トヨタGAZOOレーシングは2023年1月13日、東京オートサロン2023で豊田章男社長が登壇し、「トヨタはクルマ好きを誰ひとり置いていかない」を共通テーマとし、「愛車を守るカーボンニュートラル」、「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」、「愛車と楽しむ多様なライフスタイル」をアピールした。
豊田社長はかねてからの主張のように、2050年に向けたカーボンニュートラルの目標に対し、EVだけではなく多様な商品ラインアップで対応、多くの選択肢を提供するとコメント。また、新車のカーボンニュートラルに時間がかかるのはもちろん、既にユーザーが乗っているクルマのカーボンニュートラル化を同時に進めていくことも非常に重要であると強調した。
その象徴として出展されたのが往年のAE86型のレビンとトレノで、レビンは本来の4A-GE型エンジンを取り去り、駆動モーターをフロント縦置きに搭載し5速MTと組み合わせている。一方、トレノはオリジナルの4A-GE型エンジンを搭載したままエンジン周辺に改良を加え、水素燃焼エンジンとしている。
MIRAIの高圧水素タンクをカーボンパネルでカバーしてリヤに搭載。4A-GE型エンジンは水素をポート噴射するシステムとしている。
EV仕様に改造されたレビンは、北米仕様のタンドラの縦置き用i-FOURCEモーターを搭載。バッテリーは先代プリウスPHV用のリチウムイオン・バッテリーを流用し、容量は8.8kWhのため航続距離は数十km程度とみられる。バッテリーはリヤシート部に搭載されているためリヤシートはなく2シーターだ。
レビン、トレノともにかろうじて実走行できるようにしてあるという。ただ、実際に公道を走行できる実験車ということではなく、ショーモデルとして出展されており、豊田章男社長の既存車に対してもカーボンニュートラル対策に配慮しているという主張を具体化したモデルといえる。
一方、モータースポーツ系では、ラリーのカスタマーモータースポーツへの本格的な取り組みとしてFIA ラリー2規定(旧名グループR5)の「GR ヤリス ラリー2」を開発しており、今回はそのコンセプトモデルを出展した。ラリー2は、全日本ラリーでも同規定のシュコダ・ファビア R5が猛威を振るった実績からも分かるように、メーカーが開発しユーザーが購入できる戦闘力の高いラリー専用の市販マシンだ。
海外ではシュコダ・ファビア、シトロエンC3、フォード・フィエスタ、ヒョンデi20 N、フォルクスワーゲン・ポロGTIなどが販売されており、トヨタもこれに参入しようというわけだ。パワーユニットは最大1620cc、4気筒ターボ・エンジンで、直径32mmの吸気リストリクターの装着が求められる。出力は約285psに規制。前後に機械式デファレンシャルを装着。規定最低重量は1230kgで、ベース車両は過去12カ月間に少なくとも2500台が製造されていなければならない。トヨタは2024年1月のホモロゲーション取得を目指している。
また、トヨタのWRCチャンピオンを記念し、2021年にドライバーズタイトルを獲得したセバスチャン・オジエ選手、2022年にドライバーズタイトルを獲得したカッレ・ロバンペラ選手が監修した特別仕様のGRヤリスを初公開した。
両選手に合わせた車両セッティングになっており、内外装にもこだわったスペシャル・エディションだ。これらのモデルは今後限定販売となる予定で、成約者はWRCをともに戦うパートナーとして、WRC競技車両へ氏名を貼り、セバスチャン・オジエ選手・カッレ・ロバンペラ選手との懇談機会の提供などの特典も計画されている。