2013年10月にモデルチェンジした「タント」は元祖スーパーハイトワゴンだが、競合車が同じスーパーハイトワゴンのニューモデルを投入し、軽自動車マーケットの1/3を占めるこのカテゴリーもますます活性化している。スーパーハイトワゴンは、全高が最も高い軽自動車というだけでなく、軽自動車でありながらファーストカーになりえる存在であることが特徴だが、最近は更に新しい役割も備えるようになった。
小型車からのダウンサイジングを考える人にとっての受け皿の役割も持つようになっているのだ。そのためダイハツは新型タントでは、メインユーザーの子育て主婦層とダウンサイザーを重視しながら開発を進めた。子育て主婦層にとっては、室内の広さ、使い勝手の良さが最も重視されるが、ダウンサーザーにとっては小型車と変わらないスペースと品質が重視される。
新型タントの開発目標は、ナンバーワンの室内の広さ、優れた使い勝手、軽量化や原価低減を行ないながら、乗り心地、静粛性、安全性などを大幅に向上させるということで、性能目標としてはもはや1.5Lクラスのクルマと同等かそれ以上というレベルになっている。
軽自動車はボディサイズは規格化されているが、高さ方向の自由度をフルに使ったのが全高1700mmを超えるスーパーハイトワゴンなのだが、新型タントはさらなる広さを求め、Aピラーの前出し、Aピラー角度の増大を図っている。ドライバーから見てフロントウインドウがより前方で、頭部と距離があるほど広さ感が向上するからだ。ちなみにそれ以外では頭上の空間、ガラス面積の広さが多くの人が広さを評価するポイントだという。
結果としてタントはドライバーの頭とフロントガラスの上端部の距離、ヘッドクリアランス、前席と後席の乗員の距離の長さで軽自動車No.1となっている。もちろん、子育て主婦にとって重要なテーマである自転車、ベビーカーの積載性は両側スライド式+左側ミラクルオープンドアでより大きなアドバンテージを持ち、UVカットガラス、ロールサンシェードなどは標準装備されている。
左側のセンターピラーレスのミラクルオープンドアは、ドア内部にピラーを内蔵する構造になっており、開口面積が広く後席への乗り降り、荷物のサイドからの積載などに効果を実感できる。
NAエンジンを搭載する標準モデルのタントのステアリングを握って走り出すと、まずはNAエンジンにもかかわらず加速にリニアリティがあり、アクセルの踏み込みに応じて伸びる感じがとても自然で、ストレスがないことに感心する。これはCVTとエンジンの協調制御の進化なのだろう。
ターボエンジンはいうまでもなくはるかにトルクがあり、市街地で小型車と同等以上の加速が得られる。また、NAエンジン、ターボエンジン車ともに、エンジンの騒音がよく抑えられており、特に加速時にノイジーになりがちなNAエンジンの静粛性は軽自動車の中でもトップレベルだろう。
なお、タント・カスタムはデザイン的に存在感を主張するだけでなく、走りや質感の仕上げなどトータルで小型車からのダウンサイザーを意識した仕上がりになっており、ターボエンジンとの組み合わせできわめて高いレベルにまとまっている。
走りでは、ステアリングの落ち着きも十分で、市街地走行でもボディのピッチングがよく押さえ込まれ、しっとり感のある乗り心地もクラスの常識を破るレベルになっている。FFモデルはフロント・ストラットにリバウンドスプリングを入れ、ステアリングラックの3点止め、シャシー各部の剛性アップなど、基本要素をしっかり作り込んでいることでこうした乗り心地が得られているはずだ。
前後シートの作りもしっかりしている。後席の広々感は、ゆったり感や乗り心地、室内の静粛さなどトータルの性能で大人でも長時間耐えられると思う。そういう意味で、小型車を凌駕する、ファーストカーになりえる性能を持っているといえる。
ダイハツは軽自動車でいち早く衝突回避・軽減ブレーキ「スマートアシスト」を導入したが、新型タントも全車種に設定されている点も高く評価できる。実際に購入者の7割がスマートアシスト装着車を選択しているそうで、軽自動車だからこそVSCとセットのスマートアシストの意義はとても大きいことはユーザーにもよく認識されているのだ。