剤などと、タイヤ構造を構成するスチールワイヤーやナイロン繊維などから成る複雑な構造物のため、ゴムだけでもナノレベルまで分解してしまうと、同じレベルの性能が得られず、タイヤとしてリサイクルすることは難しい。これらを前提に、原材料レベルまで分解したものをきちんと用途別に分けてタイヤ製造に再利用できるようにすることが大きなテーマとなっているのだ。

さらに課題はリサイクル技術の面だけではなく、使用済みタイヤの回収から原材料に戻すまでのリサイクル・システムの構築には、多くのサプライチェーンとのコラボレーションが不可欠となっている。

現時点では、タイヤの原材料となるブタジエンや再生カーボンブラックを生み出す「精密熱分解」によるケミカルリサイクル、イソプレンや再生カーボンブラックの生成を目指す「低温分解解重合」による高収率リサイクル方法などが実用化しつつあるが、いずれもパートナー企業との連携で実現している。

今後は、こうした水平リサイクルをより幅広く実現するため、多くの企業とのコラボレーションが求められているわけである。

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