AZAZの体当たりチャレンジvol.1
マニアック評価 vol.674
レポーターの伊藤梓さんが、「運転しやすくなった、ハンドルを切った感じとかアクセルを踏んでパワーが出る感じが素直だ」と言っているが、マイナーチェンジでそれほど大きく変わらないだろう、と思っているクルマ通の方、その秘密をみてみよう。
ディーゼルエンジンのみマイナーチェンジ
デリカD:5は言わずと知れた「オールラウンドミニバン」である。ただの箱型ミニバンではなく、SUVにも引けをとらない走破力も持っていることはよくご存知だと思う。そのデリカD:5のラインアップでディーゼル搭載モデルをマイナーチェンジし、一つ上のプレステージ性と、快適な気持ち良さ、そして他車では味わえない運転も楽しめるミニバンというのを開発目標においてつくられている。
そのためにエンジンも新開発している。排気量を見ると前型と同じ2.2Lではあるが、特に排ガス処理方法は尿素SCRを採用し、これまでのNOxトラップ式で後処理方式をやめたため燃費も良くなっている。もちろんフリクションの大幅低減や燃焼室の変更、次世代インジェクターの採用などがあり、トルクが360Nmから380Nmへとアップしている。
そして6速ATから8速ATへ変化させたことも大きい。このあたりの変更によって、アクセルを踏んだ時のトルクの出方に力強さが加わり、ドライバーが期待したとおりに加速する、ということを体感する。そしてフリクションを低減したことなどから、エンジンのディーゼル音自体が非常に静かで、アイドリング時でも気になることは全くない。また、加速時のエンジン音にディーゼル感はなく、滑らかに回転が上昇するのだ。
ドライブフィールでは、アクセルを急に閉じたときアップシフトしないでエンジンブレーキが得られるような制御も盛り込んでいるため、運転しやすいと感じるだろう。そして再加速したときのトルクの盛り上がり、素早いシフトアップなど、8速ATとの組み合わせは実に滑らかに、そしてスムーズに走れることを体感するのだ。
静粛性はトップクラス
従来型と比較して、この遮音、吸音処理は驚くほど入念に行なっている。遮音材では、フロントウインドウを通常ガラスから遮音ガラスに変更、フェンダー隔壁にウレタンブロックを追加、ダッシュパネルやフロアパネルに制振材の貼り付け面積や材質を変更、そしてフロアカーペット自体も変更し遮音効果を上げている。
また吸音材では、ドアトリムやヘッドライニング(天井内張)、インパネなどの吸音材の材料置換で効果を上げているのだ。そのため、従来モデルとの比較で、フロント席、セカンドシートともに、静粛性を高めているデータになっている。
乗り心地も操安性も良好
乗り心地も良くなり、操舵フィールも向上している。その理由として、もともと悪路走破を想定しているためボディ剛性はリブボーンフレーム構造としており、さらに今回フロント周りの形状最適化や補強パーツの新規追加、溶接打点の追加、結合改善などを行ない、ボディ剛性が高められている。
そのためサスペンションの機能を効果的に使うことができていることが、乗り心地の改善と感じる部分だ。さらにフロントストラットのコイルスプリングの配置、傾斜角を変更し、操舵時のサスペンションフリクションを20%低減しているという。そのため、滑らかで正確な操舵フィールを得ているというわけだ。
また、ロアアームのブッシュの見直しをし、パワーステアリングのモーターをデュアルピニオンタイプに変更したため、モーターがタイヤに近い位置に設置される。そのためステアリングの切り始めからダイレクト感のある操舵フィールが得られる。
リヤサスペンションでは、スプリング特性の見直しと、ダンパーサイズをアップさせることで走破性に余裕が生まれ、乗り心地にも優位な効果を発揮している。
こうしたサスペンション、ステアリング周りの改良によって、思ったようにクルマが動き、自然な操舵フィールが得られ「運転しやすい」ということにつながっているわけだ。
もうひとつ、走行性能でのレベルアップは4WD電子制御がある。これは従来車との雪上試乗比較をこちらでレポートしているので、参考までにみてもらいたい。これは、具体的な違いとして、舵角センサーを装備し、ヨーレートフィードバック制御を追加している。
つまり、センサーによって車両旋回運動が的確に判断でき、必要なトルクを前後配分することができ、雪上のような滑りやすい路面でも安心して走行できる制御になっている。
個性的なエクステリア
ディーゼルモデルのみのマイナーチェンジでは、より個性的なフロントマスクがお目見えした。モデルは2タイプあり、標準車とアーバンギアの2つの個性だ。一般的にはアンダーガードがあり、メッシュ調のグリルを持つ方が特装車になるが、デリカD:5では、こちらが標準車になる。反対にアーバンギアはアンダーガードも外し、サイドスアンダーパネルを装備するなど、文字通り都会派をイメージするモデルとして新規設定されている。
インテリアにも特徴があり、インパネは三菱こだわりの「ホリゾンタル アクシス」を基本としている。つまり水平基調としたデザインということだが、オフロードを走る際、車両の傾きをわかりやすくするための工夫のひとつで、実は運転のしやすさもこうしたインパネデザインが寄与しているのだ。
インテリアでは特に、ひとクラス上のレベルを目指しているため、高級に感じる要素をふんだんに取り入れている。例えばラグジュアリーなイメージになるクロスステッチのレザーシート(メーカーオプション)や、標準のファブリックにもキルティングイメージのあるデザインになっている。
こうしたさまざまな改良がディーゼルモデルには行なわれ、運転して楽しく、安心で、車内は静かでそして力強いというのが今回のデリカD:5だ。どこかアドベンチャーな気分にさせてくれるライバル不在のミニバンだ。