【マツダ】アクセラ試乗記 プリウスとは明らかに違うパワーフィールのハイブリッド レポート:髙橋 明

マニアック評価vol229

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クローズドコースのディーゼルを含み、すべてのエンジンバリエーションを試乗した

新型マツダ・アクセラには4つのパワートレーンと、2つのボディタイプが用意されている。排気量1.5Lの自然吸気エンジンに6MT/6AT搭載車、2.0Lの6速AT、トヨタ・プリウスのハイブリットユニットを供与され、スカイG2.0L専用エンジンと組み合わせたマツダ初のハイブリッドモデル、そして2.2Lのディーゼルターボに6MT/6ATというトップグレードがある。また、4WDは1.5Lモデルだけに設定され、ボディタイプではスポーツ(5ドアハッチバック)とセダンがあり、ハイリッドはセダン専用となっている。

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5ドアハッチバックのアクセラ・スポーツ

アクセラは欧州Cセグメントに属し、欧州をはじめ北米やオーストラリアなど、世界中で販売されるグローバルモデルという位置付け。海外試乗ではマツダ3の名前で販売される。ライバルはフォルクスワーゲン・ゴルフ、フォード・フォーカスあたりになると予想する。国内では純Cセグメントのインプレッサが最近はクラスリーダーとなっており、このインプレッサとライバル関係になるが、ダイナミック性能をアピールするアクセラとは、直接的な比較とはならないだろう。

アクセラハイブリッド
ハイブリッドモデルはセダンに設定される
アクセラセダン15c
スタイリッシュなデザインのアクセラ・セダン

 

今回試乗したモデルは1.5LのAT/MT、5HB/セダン、ハイブリッド、そしてプロトタイプではあるが、ディーゼルを搭載するXD(クロスディ)、2.0Lガソリンエンジンにも試乗できた。場所は伊豆・修善寺周辺の山間部で、プロトタイプはクローズドコースでの試乗となった。

これらのモデルに共通した印象はどれも走りの質感、車輌の質感が高く、欧州車のCセグメントに試乗していると錯覚するほどの出来栄えで、驚くのは標準車からトップグレードまでどのグレードでも運転フィールが素直で、グレード違いによる格差をほとんど感じないという点だ。

したがってマツダ側もユーザーの使い方によってモデルをチョイスしてもらいたい、と説明している。市街地が多く、ハイブリッドに乗りたいというユーザーはHEVを選べばよい。エンジンを回してワインディングを気持ちよく、力強く、爽快に走りたいというユーザーはスカイG(ガソリン)を選択。長距離が多く、経済的に走り、異次元のトルクフルな走りを得たいという人はディーゼルをチョイス、というようにそれぞれの好みや使用環境で選んでも、悔いはまったくないということだ。ありがちな、本当はガソリンに乗りたいけど、ハイブリッドが流行だから…という後悔の心配がないというわけだ。

■軽快な回転を楽しめる1.5エンジン
1.5Lエンジンはエンジン音が軽快で気持ちいい回り方をする。6200rpm付近でATのシフトアップは行なわれるが、高回転側へいくほど「いい音」がする。いわゆるエントリーモデルというポジションとは、とても思えないレベルの気持ちよさがあるのだ。ATは6速で、全開で踏み続けるとトルコンのスリップは感じるものの、乗用域ではピックアップもシフトダウンもツインクラッチのように素早くシフトチェンジが行なわれ、ダイレクト感がある。

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回転の上がりと6MTの小気味いいシフトフィールで走りが楽しい1.5L搭載モデル

6MTのシフトフィールはしっとりとした上質感があり、またストロークも適度なフィールがある。半クラッチも分かりやすく欧州車的な感覚だ。半クラッチがどこか分かりにくく、シャキッとしないエントリーモデルにありがちなものとは大きく異なっている。マニュアル操作はいつ乗っても、クルマを操縦している感触が味わえ、楽しくなるものだ。ドライバーの意思が忠実に反映する動きは、操る支配感を満足させ今の時代では大人用の高級な遊び装置として他人の目に焼きつくだろう。

アクセラ15ガソリンアクセラガソリンエンジンルーム

唯一、残念なのは205/60-16サイズのOEMタイヤで乗り心地に差があったことだ。銘柄はトーヨーとブリヂストンで、明らかにブリヂストンは硬く、アクセラの狙った上質感には届いていないと感じた。路面のデコボコを拾ったときに室内にゴトコトと音を出してしまう。一方のトーヨーはほとんど聞こえないレベルの音で、タイヤのサイドウオールがたわんでデコボコを吸収しているのを感じる。標準装着されるタイヤは購入側からはチョイスできないので、このあたりの改善は求めたいところだ。この1.5Lのエントリーモデルは15CのFFモデルで5HB/セダン、AT/MTとも171万1500円となっている。

■2.0L、そしてハイブリッドにも試乗
2.0Lのガソリンは6速ATだけの仕様で、当然1.5Lよりパワフルなわけだがフィーリングとしては1.5Lのほうが軽快感はあるので好ましかった。出力値という絶対値が必要でなければ1.5Lを選択したい。マツダが言うユーザーの使用環境次第で排気量を選択しても失敗はない、とはこのことか。装備面やインテリアでの質感の違いだが、詳細に見比べていないので、コメントしにくいが、1.5Lと2.0Lでは大きな差異を感じなかったとレポートしておく。2.0Lモデルは5ドアハッチバック専用でFFの20Sグレードで220万5000円となっている。

スポーツ20S Lパッケージ
アクセラ・スポーツ20S(Lパッケージ)のインテリア

注目のハイブリッドだ。とにかく日本ではハイブリッドが人気で、マツダでも早期に導入したかったモデルだろう。そのマツダ初となるハイブリッドは2007年に発表したスカイアクティブテクノロジーの中でのビルディングブロック戦略として公表していた。そして2010年にトヨタとハイブリッドの技術ライセンス供与を発表したが、今回のプロダクトとしてデビューしたわけだ。価格は237万3000からとなっている。

アクセラハイブリッドエンジンハイブリッドエンジルーム

ハイブリッドシステムそのものはトヨタのものとはいえ、エンジンはマツダの専用スカイGエンジンで2.0Lのアトキンソンサイクルを搭載している。電気駆動系とそれに付随する細かなものがトヨタの技術を使用するというハイブリッドである。このシステムはプリウスに搭載しているユニットでエンジンはプリウスの1.8Lに対して200cc排気量が大きくなるが、出力やトルクというスペックは全く同じ仕様となっている。

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スペックでは分からない”速さ”を感じられるハイブリッド

■人馬一体が味わえるハイブリッド

ところが、走ってみるとプリウスとは比較にならないほどの力強さを感じるのである。だから「これが200ccの違いか」なんて勝手に合点してしまうが、後にエンジニアの説明を受け、スペックは同じであることはわかるが、試乗フィールとしてはどうしても違うようにしか感じないのだ。ではどうやってその違いを感じさせることに成功したのか? 一言で言えばマツダのエンジニアがトヨタからの食材をマツダらしい味に造り直したということだ。その詳細は別の機会に考察レポートの必要があるだろう。

ハイブリッドの欠点は動き出し、リニアな加速感、そして減速感、ブレーキタッチといったところの制御が難しく、普通のガソリン車との違いを感じる部分でもある。であるが、マツダは人馬一体を謳い、リニア感やつながり、運転する楽しさを追求するメーカーだけに、ハイブリッド特有の動きを徹底的に嫌い、ナチュラルと感じられる領域に制御してきていると感じた。

アクセラセダントランク
アクセラ・セダンのトランクルーム
アクセラスポーツトランク
ハッチバックらしく広々としたトランクを持つアクセラ・スポーツ

 

走り出しのEVからエンジンが始動し、モーターとエンジンの出力バランスが常に変化していく加速時に途切れのないスムースな加速をする。エンジン音は自然吸気のエンジンほど気持ちよさはなく、残念な部分でもある。またCVT的な加速になるのでエンジン音と加速フィールでのリニア感は弱い。ただし全開でアクセルを踏まなければそれなりのフィールではある。エンジンの停止、再始動が頻繁に繰り替えされるハイブリッドであるが、その変化をドライバーが感じることはまずない、というスムースさだった。

減速でもハイブリッドはブレーキバイワイヤーとなるので、ブレーキペダルは電気信号の発信に過ぎず、油圧を立ち上げる普通のブレーキとはそもそもが異なる。したがってブレーキタッチや減速感にはしばしば「違和感」という意見があるが、アクセラでは実に自然なブレーキとなっていた。ペダルタッチも油圧であるかのように感じ、違和感はない。ただBモードの減速Gは弱く、このあたりがエンジンブレーキのフィールになるともっといいのかもしれない。

このBモードは減速エネルギー回生をするモードで、バッテリーに充電をしていく。そのため、バッテリー容量が空に近ければ多くを回生し、満タンに近ければ少量の回生でいいことになる。しかし、ドライバーは減速を要求しているわけで回生量を要求していないとう違いがあり、その置き換えの制御に難しさがあるわけだ。回生の視点からすればバッテリーが満タンになれば回生不要となるため減速が抜けてしまう。空なら強烈な減速をする、ということになり、ブレーキペダルを同じ踏力で踏んでも減速Gが変わってしまうということになりかねないのだ。

そのあたりは徹底的に拘り、加速、減速、操舵フィールに至るまで、ハイブリッドであるネガをつぶしナチュラルになる制御がされている。もし、プリウスから乗り換えたとしても、つまり「同じユニットだから同じでしょう?」とは感じないと断言できる。ドライバーの操作に対する期待値みたいなものに、答えているハイブリッドであり人馬一体を目指すマツダらしい走りが得意なモデルになっている印象だった。

■コンパクトな車体にディーゼルの組み合わせが強烈
2.2Lのディーゼルターボはプロトタイプであったため、クローズドのコースでの試乗となった。試乗車はATだったが6MTを用意するあたりがマツダらしい。価格はAT/MTともに同じ値段で298万2000円となっている。このユニットはこれまでのCX-5やアテンザに搭載したディーゼルと同じもので、定評のあるスカイDである。

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6速MTをラインアップするのがマツダらしい
アクセラディーゼルエンジン
アクセラなどと同じディーゼルエンジンを搭載

 

車輌がコンパクトになった分ディーゼル特有の大トルクが一層際立ち、まさに異次元の大トルクと言ってもいいだろう。高回転域へも滑らかにまわり、パドルシフトを駆使してコーナーを攻める走りが楽しめる。今回は高速道での試乗ができなかったが、静粛性や直進のすわりの良さなどは容易に想像できる、まさにトップグレードの品質を持つモデルと言える。

ディーゼル走り
コンパクトボディの恩恵でディーゼルのトルク感がより活きている

エクステリアデザインやインテリアデザインについては、こちらの記事を参照して欲しい。

■アクセラ・スポーツ主要諸元

■アクセラ・セダン主要諸元

アクセラ・スポーツ価格表

アクセラスポーツ価格表

アクセラ・セダン&ハイブリッド価格表

アクセラセダン 価格表

マツダ公式サイト

COTY
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