2015年11月25日、ブリヂストンは、タイヤの接地面センシング技術「CAIS」により、走行中の路面状態、ドライ、ウエット、凍結路面などをリアルタイムで判別する技術の実用化に成功したと発表した。具体的には2015年冬季からブリヂストンとネクスコ・エンジニアリング北海道が契約を結び、この接地面センシング技術を使用して凍結道路に融雪剤を散布する際に、路面状態をリアルタイムに反映しながら最適に散布することを実現している。
ブリヂストンは、路面と接しているタイヤから接地面の情報を収集・解析し、路面の状態やタイヤの状態を把握するというセンシング技術を「CAIS(Contact Area Information Sensing)」と呼んでおり、2011年に技術コンセプトを発表。そして2014年11月にはタイヤ内部にひずみ、加速度、圧力、温度などのセンサーを配置し、主にタイヤの加速度の情報をもとにタイヤの磨耗量を推定する技術を発表している。
今回は、もともとのCAISのコンセプトであるタイヤ内蔵センサーにより路面状態の判別を行なう機能を実現した。タイヤ内部にコンパクトな一体型のひずみ、加速度、圧力、温度センサーを配置し、センサーの信号は無線送信され、クルマに搭載されたコンピューターで受信する。
センサーによりタイヤの回転方向の加速度を計測し、その加速度の発生する振動周波数の波形を統計数理学の手法を駆使して解析し、路面状態をドライ、セミウエット、ウエット、シャーベット、積雪、圧雪、凍結という7種類の路面状態を判別することに成功したのだ。この路面状態を判別する技術はネクスコ・エンジニアリング北海道の「スマートメンテナンスハイウェイ構想」に採用され今季から採用されている。
システムとしては道路巡回車にCAIS技術が搭載され、道路を走行しながら路面状態を自動検出し、インターネットを通じて高速道路管理事務所に情報が送信される。事務所から凍結剤散布車に散布データが送信され、路面の状態に合わせた最適な凍結防止剤が自動散布される。従来はドライバーの目視により散布を調節していたが、このCAIS技術により、必要な場所に必要な凍結防止剤の量を散布できるため、効果的なオペレーションが可能になっているのだ。
CAISの原理は、回転するタイヤが接地面に接触する時と接地面から離れる時に加速度のピークが2回発生することに注目し、ドライ路面、ウエット路面、凍結路面などでの加速度の発生するときの波形の違い、特徴を数値化し、識別のための関数を組み合わせるという統計数理学の手法を駆使し、7種類の路面判別を実現している。
センサーからの信号の数値化、識別、判別というプロセスは、文部省 情報システム研究機構「統計数理研究所」とのコラボレーションにより数値統計の手法を使用して判別アルゴリズムを実現したという。
この路面判別技術は、今後、鉱山用大型トラック、バス、航空機などに採用が検討されており、将来的には乗用車タイヤにも装着ができるようにする計画だという。走行しているクルマから得られる各道路の路面状態は車車間通信やバックエンドサーバーを通して、より多くのクルマが情報を共有化することで、進行する先の道路の状態を予知でき、安全性を高めるといったITS技術として利用することもできるのだ。