トヨタ「スープラ」とBMW「Z4」兄弟車の誕生 共同開発の背景を探る

トヨタ・スープラのバックグラウンド

高出力スポーツカーのスープラはトヨタ・ブランドにとって不可欠であり、長らく待望されていた。その背景には豊田章男社長が副社長時代にニュルブルクリンク・サーキットでドライビングの訓練を受けていた時、中古車のスープラのハンドルを握らざるを得なかったというコンプレックスが影響している。言うまでもなくニュルブルクリンクで他社は、最新のスポーツモデルを走らせていた。

ヘルヴィッヒ・ダーネンス
ヘルヴィッヒ・ダーネンス

新生スープラはトヨタ・ブランドの走りのフラッグシップと位置づけられている。BMWと共同開発を行ない、最後の1年間の熟成チューニングでは、トヨタはBMWの実験ドライバーとは別に、トヨタ・ヨーロッパの熟練テストドライバー、ヘルヴィッヒ・ダーネンス氏を起用し、BMWとは違うトヨタ的な味付けや、GAZOOレーシング・カンパニーのGR開発統括部が求める走りを追求したという。

もちろん走り以外の部分で、BMWとトヨタの社内設計基準の違いがあるため、トヨタの社内設計基準に適合するようなクルマづくりについても摺合せが行なわれている。しかし、それにしても企画のスタートから6年を要しており、開発ための出費の多さ、販売予測からビジネスとしては赤字が想定されるため、社内では開発中止の声も上がったが、GAZOOレーシング・カンパニーの特命プロジェクトとして、発売に漕ぎ着けることができた。

「GRスープラ レーシング・コンセプト」
「GRスープラ レーシング・コンセプト」

新型スープラは、2018年のジュネーブショーでまず「GRスープラ レーシング・コンセプト」が出展された。これは新型スープラをベースにTMG(Toyota Motorsport GmbH)がGT4仕様として製作したモデルで、レース装備を備えているがベースのボディ・デザインは新型スープラそのものだ。

NASCARレース用のスープラ。2019年シーズンから出場する
NASCARレース用のスープラ。2019年シーズンから出場する

2018年7月には、トヨタはスープラがアメリカのストックカーレース、NASCARシリーズに参戦することを発表した。NASCARレースはパイプフレームに量産型ボディを架装したマシンだが、アメリカで最も人気が高いモーターレースだ。そのNASCARレースに出場し、スープラのブランド価値を高めようという戦略だ。また同じ7月にイギリスのグッドウッド・フェスティバル・スピードに迷彩塗装の新型スープラが登場し、6気筒サウンドを響かせた。

グッドウッド・フェスティバル・スピードでデモ走行するスープラ
グッドウッド・フェスティバル・スピードでデモ走行するスープラ

また2018年10月20日、ニュルブルクリンクのVLN耐久レースに迷彩カラーのA90型スープラがレース出場した。出場クラスはSP8Tクラスで、ドライバーは、モリゾー(豊田章男社長)、矢吹久、ヘルヴィッヒ・ダーネンスの3名だ。A90はレース用の安全装備を備えているものの、リヤウイングなしのほぼ市販仕様で、豊田社長によるスープラの最終チェックを兼ねたレース参戦だった。

ドイツVLN最終戦に出場したスープラ。豊田社長もステアリングを握った
ドイツVLN最終戦に出場したスープラ。豊田社長もステアリングを握った

BMW Z4の発売開始は2019年3月とされているが、それに引き続きトヨタ・スープラは発売される。6気筒エンジン搭載モデルの価格は700万円台からと予想されている。また生産は、オーストリアのマグナ・シュタイヤー社のグラーツ工場に委託される。

マグナ・シュタイヤー社のグラーツ工場
マグナ・シュタイヤー社のグラーツ工場

マグナ・シュタイヤー社は、現在ではメルセデス・ベンツのGクラス、BMWミニ・クロスオーバー、BMW 5シリーズ、ジャガーE-PACE/I-PACEなどの受託生産を行なっており、年間生産台数は20万台を遥かに超える自動車メーカー顔負けの規模を誇るが、フレキシブルな生産体制であり、Z4、スープラの少量生産には最適な工場ということができる。

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