Hyundai AセグメントEV 「インスター」 まもなく国内デビュー先行試乗

韓国・ヒョンデからAセグメントサイズのEVが上陸してくる。2025年、年初から春にかけて発表される予定だが、一足先に韓国で試乗してきたのでお伝えしよう。

EVはバッテリー価格が高価なため、EVの普及は高級車やプレミアムモデルから広がっている。また富裕層=新しいものが好きという傾向も重なり、マーケティング用語で言う「イノベーター」や「アーリーアダプター」は富裕層が多く、EVはそうした客層から浸透が始まった。

欧州ではその富裕層に一定数のEVが行き渡り、現在は踊り場とも言われて販売数の伸びは落ち着きつつある。そのため、欧州ではCセグメント、BセグメントサイズのEVが徐々にデビューを開始しており、EVはこれから本格的な普及期へとシフトすると予測されている。

一方、国内を見渡すとEVの種類は少なく、圧倒的に輸入車頼りになっているし、まだまだ高級車を中心としたラインアップになっている。2022年にようやく日産が軽自動車をベースにした「サクラ」三菱自動車の「eKクロスEV」を出し、普及期の空気が出始めたところだ。

そこへ軽自動車よりは大きく、コンパクトカーよりは小さい、サブ・コンパクトのAセグメントサイズEVの「インスター」がヒョンデから発売されるのだ。つまり、普及期を前提に、アフォーダブルな価格であり、リージョナルな使い勝手が似合う都市型クロスオーバーEVがデビューするのだ。

インスターは韓国国内ではエンジン車も存在し「キャスパー」の名前で販売済み。グローバルネームがインスターであり、販売先は韓国はもちろん欧州、中東、そしてアジアパシフィックで展開する。軽自動車サイズではちょっと、という人やリーフやソルテラ、bz4Xでは大きいという人にはピッタリサイズのというわけだ。

特徴は見ての通り、アイコニックな顔だ。独特のデザインでLEDをうまく使った顔の表情は豊かであり、癒される顔になっている。インテリアも大人4人がきちんと座れるスペースを確保し、特に後席の足元はフラットフロアでゆったりしている。運転席周りも小ぶりなコンソールとシフトレバーがないことで、スペースが広く、Aセグメントだけど、ひとクラス上と同等とも思える広さがある。

日常的な使い方を基本としているため、それほど大きなバッテリーは搭載していない。つまり、価格に強く反映させないためとも考えられるが、2タイプを用意している。標準的な42kWhのバッテリは327km、49kWhでは370kmまで航続距離が確保できるので、日常使いであれば全く問題ない。

韓国市内から高速道路を通り郊外路を走行するルートで試乗したが、静粛性の高さはクラスを超えるレベルでEVの特徴を活かした作りになっている。

ひとつには駆動モーターの搭載マウントにゴムブッシュではなくハイドロブッシュを採用し、振動を低減している。そしてドアサイドウインドウの板厚を厚くすることで、風切り音などのロードノイズの低減も行なっている。さらにフロアのシーリングをダブルにするなど、高い静粛性の確保に惜しみなく技術を投入している。

そして乗り心地では電子制御ダンパーをオプション設定にするなど(韓国仕様)、車体制御と衝撃吸収能力を向上させるため、騒音、振動、ハーシュネスの面で高い競争力となるよう設計されているのだ。

さてボディサイズだが、これは韓国仕様のスペックとして全長3825mm、全幅1610mm、全高1575mm、ホイールベースは2580mmと長い。このボディに標準が71.1kW、ロングレンジが84.5kWの出力を持つ駆動モーターをフロントに搭載し、フロントタイヤで駆動する。

シフトレバーはステアリングコラムポストへ移設され、前に回すとドライブ、手前に回すとリバースにシフト。レバー先端を押し込むと「P」ポジションになる。早速シフトレバーを前に回してドライブに入れて動き出すと、EVらしい静かでなめらな発進をし、速度が上がってもその滑らかさは継続し、シームレスなEVらしい加速をする。もちろんエンジン音がしないのだから静粛性を保ちながら速度が上がっていくのだ。

メーターは10.25インチのデジタル表示で、ウインカーを出すと、自車側後方の画像が表示され、自転車や歩行者を確認しやすい。ステアリングにはドライブモードのスイッチもあり、押してみるとスポーツ、コンフォート、エコとあるが、ほぼ変化のない程度でレスポンスが変わる。

そのステアリングにはADASが装備され、先行車発進お知らせ機能などもある最新の先進運転支援機能と安全装備が搭載されている。レベル2の運転アシストも高速道路で試したが特におかしな部分はない。

コンパクトにまとめられたセンターコンソールは空調系がまとめてあり、フィジカルスイッチにイラストや文字が書かれているので、操作に迷うことはない。

走行シーンではEVらしさが存分にあり、中間加速でも間髪入れずに加速するので気持ち良い。ICEに戻れなくなる反応の良さがある。そしてステアリング操舵は適度な手応えがあり、やや重めの印象はあるものの、手応えのないクルマほど怖いものはない。

サスペンションはフロントがストラットでリヤがトーションビームというオーソドックススタイルだ。ストロークは長く、ゆったりとした動きは好ましい。小さいボディながらゆったりとした動きは余裕ある態度という印象を受ける。ただ、凸凹での突き上げはあるので、そこを気にするのであれば、電子制御のダンパーにアップグレードする方法はある。このあたりは仕向地への変更として日本仕様も考えられるし、オプション設定がそのままスライドするのかは不明だ。

つまりサブ・コンパクトとしては乗り心地がよく、加速は頼もしく、パドルシフトもあるので回生ブレーキのコントロールも可能というEVの王道を持ったモデルと言える。

そして使い勝手では運転席を含め全席がフルフラットになる構造で、かなり大きな荷物も車載できるし、車中泊もその気になればできる。

このように利便性は高く、実用的なモデルでありながら、パンチの効いた走行も可能なサブコンパクトモデルなのだ。例えば複数台持ちであれば、ベストチョイスな一台となり、所有する軽自動車の代わりに導入すれば、軽自動車では味わえない、高い静粛性とレスポンスの良い走り、そして先進のデジタルアイテムも魅力的に映るはずだ。

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