【WEC2014】第4戦アメリカ 大雨で波乱のレースをアウディが1-2

WEC Austin 2014
真っ黒の雷雲がサーキットに迫る。この後、コースが豪雨となり赤旗中断となった

2014年9月20日、アメリカのオースティンにあるサーキット・オブ・アメリカで世界耐久選手権第4戦、「サーキット・オブ・ジ・アメリカ6時間レース」が開催された。決勝レース中にスコールが降るなど波乱のレース展開の中、アウディR18 e-tronがル・マン24時間レースに続いて1-2フィニッシュを決めた。

各チームとも、ル・マン24時間レース後に、シーズン後半戦を見据えて精力的にテストを行なった後に、いよいよシーズン後半戦の幕開けとなるサーキット・オブ・ジ・アメリカで第4戦に臨んだ。当然ながら各チームともマシンはハイ・ダウンフォース仕様に変更されている。

また、このレースからFIAによる燃費規制の見直しも行なわれ、ディーゼルエンジンを搭載するアウディはレース中の燃料流量が1%弱増大されているが、アウディ側ではほとんど現実的なメリットはないとしている。さらに、レース中の給油時の給油ホース開口部のリストラクターが、ガソリン組のトヨタ、ポルシェは流量を絞られることになっている。

また日産/ニスモもオースティンで会見を開き、2015年に向け開発しているLMP1マシン(車名はNISSAN GT-R LM NISMO)とチームは、アメリカのインディアナポリスにも拠点を置き、南部のサーキット施設を活用して新マシンのテストを行なうと発表した。

日産LMP1チームは様々な国籍のスタッフが集まり、チームの拠点はヨーロッパとなるが、運営は日本のニスモの本社が行なう。また日産LMP1のドライバーのうち1人は日産/プレイステーションGTアカデミー出身のアメリカ人を起用する計画だという。

WEC 2014  オースティン
2015年からスタートするエントリークラスのLMP3。NISMOエンジンが供給される

また日産は2015年シーズンに新たに創設されるLMP3(ル・マンプロトタイプ3)耐久レーシング・カテゴリーへエンジン供給を行なうことを発表した。LMP3のパワープラントは、ニスモのチューンによる5.0L・自然吸気V8エンジンのVK50VE型。これにより日産はWECのプロトタイプレーシングカーのカテゴリーすべてにマシン、エンジンを送り出すことになる。

LMP3部門は、ACO(フランス西部自動車クラブ)がコスト効率を目指して新設するメンテナンスが比較的容易なプロトタイプレーシングカーで、コンストラクター、チーム、ドライバーにとっては耐久レースのエントリーカテゴリーと位置付けられる。2015年はヨーロピアン・ル・マンシリーズ(ELMS)、アジアン・ル・マンシリーズにも参戦が可能なマシンだ。

チームは現在、新たな米国での拠点地として、チャンプカーチーム、フォーサイズ・レーシングが以前インディアナポリスに所有していた本拠地を建て直ししている。

WEC 2014  オースティン
予選では他車を圧倒したが、波乱のレースで悔やまれる結果となったトヨタTS040

予選では、依然として最高出力1000psのトヨタがリードし、2番手に1秒以上の大きな差を付けて8号車がポールポジション。2番手がポルシェ14号車、3番手がポルシェ20号車、4番手がアウディ2号車と言う順となった。実は今回はアウディも相当な意気込みでポールポジションを狙っていたが、予選中に燃料流量の信号が途絶すると言うトラブルで失望すべきポジションとなった。トヨタ7号車は、中嶋一貴の代わりにマイク・コンウェイが加わり、5番手のポジションとなった。しかし、予選2番手から5番手までは0.1秒以内という僅差であった。

WEC 2014  オースティン
予選結果表
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気温30度、快晴のもと決勝レースのスタートが切られた

9月20日、決勝レースの幕が開くと、トヨタがレースをリードし、ポルシェがこれに続いたが、トヨタ7号車もダッシュし、1周目でポルシェを抜いて2番手に。アウディは最初のピットストップでタイヤ交換を行なわないという戦術により、確実にポジションアップしていく。

レース開始から1時間半が経った頃に降り始めた小雨は、ほどなくしてスコールといえるほど激しい土砂降りとなり、ハイドロプレーン現象によりほとんどのマシンがコースアウトやスピンを経験することになった。このため赤旗によりレースは約1時間にわたり中断された。トヨタは、この混乱の中でポジションを落としたことで大いに悔やむ結果となる。

WEC 2014  オースティンWEC 2014  オースティン

こうした波乱の展開の中で、アウディ・チームはコース状況に合わせて2号車のタイヤ選択を早めに行なうことで2番手に浮上し、1号車はレインタイヤののまま乾きつつあるコース上でできるだけ我慢し、その後にタイヤと交換する作戦をとった。

WEC 2014  オースティン    ポルシェ919
優勝を目前にしながらチャンスを失ったポルシェ919

ポルシェ14号車はレース中断後、順調なタイヤ交換タイミングによりトップに躍り出て、そのままアウディを抑えて優勝するかに見えたが、最後のピットインを終えてコースに戻った時、エンジンが大幅にパワーダウンし、優勝の望みは消え、4位でゴールを迎えることになった。

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▲ル・マン24時間レースに続き1-2フィニッシュを成し遂げたアウディ・チーム

こうして、アウディ2号車が優勝し、1号車は最後の追い上げで2位に滑り込んだ。トヨタ8号車が3位、7号車はポルシェ2台の後ろの6番手でレースを終え、悔いの残る結果となっている。

race結果表

さて、いよいよ次戦は富士スピードウェイでの決戦である。ル・マン24時間レース後のテストを経て、各チームともマシンの性能を向上させており、現時点では予選ではトヨタがやや優位に立っているものの、実戦レースでの実力は互角と言ってよい。富士を制するのはどのチームなのか?

 

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