2016年1月8日、ブリヂストンからニュー・ブランド「Playz PXシリーズ」が発表された。じつはPlayzというブランド名は過去に、ふらつきが発生しにくい、運転が楽になるタイヤ「PZ-1」として2005年に登場している。このブランドは、従来からある低燃費、コンフォート、あるいはスポーツという価値観とは別に、ドライバーの負担が少ない=「楽」という新たな商品価値を訴求している。しかし、その後2012年にエコピア・ブランドに統合されている。<レポート:松本 晴比古/Haruhiko Matsumoto>
今回登場した「Playz PXシリーズ」は、Playzブランドとしての再挑戦となる。そのコンセプトには、ドライバーのストレスが少なく疲れにくいという新たなコンセプトを打ち出してのトライとなるわけだ。
ストレスが少ないとは、思い通りに曲がる、曲がる時のふらつきが少ないということだ。この新しいPlayz PXシリーズを使ってさまざまなテストし、そのストレスを計測。その結果、レーンチェンジなどでのストレスが少ないことが実証されたという。
具体的には、カーブやレーンチェンジでハンドル操作の量が少なく、思い通りのハンドリングができること、レーンチェンジでクルマのふらつきが少なく修正舵も少ないといったことを狙っているのだ。
Playz PXシリーズは、もちろんスポーツ性能を追求したハイパフォーマンス系のタイヤではなく、低燃費タイヤのエコピアと同レベルの低転がり抵抗、ウエットのグリップ性能を実現しており、ラベリング制度で転がり抵抗係数は「AA」または「A」、ウエット性能は「a」または「b」を達成している。
そればかりではなく、エコピアより10%以上、耐磨耗性は優れているのだ。このために、微粒シリカの増量、シリカやカーボン粒子を最適にゴム内に分散させる分散性向上剤を使用するなど材料面でも最新の技術を導入している。
つまりエコタイヤの技術をベースにしながら、ハンドリングが優れ、ドライバーのストレスが少ないタイヤを目指しているのが重要なポイントである。
タイヤ本体の構造は、左右非対称形状、ラウンドショルダー形状、高剛性ショルダーブロック、そして有機樹脂製の補強ベルトなどを採用している。PSタイヤ開発第5部の山口渉部長は、「とにかく接地性にこだわり、ステアリング応答をよくしました」と語っている。
この点はタイヤとしての基本ポテンシャルの部分であるが、エコタイヤの技術と両立させることがテクノロジー的に最もハードルが高かったわけだ。ではいよいよ試乗テストをレポートしよう。
この新しいPlayz PXシリーズの試乗会がブリヂストンのテストコースで行なわれた。もちろん、PXシリーズのセダン/クーペ用のPX、ミニバン用のPX-RV、コンパクトカー/軽自動車用のPX-Cの3種類を試乗した。
テスト車両はPXがレクサスCT200h、ミニバンはセレナ・ハイブリッド、軽自動車はムーヴで、それぞれでコントロール・タイヤ(基準タイヤ)となるエコピアEX20装着車とPXシリーズ装着車を比較するという形でのテストだった。テストメニューは高速走行と高速レーンチェンジ、高速ハンドリングコース、そしてウエット路で2種類のタイヤを比較する。
まず、セダン/クーペ用のPX、ミニバン用のPX-RV、軽自動車/コンパクトカー用のPX-Cはそれぞれ車両の基本特性に合わせて開発されているため、例えばセダン/クーペ用のPXを装着したレクサスCT200hと、ミニバン用PX-RVを装着したセレナ・ハイブリッドを乗り比べると、クルマの資質の違いはあっても、タイヤのフィーリングとしてはどちらも同じような操舵フィーリングが感じられることがわかった。言い換えれば、同じコンセプトで車種に合わせた専用チューニングにより、コンセプト通りのハンドリングが実現しているわけだ。
次に、比較対象となるエコピアEX20は低燃費性能(ラベリング制度でAまたはAA)、ウェット向上ポリマー、ナノプロテック・ゴムなどを採用してウエット性能はaまたはb。またセダン/クーペ用、ミニバン用、軽自動車/コンパクトカー用が設定されているなど、今回登場したPXシリーズと同様の基本技術が採用されているタイヤだ。
ところがEX20装着車とPX装着車を比べると、驚くほどステアリングフィールが違っていた。PXシリーズのほうが明確にステアリングの中央部が締まっており、直進状態で落ち着きがあり、路面からのフィードバックも優れている。
レーンチェンジでの操舵でもリニアに滑らかに、遅れなくクルマが反応し、思い通りのラインを走行できるので、当然ダブル・レーンチェンジでのステアリングの修正量も少なくなっているのだ。PXシリーズは、ステアリングの切り込みや修正舵に対してコーナリングフォース(CF)の立ち上がりにリニア感が、つまりコーナリングパワー(CP)が早期に穏やかに立ち上がっているのだ。
EX20装着車は、ステアリングのセンター部の締まり感が薄く、あたかもステアリングに遊びがあるように感じられ、その不感帯を超えるとコーナリングパワーが立ち上がるフィーリングで、つまり操舵初期の遅れ感があるのだ。
PXシリーズの操舵フィーリングは、微小舵角でのリニアな反応、操舵感、復元力のバランスに優れ、接地感が優れているのでクルマはドライバーの意図通り反応し、このことがストレスを低減しているわけである。このため、ドライバーのスキルを問わず、運転がしやすい、安心感が向上したと感じられるはずだ。
またウエット路でも同様で、濡れた路面のインフォメーションがしっかりとステアリングに伝わってくるのでドライバーはコントロールしやすいと感じるし、ステアリングの手応えもしっかりしていた。
PXシリーズは、EX20と同等レベルのトレッド・ゴムを採用しているので、もちろんハイパフォーマンス、ハイグリップのスポーツタイヤのように路面に粘り付き、食い付くようなグリップ感はない。その代わりに、より長寿命で、低燃費性能も優れ、静粛性などコンフォート性もよいというメリットを持っている。
Playz PXシリーズの価格は当然ながらプレミアム系、ハイパフォーマンス系のタイヤより低価格で、エコピア・シリーズと同等レベルとなっていることもアピールポイントだ。
ブリヂストン Playz PX サイズ表
ブリヂストン Playz PX-RV サイズ表
ブリヂストン Playz PX-Cサイズ表