マニアック評価vol89
ルノー・メガーヌはCセグメントに属し、VWゴルフやプジョー308などがライバルとなるカテゴリーだ。3ドアや5ドア、クーペ、カブリオレといったモデル・バリエーションが多いのも特徴だ。その中で、スポーツモデルがメガーヌ・ルノー・スポールである。そのRSに改めて乗るチャンスがあり、試乗してみた。RSの発売は、基幹モデルとなる3ドアのメガーヌより先に国内でリリースされた。その理由は実に戦略的であり、詳しくは既報「メガーヌ試乗インプレッション」を読んでいただきたい。
このRSは3ドア・クーペモデルをベースにルノーのモータースポーツ部門である「ルノー スポール」が仕上げた高性能モデルである。どれだけクルマの性能を引き出せるか?という挑戦はスポーツドライビングの楽しみのひとつであり、ポテンシャルが高ければ高いほどハマっていく経験は誰でもが持っているだろう。そんな遊び心、スポーツ心がくすぐられるモデルなのだ。
エクステリアをみても感じるように、スポーティでカッコいい。ブラックアウトしたフロントバンパーはスポーティさを強く印象付けるし、アンダースポイラーやリップスポイラーはF1を思い出させるデザインだ。欧州ではスポーツモデルの人気定番は、3ドアハッチバックスタイルなのだが、このRSはクーペシルエットを持ち、ワイド&ローフォルムになっていて、ゴルフGTIなどより、よりアグレッシブさを感じるルックスになっている。
インテリアはまず、レカロのバケットシートがドライバーを迎える。ステアリングはシボ加工されたレザー巻きで、タコメーターの基盤は黄色に塗装されている。それだけで、スポーツのイメージは膨らむ。さらに、エンジンサウンドをドライバーに伝える音響効果も持っており、吸気システムに設けられたパイプからメンブレーン(増幅器)を通り、バルクヘッド越しにドラバーに聞こえてくる。スロットルにあわせて吸気温が響き、心躍る演出がされているのだ。
搭載されているエンジンは2.0Lのツインスクロールターボで250ps/5500rpm、340Nm/3000rpmというスペック。先代と比較し25%のパーツを新しくし、ブースト圧も1.1barから1.5barへとアップされている。無段階吸気バルブタイミング機構、燃料噴射プログラムの見直しにより、トルクの向上だけでなく、低回転でのレスポンスが特に向上している。燃焼効率を高めるタンブル生成シリンダーヘッドやハードカーボンコーティングピストン、冷却効果の高いナトリウム封入バルブが採用され、効率化の図られたエンジンになっている。組み合わされるミッションは6MTのみ。しかも左ハンドルだけの導入となっているあたりは潔い。
実は、シャシー(サスペンション)は2種類ある。日常の使い勝手とスポーツ性をバランスさせた「シャシースポール」とスポーツドライビングに最適化された「シャシーカップ」があり、日本導入はサーキット走行も視野にいれたシャシーカップが導入されている。その違いは、スタビが24.2mmで13%剛性がアップ。フロントダンパーが35%、リヤダンパーが38%減衰力アップされたものでアンチロール剛性が15%高められているということだ。
レイアウトはもちろん共通で、フロントはダブル・アクスルストラットでロアアームがスチールからアルミに変更、軽量化。タイヤの中心に荷重がかかるようなジオメトリーが追求されている。
ブレーキはフロントが直径340mm、厚さ28mmのブレンボ製ベンチレーテッドで、同じくブレンボ製のモノブロック4ポッドキャリパーが装着されている。リヤは直径290mmで、厚さ11mm。おなじくブレンボ製のスリットディスクにTRW製のキャリパーになっている。ブレーキパッドはセミレーシングタイプでフェロード製である。
これらのパーツや装備からも期待値の高まるRSだが、さらにLSDも付き、ESPも調整ができるようになっている。ノーマル、スポーツ、OFFの3段階で、スポーツモードはESPとASR(トラクションコントロール)の介入が遅くなり、アクセルのマッピングも自動的に変更されレスポンスが良くなる。OFFもモードはESPとASRの介入はないが、アクセルのレスポンスはスポーツモードと同じになる。一般公道以外の本格的スポーツドライブを楽しむためのモードとしている。
このアクセル開度も5段階に調整が可能で、アクセルペダルマッピング機能がついているのだ。モードはスノー、プログレッシブ、ライナー(踏み込み量とアクセル開度が正比例)、スポーツモード、エクストリームモード(本格的スポーツモード)の5段。
他に、ダッシュボード中央にある「RSモニター」でもさまざまな情報を確認できる。ターボブースト圧、スロットル開度(%)、トルクNm、出力、ブレーキ圧(bar)、オイル温度、前後左右の加速度、0-100km/hタイム計測、0-400mタイム計測、タップタイム計測がそれぞれできる。
これらの電子デバイスがあると、走りの素性をデバイスで調整している印象にも見えるが、実際は素性がすばらしくコントローラブルであり電子ギミックに頼ったモデルではまったくない。ハイパワーなFF車に多く見られるトラクション不足や、トルクステアなどはLSDの働きなのか、まったく感じられず、スロットルワークでコーナーリングラインを変えることもいとも簡単にできる。電動パワステだが、反力もキチンと伝わりインフォメーションはつかみやすい。さすが、このあたりがモータースポーツからのフィードバックなのだろう。
●価格 18インチ標準モデル 385万円、19インチ注文生産モデル 397万円 ●全長4320mm×全幅1850mm×全高1435mm WB2640mm ●車重1430kg 最高出力184kw(250ps)5500rpm 最大トルク340Nm/3000rpm ●タイヤ&ホイールサイズ 235/40-18 8.25J ●0-100km/h 6.1sec 0-400m14.1sec 最高速度 250km/h ●10・15モード 11.8km/L