ボッシュは2023年6月12日、2020年代半ばまでにステア・バイ・ワイヤシステムの市場投入を目指し、スタートアップ企業のArnold NextGと提携したと発表した。
今回の提携は、開発ノウハウの共有とソリューションの市場投入準備の加速を目的としたもので、ボッシュは、世界有数の電動ステアリングシステム・サプライヤーであり、未来のステアリング・システムとして期待されているステア・バイ・ワイヤの可能性をいち早く認識し、その開発を推進している。
ロバート・ボッシュ・オートモーティブ・ステアリングのゲルタ・マリアーニ社長
「ステア・バイ・ワイヤの需要は急速に高まりつつあります。特に自動運転の時代において、長期的に非常に大きな市場になることが確実視されています。今回の提携がシステム最適化のさらなる促進につながると期待しています」と語っている。
Arnold NextG社は、自動運転向けのあらゆるインターフェイスを完備した多重冗長化ドライブ・バイ・ワイヤを、小規模で極小ロットの開発が専門だ。*多重冗長化:複数の複雑な外乱の影響を受けない
2021年創業のスタートアップでありながら、公道走行可能なドライブ・バイ・ワイヤに関して通算20年以上の経験を持つ従業員が在籍しており、あらゆるバイ・ワイヤ・システムに対応した後付けのソリューション開発など、独自の専門知識も蓄積している。これまでの経験から、Arnold NextGの持つ冗長技術により、公道走行に関する承認がより迅速かつ効率的に取得できる可能性が見込まれている。
ステア・バイ・ワイヤの可能性
ステア・バイ・ワイヤは、ステアリングホイールと車両の間で、機械的な接続が不要の仕組み。そのため、ステアリングホイールの位置を下げたり、格納したりすることで、自動運転の時代に対応したまったく新しいコックピットを生みだすなど、車内のデザインに新しい可能性が広がる技術だ。
またこの技術は、ビークルダイナミクス・コントロール(車両運動制御)における新しい安全機能も実現可能になる。例えば、ドライバーが気付かないような外乱への対応も、ステアリングへのわずかな介入で車両を安定させることができる。もちろん自動車メーカーの要求に合わせたステアフィールにカスタマイズすることも容易だ。
また、車両に依存しないアドオン可能なドライブ・バイ・ワイヤー技術を採用することは、特に重度の身体的障害を持つ人々にとって極めて重要だ。自律走行や自動運転、運転支援、安全システムに関するさまざまな開発のメリットを生み出すことができるのである。
今回の新たな提携について、Arnold NextGのケビン・アーノルド創業者兼CEO
「ボッシュのステア・バイ・ワイヤは、市場で最高レベルの最も自然なステアリングフィールを実現します。ボッシュは世界有数の電動ステアリングシステム・サプライヤーとして、量産を見据えた制御技術と性能のパッケージを提供しています。それゆえに、最高のシステムを基盤にできるだけでなく、世界最大級の自動車サプライヤーのひとつであるボッシュと協業できることを誇りに思います」
「また、ボッシュはArnold NextGの、車両に依存しない後付けのドライブ・バイ・ワイヤの開発プラットフォームを活用することにより、量産プロジェクトの初期段階でもデータの検証や要求解析が可能になります。両社はともに、この技術を量産化に向けてさらに発展させることができるのです。この提携を通じてボッシュの技術に触れ、グローバル企業と量産化プロジェクトを推進する経験は、当社の今後のシステム開発にとって非常に重要です」と語っている。
機械的に連結されず、電気信号とモーターで作動するステア・バイ・ワイヤは、現時点で各国での対応法規が統一されておらず、どのようなシステム失陥時、電源喪失時のバックアップ、冗長性が求められるかは様々な議論がある。したがって、より早イタイミングで、より長期間の公道での実証実験がきわめて重要であり、ボッシュの今回の提携により、公道試験が加速するはずである。